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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第32話 クリスタル剥ぎ取り

 現在位置が分かっていたので森の中を一気に駆け抜けた。

 出発する直前に村で問題が発生したがそっちはノエルに任せて来た。おかげで無駄な時間を取られてしまったが間に合ったみたいだ。


「俺は森を荒らすつもりはない。できるなら帰ってくれないかな?」


 ダメ元でクリスタルライノスにお願いしてみる。


 しかし、返って来たのは咆哮。

 俺の言っている意味が伝わったのかは分からない。けれど、相当怒っているみたいでこちらへ敵意を剥き出しにされていた。


「俺を怒っても……」


 テリトリーを荒らした件に関して俺は無関係だ。

 それでも生徒たちを連れて帰らなければならないので対処しなければならない。


「シルビア」

「はい」

回復薬(ポーション)を使ってもいいから、お前は負傷しているジェスロさんの治療と護衛だ」


 自分の身を守ることすら難しそうなジェスロを守ってもらうよう言う。


「気を付けろ! そいつの腹は知られているほど柔らかくないぞ」


 収納リングから取り出した回復薬(ポーション)を飲まされたことである程度は落ち着かせることができたみたいだ。


「腹?」

「一般的に知られているクリスタルライノスの討伐方法だ。腹の方が攻撃を通し易いと聞いていたから攻撃したんだが、俺の武器は粉々になってしまった」

「そういう事か」


 冒険者になってしばらく経つが、俺は全ての魔物の攻略方法を記憶している訳ではない。

 ただ、クリスタルライノスの倒し方を知らない訳ではない。


「問題ありませんよ。クリスタルライノスなら迷宮にも出現します」

「そんな話は聞いた事がない」


 それも仕方がないと言えば仕方ない。なにせクリスタルライノスが出現するのは地下41階~45階にある密林フィールド。滅多に人が訪れる場所ではなく、訪れる冒険者もAランク冒険者の数人ぐらいしかいない。そのため攻略情報の価値も低くなっていたためクリスタルライノス出現の情報は出回っていない。


「ま、問題ないですよ」


 クリスタルライノスに向かって歩き出す。

 すると、クリスタルライノスも俺に向かって鼻先にある鋭い角を向けて突っ込んで来た。

 突進をギリギリのところで回避すると背中に生えていた棘にしがみ付く。


 自分の上に乗られた事に気付いたクリスタルライノスが唸りながら目だけを上へ向ける。

 乗っている俺を振り落とそうと体を振り回していた。


「まず1本!」


 しがみ付いていたクリスタルの棘を根元から剥がし取る。


 剥がし取られた時の苦痛から雄叫びを上げている。

 その声を背中から下りて離れた場所で聞きながら剥がし取ったクリスタルを見ていた。


「迷宮以外のクリスタルライノスを見たのは初めてだけど、迷宮にいるクリスタルライノス以上にクリスタルがデカいな」


 迷宮にいるクリスタルライノスの場合、背中に生えているクリスタルの棘は俺と同じくらいの大きさだったが、森にいたクリスタルライノスの棘はそれよりも一回り大きかった。

 剥がし取ったクリスタルを道具箱(アイテムボックス)に収納する。


「おい、セオリーはどうした?」

「腹を攻撃するなんて勿体ない真似ができる訳がないだろ」


 クリスタルライノスは冒険者には不人気な魔物だった。

 背中から生えているクリスタルの棘を回収して売ることができれば一財産を築くことができるのだが、この棘にはクリスタルライノスが死ぬと同時に輝きを失ってしまうという欠点があった。

 輝きを保ったまま回収することができるのは自然に剥がれ落ちた破片だけ。


 唯一、回収する方法があるとしたら俺がやったように生きたまま棘を抜き取る。

 方法としては単純なのだが、普通の冒険者にとって腹以外の部分は手が付けられないほど硬く、暴れている状態で抜き取るなど絶対に不可能らしい。


「これで、クリスタルを生み出す効率が良ければ迷宮でももっと配置したいところなんだけど」


 背中に生えているクリスタルは、周囲にある魔力を取り込んでクリスタルライノスが体内で精製した物だ。しかも、万全な状態のクリスタルを生み出す為に必要な時間は10年。


 生まれた時は最初から万全な状態で持っている。

 迷宮の力で生み出そうとすると大量の魔力を消費してしまい、生み出した新たなクリスタルライノスから得られたクリスタルを売る。そんな方法ではギリギリ赤字になってしまうほどだった。

 そのため迷宮としては客寄せの為の5体ほどいるだけだ。


「どうした? 怖気付いたか? 悪いが、戦いが始まってしまった以上は逃がすつもりはない」


 最初に逃げるよう言った時なら逃がしても良かった。

 しかし、1度敵対してしまった以上は毟り取れる部分は全て毟り取るつもりだ。


 人差し指を手前にクイックイッと動かす。

 挑発されている、という事が伝わったのだろう。クリスタルライノスが身を低くすると背中に生えていたクリスタルの1本を射出した。背中には投石器のように棘を射出する機能がある。


「なっ……!」


 射出攻撃ができるなど知らなかったジェスロさんが驚いている。

 しかし、俺にとっては好都合だ。


「それももらった!」


 地面に落ちる前に両手で掴んで回収する。


「そんなにクリスタルが欲しいのかよ!」

「そういう理由もあるけど、それ以上に周囲へ被害を出さない方が大切ですかね?」


 棘には大量の魔力が含まれている。

 この魔力は地面に突き刺さった瞬間に棘の内部で爆発を起こし、粉々に砕けたクリスタルを周囲に撒き散らすという力があった。

 さすがに撒き散らされた破片から生徒たちを守るのは至難だ。


「もう終わりか?」


 挑発すると今度は4本の棘が飛んで来た。

 爆発して破片で回収するよりも塊で回収した方が高く売れる。回避するなどあり得なかった。

 片手で2本の棘を掴み、土魔法で作り出した手首から先しかない手が飛んで来た棘を掴み取った。


「これで残りは4本」


 10本あったクリスタルの棘が半分以下になっていた。


「残りもいただこう」


 クリスタルライノス本体には傷を付けないようにして背中から生えていたクリスタルを根元から斬り飛ばす。


 背中にあった重みを全て失ったクリスタルライノスが沈む。


「柔らかい背中が剥き出しになったな」


 棘がなくなったことで背中の柔らかい部分が剥き出しになっていた。


 クリスタルの棘は攻撃手段であると同時に鎧のようにクリスタルライノスの急所を守る為の装甲だった。

 一般的には腹の方が柔らかいと知られているようだけど、背中から攻撃した方が剣を通し易い。


 背中から突き刺した神剣がクリスタルライノスの心臓を貫く。

 生命活動を停止させたクリスタルライノスが動き出すことはなかった。


「終わりましたよ」

「……」

「あ、あれ?」


 助けられた全員がポカンとしていた。

 せっかく助かったのだから喜んでもいいところだと思う。


「ご主人様。おそらく彼らは現実が受け入れられないんだと思います」

「なるほど」


 死を覚悟するほどの魔物をあっという間に倒されてしまった。


「な、何であんなに簡単に倒せるんだよ!」

「アンタ、強い女に寄生している冒険者なんだろ」

「そういう事か」


 少しずつだったが、活躍する機会のあったシルビアたちの実力は見せていたが、機会には恵まれなかったため俺の実力まで知られる事はなかった。

 そのため女性陣ばかり強くて俺は弱いとでも思われていたのだろう。


「俺はパーティのリーダー。仲間よりも弱い訳がないだろ」

「……」

「帰りますよ」


 クリスタルライノスを道具箱に回収する。

 男子生徒たちは、どこか納得していない様子ながら、これ以上森にいたくないみたいで文句を言わずに俺について来る。


「アンタ、助けに来るならもっと早く来なさいよ」

「はあ?」


 しかし、俺に文句がある人物がいた。


「護衛の為に雇われているなら冒険者なら、私たちの事をきちんと守りなさいよ」


 カレンの言葉にシルビアが怒鳴りそうになる。

 手で制してシルビアを止める。


「分かった」


 カレンの言いたい事は分かった。

 たしかに休憩中とはいえ村からいなくなったのは俺たちの落ち度だ。


 しかし、本当の意味で分かっていないのはカレンの方だ。

 自分の無知によって後悔する事になるとは今の段階では全く分かっていないみたいだ。


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