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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第4章 奴隷少女
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第2話 Bランク

 家を購入してから3日。

 俺は冒険者としてギルドに顔を出すこともなく、あることに没頭していたせいで疲れ果てた姿で食卓に着いた。


「大丈夫ですか、お兄様」

「大丈夫。もう作業は終わったよ」

「お疲れ様です」


 クリスが淹れてくれた紅茶を飲んでいると心が落ち着いて疲れも吹き飛ぶ。


 いや、1000体近い魔物の解体は本当に大変だった。グチャグチャに潰れた魔物の体を切り開いて魔石を取り出して、比較的に綺麗な体を保っていた魔物からは売り物になる毛皮や肉を剥ぎ取った。

 これで臨時報酬が手に入るという口実ができた。


 いくらぐらいになるのか正確なところは分からないが、かなりの大金になるのは間違いない。家を購入できるだけの金貨を出しても言い訳が立つはずだ。


「でも、本当にこの家で良かったのですか?」

「いいんだよ。4人で住むにはちょっと広いから掃除が大変で母さんには迷惑を掛けてしまうけど、住み心地はいいからね。父さんもこの家なら納得してくれるよ」


 庭に視線を向けると、リビングから見える場所に父の墓があった。

 俺が魔法で造り出した物で、迷宮で採掘できる最高レベルの硬度を持つ鉱石を整形して名前を彫っただけの物だが、豪華な物を嫌う父だっただけに材質には拘ったが、それ以上の装飾などは施さなかった。


「そうではありません。この場所を選んだ理由です」


 やっぱり気付いたか。


「それこそたまたまだよ」

「私が通うことになる学校が歩いてすぐの場所にあることがですか?」


 俺が、この家を選んだ最大の理由がアリスターの街にある唯一の学校が近くにあることだった。

 学校では様々な知識を教えており、入学や卒業の時期に関しては特に決められておらず、誰でも好きな時期に入学できるシステムだったため、来月から妹も通わせようという話になっていた。


「家を選んだ理由に関しては気にすることはないよ。じゃ、俺はギルドに行ってくるから」

「あ、お兄様!?」


 話をはぐらかす為にもさっさと家を後にする。

 敏捷値が既に人外レベルに達してしまった俺が相手では、妹にとっては気付いた時にはいなくなっていたようにしか見えないだろう。




 ☆ ☆ ☆




「ようやく来ましたねマルス君」


 ギルドに素材の買取をお願いしようと訪れるとルーティさんがすぐに俺を見つけた。


 対応をしていた時は別だが、俺が入って来たことにルーティさんはすぐに気付いてくれる。何か特殊なスキルでも持っているのだろうか?


「素材の買取をお願いしたかったんですけど、何かありました?」

「実は、マルス君が尋ねてきたらギルド長の所へ案内するように言われていたんです」


 ギルド長が直々に面談したい?

 嫌な予感しかしないな。


「それでも急ぎの用事というわけでもなさそうなので、先にマルス君の用事から済ませようかな? 買取でしたよね」

「はい。ただ、数が多いので何度か通う必要があるんですけど……」

「いいですよ。それでも収納リングがあるから1回あたりの量は多いんですよね」

「すみません」


 ギルドには手間を掛けさせてしまうが、こればかりは仕方ない。

 道具箱が使えれば俺の手間は1回で済むが、さすがにルーティさんには見せたとはいえ、人前で何度も使うような魔法ではない。


「とりあえず、奥の倉庫の方へ案内します」

「お願いします」


 ルーティさんに連れられ、ギルドの奥にある倉庫へと辿り着く。


 そこは石造りの床で、20メートル四方ぐらいの大きさがある広い場所だった。奥の方には素材を整理する作業に従事している初老のギルド職員がおり、ルーティさんに呼ばれてその人がやってきた。


「大量の買取を希望しているそうですね」

「はい」

「こちらの手間も考えて可能な限り小まめに来て欲しいところなんですけどね……」


 やはり、買取作業は大変らしく、ギルド職員は溜息を吐いていた。

 ただ、俺の事情を知っているルーティさんは笑っていた。


「さすがに今回のマルス君にそのセリフを言うのは酷というものですよ。マルス君は1回の戦闘で、1000体もの魔物を倒してしまったんですから……」

「1000……! そういうことですか。この間の大発生した魔物を倒したのが君というわけか」


 大量の素材を1度に持ち込まなければならない理由に納得してくれたらしい。


「では、いつでも持ってきて下さい。私は基本的にここで仕事をしておりますので」

「とりあえず100体分ですね」

「は?」



 驚く職員の前で収納リングから100体分の魔物の魔石と十数体分の毛皮と肉を取り出す。魔石は基本的にきれいな状態で取り出すことができたが、素材に関してはこの程度しか準備することができなかった。

 それに収納リング1回分では、これぐらいが限界だ。


「これが収納リングですか。使われているところを初めて見ましたが、何もないところに物が出てくるというのは凄いですね」

「今後も何度か往復して持ってきたいと思います」

「できれば1日に1回程度でお願いします。これをあと10回も続けて行われては私が倒れてしまう」

「分かりました」


 ルーティさんと一緒に倉庫を後にする。


 カウンターなどがあるギルドの正面入り口までやって来ると大きな階段を使って2階を通り過ぎて3階へと上がり、一番奥にある部屋へと案内される。


「この部屋がギルドマスターの執務室となっています」


 ギルドマスターとは一度しか対面したことがない。

 それも緊急依頼の時にギルドにいる人全員を注目させている時に姿を見ていた1人で、その後少し会話をしただけだ。


「失礼しますギルドマスター。冒険者マルスをお連れしました」

「ああ、入ってくれ」


 執務室の中には、大きな机に向かって書類仕事をしていた大きな体をした男性がいた。


 椅子に座っていても分かるほど鍛えられた体をしており、書類から顔を上げて俺の方を見た瞬間は、まるで睨み付けられたように感じ、実際には威圧したわけでもないのに思わず威圧されたように感じてしまった。

 どうやら歴戦の戦士らしい。


 ルーティさんが執務机の前まで行くので俺もそれに続いてギルドマスターの前に立つ。


 ギルドマスターが俺のことを見つめてくる。そのまま数秒間、無言のまま時間が流れる。


 あれ、何か用事があるんじゃないのか?


「あの、用事があると聞いたのですが、どのような用事でしょうか?」

「ああ、そうだったな。実は、ルーティから君が1人で魔物を退治したという報告を聞いて君に興味が湧いて1度しっかりと会ってみたいと思っていたんだ」


 まあ、ギルド職員であるルーティさんの前であんな無双をしてしまったのだからギルドマスターから目を付けられてしまうのは仕方ない。


「しかし、緊急依頼の時にも顔を合わせているが、どうにもそこまで凄腕のようには見えないな」


 そりゃ、引退した後でも鍛えられた体を維持できるギルドマスターに比べたら俺なんてヒョロヒョロのガキみたいなものだ。


「俺はギルドマスターとは違って魔法を主体に戦うことにしていますので、体についてはそこまで鍛えているわけじゃないんです」

「もちろん分かっている。Sランク冒険者になれば見た目と違って猛者と呼ばれるような者などたくさんいる。それに、体を鍛えたからといってステータスが単純に上がっていくわけでもない。おそらく、君は見た目に反してステータスが異常なのだろう。そういう気配を感じるよ」


 やはり、ギルドマスターは侮れないらしい。

 俺の雰囲気だけでステータスの異常性を察知した。


「そんな人を化け物みたいに言わないで下さいよ。ステータスを見せることはできませんけど、至って普通のステータスですよ。ちょっと特殊なスキルを手に入れてしまっただけです」

「見せられない時点で普通ではないと思うがね」


 この人相手に偽装したステータスを見せるのは危険だ。

 1000体の魔物を相手にできるだけのステータスもよく分からない。適当な数値を見せた瞬間に偽装できることも見破られてしまう。


「さて、優秀な冒険者を無暗に疑って信用を失ってしまうのはここまでにしよう。君を呼んだ理由は、自分の目で見て君の実力を確かめるためだが、それは君のランクアップの為に必要なことだったんだよ」

「ランクアップ?」


 まさかギルドマスターからそんな言葉が出てくるとは思わず聞き返してしまった。


「冒険者ランクをBランクに上げる為には、ギルドマスターの1人から実力があると認められなければならない。君の実力そのものは、ルーティからの報告で知っている。私自身はAランクでも問題ないと思っている。ただ、Aランクに昇格する為には複数のギルドマスターから認められなければならない」


 つまり、目の前にいるギルドマスター1人だけでは最高でもBランクにまでしか昇格させられないということか。


「というわけで、今日から君はBランク冒険者だ」


 Cランクすら飛ばしていきなりのBランク冒険者だ。


 Bランク冒険者になれば色々な特典を受けられるのと引き換えにギルドから面倒な依頼を頼まれることもある。


 本来なら断りたいところだが、色々と突っ込まれて俺が使った力の正体についてあれこれと探られても困る。とりあえずギルドに従順な冒険者を装って、ほどほどに付き合っていく方がいいだろう。


「分かりました。断る理由もないので、受け入れたいと思います」

「期待しているよ」


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