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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第15話 子供たちの出発

 太陽が昇り始めた頃。

 まだ眠っている人の方が多い時間に妹3人とエルマーを連れて街の外へと向かう。


「遅いよ」

「ごめんね」


 街の外では既に数十人の子供たちが待っていた。

 皆、課外授業を心待ちにしていたみたいで楽しそうに笑い合っている。


 その輪の中に妹たちが加わる。

 学年の違うエルマーは自分の知り合いを探してキョロキョロしていたが、友達の姿を見つけるとすぐに駆け出して行った。


 街の外では子供らしい無邪気な姿が見られた。


「これから危険な場所に行くっていうのに暢気なものだな」


 子供たちの姿を眺めていると外壁に背を預けていた一人の冒険者が声を掛けて来た。その近くにはパーティメンバーと思しき4人もいる。


「よう」

「久しぶりです」


 新人冒険者の頃に何度かお世話になったCランク冒険者のクレイグさんだ。

 この人からは剣士としての心構えや役割など色々と教えて貰ってお世話になった。


「畏まるな。今はお前の方がランクは上だ」

「でも……」

「ランクは冒険者にとって強さを知るうえで参考にしかならない」


 実績が足りないばかりにCランクだが、Bランク以上の強さを持っている場合もある。

 個人ではCランク程度の実力しか持っていなかったとしてもパーティとして連携が完成された者ならBランクの魔物を一蹴する力を持っている場合もある。


 冒険者にとっては実力が何よりも物を言う。

 彼らも自分たちの実力に自信はあるものの俺たちには敵わないと思っている。


「これで全員だな」


 近付いて来る声。


 依頼を引き受けたCランクの冒険者で双剣を装備しているジェスロさん。


「ええ、そのようですね」


 同じく大盾を持った装備した大柄なCランク冒険者の女性でありながら物腰は柔らかなリリベルさんが近付いて来る。


 二人とも別々のパーティのリーダーだ。

 クレイグさんのパーティはCランクが2人にDランクが4人。

 ジェスロさんのパーティはCランクが2人にDランクが3人。

 リリベルさんのパーティはリーダーのリリベルさんがCランクで彼女にDランクの女性冒険者4人が付き従っている。


「あれ、一人足りませんね」

「それはフェリシアの事だな」


 クレイグさんのパーティメンバーの一人であるフェリシアさんの姿が見えない。


「お前のパーティだって一人足りないだろ」

「そうですね」

「あいつは似たような理由で冒険者を引退した」

「え……」

「少し前に俺との間にできた息子を出産したんだ。最初は子供ができても暇を見つけて冒険者を続けるつもりだったみたいだけど、さすがに子育てしながら冒険者をやって行くのは大変になったらしく引退を決意した」


 クレイグさんとフェリシアさんがそういった関係だったのは知っている。

 どうやら忙しくあちこち飛び回って冬の間は引き籠っている間に男の子を出産して引退してしまったらしい。

 そういう理由による引退なら喜ばしい。


「という事は、今回の依頼はこの4組で引き受けることになったんですね」

「そういう事だ」


 自然とパーティリーダー同士での打ち合わせが始まる。

 難易度の高い依頼を複数のパーティで受け持つ場合には事前の打ち合わせが重要になってくる。

 とはいえ、連携しようにもパーティにおいて完成されたものがあるので全組が共調して行動するような真似はしない。


「それにしても気安い人たちが集められたみたいで良かったです」


 DランクやCランクと言えば冒険者の中では一番人数の多いランクだ。

 冒険者ギルドのギルドマスターに認められるだけの実力が得られず、ランクが停滞してしまっている冒険者が多いせいだ。この場に集められた冒険者も実力が停滞してしまっている。

 そうして、人数が多いせいで粗暴な冒険者もみられる。


 だが、そういった人たちは依頼に集められた冒険者の中にはいなかった。


「それは簡単な話だ。今回の依頼は学校からで、子供たちを守るのが仕事だぞ」

「ああ、なるほど」


 子供と言うのは無邪気な存在だ。

 粗暴な冒険者では護衛対象を守るどころか馬鹿にされたりした場合には逆に傷付けてしまう可能性だってあった。

 そのため可能性がありそうな人たちはギルドの方で事前に排除されていた。


 今回の依頼は、依頼を引き受ける者は委託されたギルドの方で決められている。もしも子供たちを傷付けてしまうような真似をしてしまった場合にはギルドが責任を追及されてしまうからだ。


「で、どうする?」


 全員の視線が俺へと向けられる。

 この中では冒険者としての経験が最も浅い俺だが、ランクが彼らよりも飛び抜けているのでリーダーの中で纏め役をさせられることになってしまった。

 こういった面でも粗暴な者がいなくて良かったと思える。


「今回向かうデイトン村の近くにある森は開拓が全く進んでいない土地で獣型の魔物が多く出現する場所です」

「そう聞いている」

「数は多いですけど、出現する魔物の強さはDランクが中心で、強い魔物でもCランクぐらいだったと記憶しています」


 一般人では脅威にしか思えない。

 しかし、依頼を引き受けた冒険者と同じランクなので冒険者が戦えば苦戦するような事にはならないはずだ。


「随分と詳しいな」

「……俺の生まれ故郷がデイトン村なんです」

「そうだったな」


 冒険者の間では2年前に俺がした事は有名な話だった。

 その過程でデイトン村の名前も知られている。


「だから村に関しても詳しいです」

「なら、ランク的にも問題がないし、お前の指示に従うことにしよう」

「同じく」

「あたしも問題ないよ」


 いつの間にか纏め役にさせられてしまった。

 と言っても特別な事をするつもりはない。


「まず、俺たちのパーティが全体を見えるよう後ろから付いて行って子供たちを守ります。そして、有事の際には即座に動きます」


 一番強い俺たちが何かあった時には即座に動けるよう全体が見える位置に就く。


「正面と左右を残った3組で分担して警戒して下さい」

「分かった」


 どこかのパーティだけが正面ばかり担当していたのでは負担が大きくなってしまう。他の3組については報酬が同額なはずなので負担も可能な限り同じにしたい。

 結局、パーティリーダー3人の間で話し合いが行われた結果、今日はリリベルさんのパーティが正面、左右を他の2組が警戒することになった。


 役割も決まったので子供たちが集まっている場所へ向かう。

 既に全生徒が集まっていたらしく、教師たちが点呼を取っていた。


「みなさん、おはようございます」

『おはようございます』


 教師の一人が代表して挨拶をすると子供たちから挨拶が返って来る。


「今日は課外授業の日です。これから早朝の内にアリスターを出発して陽が暮れる前に目的地の村に到着します」


 多くの子供を乗せた馬車が何台も列を成して進むことになるので通常よりも時間が掛かってしまうため移動だけで1日を要する。


「まずは、みなさんを守ってくれる冒険者の方々を紹介したいと思います」


 さすがに20人全員を一度に紹介する訳にもいかないので今は姿を見せるだけ。

 子供たちの姿を眺めているとクリスと目が合う。手を振って来ているけど、振り返す訳にもいかないので笑みを浮かべて頷く。


「今日はお願いします」

「こちらは依頼を受けて仕事としてこの場にいます。あまり気にしないで下さい」


 代表して挨拶をしていた女性教師の近くにいたジェスロさんが気さくに話をしていた。


 そのまま簡単に先ほど決めた役割を伝える。

 先生の方からも特に反対意見はなかったらしく、そのまま出発となる。


「では事前に決めておいたグループに分かれて馬車に乗り込んでください」

『は~い』


 元気に挨拶をして馬車に乗り込んで行く子供たち。

 やっぱり、どこか軽い気持ちで臨むみたいだ。

 ……キャンプじゃないんだけどな。


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