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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第14話 課外授業依頼

「で、どうして黙っていたんだ?」


 冒険者ギルドで2つの依頼を引き受ける。

 ノエルが元々引き受けようとしていた薬草採取はアリスターからそれほど離れていない(俺たちの感覚で)場所にある森で採取することができる。と言うよりも詳しく確認してみると俺が新人の頃に受けていた依頼と同じだった。

 同じ依頼を受けた事のある俺の案内によって森での採取をあっという間に終えて今日の依頼は終了。


 そして、屋敷へ戻って来ると課外授業の為に必要な準備をしていた妹たちを捕まえて尋問。


「いえ、秘密にしていた訳ではなく聞かれなかったから答えなかっただけです」

「まさか、辺境での開拓をキャンプと同程度に考えている訳じゃないだろうな?」


 そんな風に考えているなら許可することはできない。

 少なくともクリスだけは知っていなければならない常識だ。


「場所がどこだか分かっているな?」

「はい。わたしたちの生まれ故郷であるデイトン村の近くにある森です」


 子供たちが開拓するのは森の入口付近だ。

 そこですらフォレストウルフやホーンラビットといった一般人にとっては危険な魔物が出現する。


 村にいた頃は兵士だった父が率先して魔物を狩っていた。

 そんな父を親に持つ俺たちは幼い頃から森がどれだけ危険な場所なのか教えられて育ってきた。


 父の教えを受けたクリスが森の開拓を簡単に考えているようなら父の教えは無駄だったという事になる。


「わたしたちも学校の授業で戦闘訓練を積んできました」


 学校の授業の中には実戦的な物も含まれており、辺境で生きて行く子供を育て上げる為に最低限の戦闘能力だけは身に付けさせていた。


 とはいえ、本当に最低限の戦闘能力のみ。


「見ていて下さい」


 一度、自分の部屋に戻って剣を取って来たクリスが剣を振るう。

 姿勢がブレることなく振り下ろされた刃は鋭く魔物をも斬れるほどだった。


「他の子たちよりも戦えます」


 クリスが言うように魔物ともそれなりに戦えるようになっているのは授業で訓練しただけでなく、屋敷にずっといて暇だったアイラの手解きをエルマーと一緒に受けていたからだ。


 それでも、所詮は練習しただけの剣。

 俺たちの目には実戦で使えるほどには見えなかった。


 けれども、クリスの瞳は自信に満ち溢れていた。


 クリスだけじゃない。


「……わたしも、参加します!」

「私だって戦えますよ」


 クリスに感化されてしまったのかリアーナちゃんとメリルちゃんもやる気になっている。

 二人ともそれぞれの姉に憧れて同じような戦闘スタイルを採っている。


 これ以上は止めようとしても無駄になりそうだ。


「分かった。課外授業への参加に許可は出す。けど、絶対に油断したりしないようにすること。分かったな」

「はい」


 妹たちが自分の部屋へと駆けて行く。

 課外授業が始まるのは5日後の話だが、辺境へ行くのだから今の内から色々と用意しておいても不足している可能性だってある。


「良かったのですか?」


 リビングのテーブルではシルビアとメリッサが妹の様子を不安そうに見ていた。


「なんとかするしかないだろう」


 3人とも力を付けたことで少し慢心しているところがあった。

 今後の為にも自分の実力を痛感させた方がいいのだが、さすがに相手が妹となると非情になることができない。


 俺たちの方で全面的なフォローをしたいところだが、ああいう年頃の子供を相手にするとなると過保護になってしまうと嫌われてしまう可能性がある。


「とはいえ、それほど危険もなさそう」

「そうなのか?」


 クリスから課外授業のマニュアルを渡されていた。

 妹たちを心配するあまりシルビアとメリッサが役に立ちそうにないので説教をしている間にイリスに読んで貰っていた。


「開拓と言っても子供たちの手だけで未開拓の土地を耕して農作業に従事。耕した土地を狙う魔物から守るにはどうすればいいのか……そういった事を実際に体験させて学ばせるのが目的みたい」

「本当だ」


 イリスからマニュアルを受け取ってパラパラと呼んでいたノエルも納得していた。

 俺も改めて読ませてもらう。


「規模としては開拓というよりは開墾に近いかもしれないな」


 作るのは村ではなく自分たちの田畑。

 そう考える根拠が授業中に寝泊まりする場所にあった。


「デイトン村じゃねぇか」

「主たちの生まれ故郷ですね」


 イリスとノエル以外は少しだけ立ち寄ったことがある。

 成人するまでの日々を過ごした色々な思い出のある場所だ。


「大丈夫ですか?」


 心配そうにこちらを見て来るシルビア。


「ああ、問題ない」


 安心させるように言う。

 生まれ故郷ではあるものの父を亡くし、多くの人が父の世話になったにも関わらず遺された家族に手を差し伸べてくれなかった村だ。

 最初の頃は恨んでいた気持ちもあったが、今となってはどうでもいい。


「俺にとっては、この屋敷こそ帰って来るべき場所になったからな。今さらあの村に対して思うところはない」


 しかし、村人たちにとってはそうならないだろう。

 そんな場所に妹たちを何日も滞在させなければならないのは不安だ。


「と言うよりもあの村に泊まれるような場所はないぞ」


 宿屋などない辺境にある村だ。

 デイトン村より先に用のある者は少なく、訪れる人がいなかったことから宿泊施設が建てられることもなかった。


「いえ、そうでもないのです」


 事前に色々と情報を集めていたメリッサによれば将来の開拓に備えて領主の方で開拓時の拠点として使えるよう数十人が泊まれるだけの建物を用意していたらしい。子供なら100人近くいても収容できるだろう。


「デイトン村でしたら馬車で半日ほど。そこまで距離が離れている訳でもありませんから食糧もアリスターから供給されるみたいです」

「とりあえず拠点に困る事はなさそうだな」

「そうなると私たちの仕事は魔物から子供たちを守る事かな?」


 弱い魔物が相手なら子供たちに戦わせてあげてもいいが、強い魔物が出て来た場合には冒険者の手で討伐することになる。

 迷宮主や迷宮眷属なら苦戦させられるようなこともない。


「問題は全員を守り切れるかどうかだな」


 参加人数は100人近く。

 それだけの人数へ意識を向けていれば必ず漏れが出る。


 身内としては妹たちだけを守りたいところだが、依頼を引き受けてしまった以上はそういう訳にもいかない。


「エルマー」

「はい」


 リビングの外で話を聞いていたエルマー。

 アリスターへ辿り着くまでに旅慣れしているエルマーは最低限の荷物だけを持って課外授業に参加するつもりでいるらしく姉たちのように騒ぐようなことはなかった。


「お前に頼みたい事がある」

「頼みたい事、ですか?」

「ああ、俺たちは子供たち全員を守らないといけない。だから、お前は姉たちを全力で守ることを優先させて欲しい」


 生徒全員が危機に陥った場合でも姉たち3人を優先させるように言う。

 生徒全員の安全を守るよう依頼を引き受けた冒険者としては失格かもしれないが、妹たちの兄として頼み込む。


「あたしからもお願い」

「アイラさん」

「あたしはこんな体でしょ。だから遠くから見守っている事ぐらいしかできないの。これまでに色々と教えて来た事を活かしてしっかりと守ってあげてね」

「はい!」


 最近では体を動かす事すら辛くなって来たアイラ。

 アイラとの稽古がなくなったことで落ち込んでいたエルマーだったが、アイラから頼られた事で嬉しそうにしていた。


「と言うか、本気で開拓したいなら迷宮魔法でパパッとやっちゃえばいいんじゃないの?」

「絶対にやるなよ」


 土地を使えるようにするだけなら迷宮魔法を駆使すれば数日以内には終えることができる。


 だが、開拓した後で土地を維持する為の時間が勿体ない。

 開拓すれば長期間の利益が得られるようになるが、その程度では迷宮の糧には成り得ないので時間を取られる訳にはいかないため開拓が簡単にできるなど知られる訳にはいかない。


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