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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第13話 開拓依頼

 ノエルが冒険者になってから1カ月。

 迷宮でのレベル上げも一応の落ち着きを得たので、冒険者として他にも色々な知識を与える為に冒険者ギルドをノエルと二人で訪れていた。


 確認するのは掲示板に貼られている依頼票だ。


「このように掲示板は依頼の難易度からランクで分かれていて、冒険者も自分の受けられる依頼が簡単に分かるようになっている」

「ふむふむ」

「で、依頼には危険な魔物の討伐依頼や調合や料理に使える素材を回収してくる採取依頼、商人なんかから依頼を引き受けて商品を運搬する馬車の護衛をする護衛依頼もある」


 今のノエルの冒険者ランクはFランク。

 俺たちと同じAランクまで上げる為に依頼を引き受けに来た。


「とりあえず、これにする」


 基本の薬草採取。

 掲示板から依頼票を引き剥がせば後はギルドの職員に受理してもらうだけだ。


 担当であるルーティさんの下へ持って行く。


「来てくれましたね」

「来てくれた?」

「マルス君の事を待っていたんです」


 俺の来訪を待っていたらしいルーティさん。


「先日ノエルさんの冒険者登録をしてから1カ月。そろそろ迷宮でのレベル上げも終わった頃だと思っていたので、今日明日中に姿を現さない場合には屋敷を訪ねるつもりでした」

「……何かあったんですか?」


 おそらく私的な用事ではなく冒険者ギルド職員としての用事。

 考えられる可能性の中で最も高いのは、Aランクパーティである俺たちに対して指名依頼が入っている事だ。Aランク冒険者は様々な恩恵を受けられるが、冒険者ギルド経由で指名依頼があった場合には断れないという制約がある。


 今は長期の依頼を引き受けたくない俺たちとして避けたい事態だった。


「マルス君たちへ指名依頼が入っています」


 ……やっぱり。


 ルーティさんがカウンターに出した書類を受け取る。

 依頼の内容は――開拓事業への従事。


「……どういう事ですか?」


 冒険者らしくない依頼だ。


「依頼人を確認して下さい」


 依頼人はアリスターの街にある学校。


「学校?」


 妹たちも通っている学校だ。

 学校では危険な素材を取り扱っている授業がある訳でもないので、これまで学校からの依頼票を目にしたことがなかった。


「学校がどうして開拓するんですか?」


 子供が開拓に従事する理由が分からない。


「もちろん子供たちに土地を与える為に開拓する訳ではありません」


 いくつかの手続きは必要だが、領主の許可さえ得られれば開拓した土地は開拓した者に与えられる。

 そのため未開拓地がたくさんある辺境を訪れる者が毎年のようにいるのだが、実際に成功した者はほとんどいない。

 辺境の開発が上手く行かない理由はいくつもある。それを分からずに「自分なら上手く行く」という妄想に取り憑かれた者が後を断たない。


「今年の課外授業は辺境の開拓に決まったみたいです」

「は?」


 思わず開いた口が塞がらなくなる。


 課外授業。

 毎年、春が終わった頃に生徒の結束を高める為に街を出て様々な事に挑戦する。


 学校の生徒である妹たちも去年は課外授業に参加していた。たしか、授業内容はアリスターの近くにある森の近くで数日間のキャンプだったはずだ。

 数日だけとはいえ、親元から離れただけでなく安全な都市から出て生活することは子供たちにとって代え難い経験になっていたはずだ。


 初めに課外授業の内容を聞いた時は妹の参加に反対をした。

 課外授業は全員が参加しなければならない授業という訳ではなく、希望者を募って行われる授業なため不参加の場合は通常通りの授業を受けることになる。

 簡単にではあったが、調べてみたところ大きな危険もなさそうなので結局は許可を出した。


「今年から学校に領主様のご子息が入学されました」

「そう言えば、そんな年齢でしたっけ?」


 キース様の子供と会ったのはシルバーファングを討伐した後のバーベキューの時だ。

 2年前に会った時で兄が8歳だと言っていた。

 今年で10歳になったので学校に入学したのだろう。


 とはいえ、幼い頃から家庭教師を付けられて勉強していた次期領主にとって学校で学ぶ知識は少ない。

 けれども、学校で得られるのは知識ばかりでない。同年代の少年少女がたくさん集まる学校。そこで得られた人脈は将来必ず役に立つはずだ。もしかしたら未来の側近候補になる者もいるかもしれない。


「実は、この場所の開拓計画そのものは先代の頃からあったんです」

「本当ですか?」

「ですが、色々な問題が重なった結果、計画は失敗に終わってしまいました。その計画を先導していたのが当時は子供だった領主様です――この話は当時を生きていたお年寄りの間では有名な話みたいです」


 キース様はしっかりとした領主に思えた。

 そんなしっかりとした領主にも失敗した過去があった。

 年寄りたちの間では思い出話の一つとして語られていた。


 そして、学校には当時を知る教師が何人かいた。


「ご子息も無事に成長されたので領主様の過去の失敗を払拭するように再びご子息主導で開拓を行う計画があるみたいです……その為の練習を子供たちに積ませるつもりみたいです」


 本気で開拓をするつもりはない。

 しかし、簡単な仕事でも開拓に従事することで将来に起こるであろう開拓作業に慣れさせておきたいという判断だろう。


 領主の息子が開拓に乗り出した時、開拓事業に従事するのは同年代の働き盛りの者たちが集められる。つまり、今は生徒として授業を受けている子供たちだ。


「で、冒険者である俺たちにも開拓に参加しろ、と?」

「正確には子供たちの護衛が冒険者の仕事になります」



 本格的な開拓を行わなかったとしても開拓作業ができるような場所なら魔物が出現する可能性が高い。

 そういった場所で子供たちを守るのが俺たちの仕事。


「既にCランクを5人、Dランクを10人雇っています」


 とはいえ、子供を連れて行ける場所に出現する魔物はそれほど強くない。CランクやDランクの冒険者でも相手と同じ数なら問題なく狩れる。


 15人もいる状況で更に雇うのは……


「子供の参加人数は何人ですか?」

「100人近くになる予定だと聞いています」


 それは15人だけでは守り切れない可能性がある。

 以前にも似た事があったが、Aランクである俺たちの役割は下位ランクの冒険者の失敗を拭う為に同行する事。


「マルス君たちに頼むのは単純です。BランクやAランクの冒険者を何人も雇うよりもマルス君のパーティに頼んだ方が連携の面から見ても安心できますし、報酬も安く済ませられます」


 報酬は金貨10枚。

 依頼人が学校という事もあって高額を出すことができなかったみたいだ。


 正直言って報酬を考えるとあまり気乗りはしないんだけど……


「引き受けますよ」

「ありがとうございます」


 今回の依頼は引き受けないわけにはいかない。

 屋敷で妹たちが課外授業に参加するというのは聞いている。てっきり今年もキャンプみたいな事をするものだとばかり思い込んでいたから特別調べるようなこともせずに承諾してしまった。


 課外授業として予定が組まれているのだから学校の方で安全は確保してくれているんだろうけど、辺境は人間の常識が通用しない場所だ。

 俺たちも参加して安全を確保した方が確実だ。


 だが、こちらからも要求を出させてもらう。


「2週間は指名依頼を引き受けます。その代わり、依頼が終わったら1カ月は指名依頼を引き受けられません。それが依頼を引き受ける条件です」

「それぐらいならギルドの方で調整できますけど、一体どのような理由で……ああ、そういうことですか」


 正確には1カ月後。

 アイラの出産予定日近くなのでアリスターから離れなければならないような依頼を引き受けたくはない。


 そういう訳で余裕のある内に手を打っておく。


「……わたしの採取依頼は?」

「受理はこちらでやっておきます。まだランクの低いノエルさんですけど、パーティメンバーが高ランクなのでノエルさんでも問題なく受けることができます……というよりも同じ依頼を受ける方々よりも強くなっていますね」


 長年ギルドの受付嬢をやっているだけあって一目見ただけでノエルの実力がある程度分かったらしい。

 既にAランク冒険者相当の実力を手に入れているのでCランクやDランクが相手なら簡単にあしらうことができるはずだ。


「まあ、依頼まで日にちがあるので冒険者として必要な知識を身に着けて来ます」


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