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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第8話 増築

「ま、マルス……これは、一体どういう事だ?」


 夕方になると兄も屋敷に帰って来た。

 そして、外から一目見ただけでも明らかに大きくなっている屋敷を見てリビングで寛いでいた俺の元へ駆け寄って来た。


「以前から増築するつもりだという話は伝えておいたはずですよ」


 アイラとアリアンナさんの妊娠が分かった時点で増築を考えている(・・・・・)という気持ちは伝えていた。


「たしかに増築を考えているとは聞いていた。けど、俺の記憶が間違っていなければ今朝出掛けるまで屋敷に3階なんてなかったはずだ」

「それは昼間の内に用意したからです」

「普通は、そんな簡単に用意できるものじゃない!」


 それこそ何日、何カ月も掛けて行われる工事だ。屋敷の規模を考えるなら計画段階から慎重にならざるを得ない。


 ところが屋敷を留守にしている数時間で完成していれば驚かずにはいられない。

 実際、増築に掛かった時間は数分もない事は伝えない方がよさそうだ。


「昼間、屋敷にいた人たちには案内をしましたけど、兄さんも帰って来たので案内しますよ」


 なんせいきなり増築されているので騒ぎになった。

 俺たちで3階の様子を確認している間にノエルの家族やオリビアさんが慌てて駆け込んで来た。


「行こう」


 いきなり増築された屋敷が兄も気になる。

 安全性は確認しているので俺が先導する。


「私もいいですか?」


 屋敷にいたアリアンナさんだが、体調もあるのでオリビアさんの報告を聞くだけにしてもらっていた。それでもスキルで増築された屋敷が気になるのか兄に同行しようとしている。

 さすがに兄がいない状態で何かがあったら困るので連れて行けなかったが、兄が一緒に行ってくれるなら何かがあった場合には全力で守ってくれるだろう。


「行こう」


 二人を連れて階段を上がる。

 それに付いて来る妹たちとエルマー。


「お前たちには案内しただろ」


 今日はメリッサの妹であるメリルちゃんも屋敷に来ていた。

 そのため3人とも学校から帰って来てから案内している。

 エルマーはさっきも案内したから興味なさそうにしていたが、3人の姉に連れられていた。


「もう一度見たいんです」

「ま、いいか」


 何もない状態を見せても無意味な気がするが、妹たちは増築された屋敷を何度見ても飽きないらしい。

 屋敷内での出来事なので同行するだけなら問題ない。


「本当に階段が出来ている」


 2階まで上がったところで兄が呟いた。

 天井まで何もなかったはずの場所に階段ができている。それだけで上階があると教えているようなものだ。


「今は特に何もありませんよ」


 驚く兄を連れて3階に上がる。


「……」

「不思議ですね」


 兄は言葉を失い、アリアンナさんは唖然としながらも一言だけ呟いた。


 3階には2階と全く同じ光景が広がっていた。


 購入した時から2階には、中心に個室が8部屋集められていた。

 その部屋をそれぞれが自室として使っていた訳だが、その2階と全く同じように8つの部屋が中心に集まった3階が出来上がっていた。


 兄が一番近くにあった部屋の扉を開ける。

 中には家具が何も置かれておらず、寒々とした印象を与える何もない部屋が広がっていた。


「さすがに家具まで用意する余裕はなかったのでそのままです」


 魔力を消費すれば家具も用意できたが、金で解決できる部分は金で解決した方がいい。後日、最低限の家具ぐらいは用意しておこう。

 兄が扉をゆっくりと閉じる。


 次は、隣の部屋に手を掛ける。


「待って下さい」


 兄に代わって扉をノックする。

 さっきの空き部屋ではしなかった行動だ。


「はい」


 中から声が返って来る。

 それは、部屋の住人が既にいることを示していた。


「カラリスさん」


 部屋の中から出て来たのはノエルの母であるノンさん。

 隣の部屋にはベッドやテーブルなどの家具が置かれていた。

 ただし、買って来たばかりの新品ではなく、どこか想い出のある使い古された家具だった。


「この部屋はノエルの家族に使ってもらおうと思います」

「そういうことか」


 彼らの家から持って来た家具のいくつかは既に道具箱(アイテムボックス)から出させてもらった。

 増築が終わった直後に3階へ案内して好きな部屋を選んで貰ったところ、階段に近い部屋を選び、引っ越しの準備を進めてもらっていた。


「こんないい部屋をありがとうございます」


 荷物整理を進めていたバルトさんが入室して来た俺たちに頭を下げる。


「3人で使うには狭くないですか?」


 部屋には広い部屋と狭い部屋の2種類がある。

 以前の持ち主は、広い部屋を書斎のようなスペースを必要とする場所として使用しており、狭い部屋を私室として使用していた。

 広い部屋は一人で使うには広すぎるぐらいだが、3人で使うとなると家具などを置いてしまうと少し狭く感じてしまうかもしれない。


「希望があるなら他の部屋を使ってもいいですよ」


 壁を取り払って部屋を繋げてもいいし、ノキアちゃんが自分の部屋を希望するなら使わせてあげてもいい。

 ぶっちゃけ8部屋も増やしてしまったので現在は余っている。


「いいえ、こんな広い部屋を使わせてもらえるだけで十分です」

「でも、王都に住んでいたなら……」

「えっと……」


 言い難そうにしていたイリスが割り込んでくる。


「バルトさんたちの住んでいた部屋もこのぐらいの大きさだった」

「は?」


 荷物を置けば3人がギリギリ生活できる広さ。

 そんな部屋で今まで生活していたというのか?


「住んでいたのが王都とはいえ余裕のある生活ではありませんでしたから、これより広い部屋に住めるのは上流階級の者だけです。金はあっても田舎から引っ越して来た私たちを受け入れてくれるような部屋はなかったんです」


 それだけメンフィス王国の階級意識は酷かった。

 王都に住んでいた者は、成功したとしても田舎出身の者を蔑む。

 建国から1000年以上も掛けて植え付けられた価値観は簡単に変わるようなものではない。


 結局、家族は王都の外れにある小さな部屋で生活するしかなかった。


「大丈夫ならいいんですよ」

「夕食はもうすぐできるはずですから降りて来て下さいね」


 今は帰って来ているのでシルビアが中心になって用意している。

 後は仕上げぐらいなので案内には付いて来ている。


「今日は手伝いができなくてすみません」


 夕食の準備を手伝おうとしていたノンさんだったけど、引っ越し作業で疲れているだろうから遠慮してもらっていた。

 3階と1階を行き来するのは手間かもしれないけど、我慢してもらうしかない。


 その後、3階を一周するものの他の部屋は最初に見た部屋と同じで何もない。


「で、エルマーはどうする?」


 3階で生活する者がいるとしたら後はエルマーぐらいだ。


「僕は……」


 チラチラとアイラを見上げるエルマー。

 視線を向けられたアイラは「ん?」と首を傾げていた。


「……最初の部屋を使わせてもらいます」


 結局、エルマーが選んだのは階段から一番近い部屋だった。


「なら、明日にでも色々と買いに行かないとね」

「はい」


 アイラの差し出した手を強く握るエルマー。

 二人とも自覚はしていないんだろうけど、一緒にいる時間が長かったせいか甘えてくれる相手と甘えられる相手を見つけていた。


「ノエルも明日は買い出しだよな」

「そうね。本当に着の身着のまま出て来た感じになっちゃったから色々と物が足りないの」

「荷物持ちぐらいならしてやろう」

「いや、これがあるから荷物持ちなんてしないんじゃ」


 あくまでも全員で買い物を楽しむだけだ。

 ノエルにも収納リングを与えているから一人で買い物をしても荷物の重さに困らされることはない。


 それに休日と呼べるのは明日までだ。


「明後日からレベル上げで死ぬほど大変な目に遭うんだ。今日や明日ぐらいはゆっくりしてもいいだろ」


 シルビアが自分の時を思い出しているのか表情を曇らせていた。

 残念ながら、あの時よりも人数が多いので厳しく行くつもりだ。


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