表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第4章 奴隷少女
49/1458

第1話 マイホーム

 デイトン村から帰って来た翌日は、父の死を知って喪に服す、ということで兄も休暇を貰って身辺整理を行った。


 それも午前中で終わったので家族に向かって宣言する。


「ここで提案したいことがあります」


 3人の視線が俺に集まる。


「マイホームを買いたいと思います」

「え、この街で家?」


 村のような田舎なら土地も余っているので、値段も安く抑えられているが、アリスターの街のような都会では金貨で何十枚、物件によって百枚以上が必要になる場合がある。


 だが、それが何だというのか?


「俺には、これだけの金貨があるんですよ」


 せっかくだから見せてあげよう。


『迷宮魔法:道具箱(アイテムボックス)


 傍に道具箱を召喚する。

 道具箱そのものは何度か見せているが、中身については直接見せたことがなかった。


「わぁ~」


 妹が思わず声を漏らしていた。


 分かり易く金貨が大量に詰まった道具箱を召喚してみたが、中には1000枚を超える枚数の金貨がギッシリと詰まっていた。さらに召喚してみせることも可能だ。

 そんな俺が、金貨100枚程度を気にする必要があるだろうか?


「こんな大量の金貨をどうやって用意したんだ?」

「大丈夫。汚い方法で稼いだような金貨ではないですから」


 迷宮主という規格外の存在に許された特権を使用しただけだ。


「迷宮では、これまでに多くの冒険者が亡くなっていますが、死体がいつまでもその場に残り続けていると、迷宮に魔力として吸収されてしまうんです。で、吸収されなかった金貨が管理者である俺の手元にこうして残っているだけです」


 数百年に及んで貯め込んだ金貨はいつの間にかそんな金額になっていた。


「というわけで、お金に関しては心配する必要がないので家を買いたいと思います」


 心配する必要がないからと言って散財を許すつもりはないが、家についてはいずれ必要になる物だ。

 買っておいて損はないだろう。


「でも、どうしてこの時期に家なんだ?」

「この時期だからですよ。俺が本当に欲しいのは、家そのものではなくて父さんの墓を建てる為の土地です」


 遺体は、今も道具箱の中に入ったままだ。


 道具箱の中に入れておけば劣化する心配もないので、入れておいても問題はないのだが、心情的に父をきちんとした場所で埋葬してあげたかった。

 そして、どうせなら家族が住んでいる場所の近くに建ててあげたい。


「分かった。不動産屋に行ってみよう」


 兄の案内に従って不動産屋へと向かう。




 ☆ ☆ ☆




「いらっしゃいませ」


 案内された不動産屋は、恰幅のいい黒縁の眼鏡をかけた男性だ。商人としてそれなりに成功しているらしく、服もそれなりに豪華な物を着ていた。


「家族が住む家を探している。ちょうどいい家はないだろうか?」

「4人家族でよろしいでしょうか」

「ああ」


 住み心地さえよければ兄もそちらに住むかもしれないので4人が住むのに適した家を探すようにお願いする。


「他に条件はありますか?」

「とりあえず、そこそこの広さがある庭をお願いします。あと、場所についてですが、街の東側でお願いします」

「なるほど。若いお嬢さんもいらっしゃることですし、治安を気にしているということですね」


 アリスターの街の西側には、一番人の出入りが多いため酒場などの飲食店が多く、冒険者ギルドも西側にある。街から見て西のさらに先には、王都などの街よりも大きな都市が存在している。そのため、外からやって来る人の多くが西側の門を使用するため、そんな人たちを狙って商売をしている人たちが西側に集中している。


 そして、人の出入りが激しいため、どうしても厳重に警備していても人目に付かないところで喧嘩は起こってしまい、治安が悪くなってしまう。


 俺が東側を希望した理由は、それだけではないのだが、不動産屋は母と妹を見て納得してくれたので、わざわざ教える必要はないだろう。


「そういうことでしたらいくつか紹介できる物件がありますので、今から向かいますか?」

「お願いします」


 不動産屋に連れられた先にあった家は、白い石壁の2階建ての家だった。造りは割かししっかりしているし、家の周りは石壁と鉄柵に覆われて小さな庭もしっかりとある。俺の提示した条件は満たしてくれる。


「中を見てみても?」

「どうぞ」


 不動産屋が扉の鍵を開けると中に入れさせてもらう。


 入り口から近い場所には応接室があり、客室がいくつもあった。

 これは、家というよりも屋敷と呼んだ方がいい物件だな。


「こんな良さそうな物件が余っているんですか?」

「これは、最初に見せるあまりお勧めできない物件ですね。数十年前に事業に成功した商人が建てた屋敷なのですが、屋敷を立てて数年後には事業が傾いてしまい、本人もどうにか立て直そうと頑張っていたらしいのですが、無理をした影響で非業の死を遂げてしまい、その商人の怨霊が今も彷徨っているという噂のある屋敷です」


 なるほど。屋敷そのものは立派なもので、曰くのある噂のせいでなかなか住む人がいない家ってところか。


 取り壊すにはまだまだ使えるレベルだし、噂を気にしないような人に住んでほしいということなんだろう。


 そして、その噂は噂なんかじゃないです。

 さっきから屋敷の中に俺たち以外の気配を感じていたので『迷宮魔法:気配探知』で探ってみたところ、俺たち以外の気配の持ち主をたしかに感じた。奥の方を見てみます、と言ってから屋敷の一番奥にある書斎へと入るとミイラ化した男性が椅子に座っていた。


『出て、い……』

「消えろ」


 おそらく屋敷を建てただろう商人の頭を鷲掴みにすると『迷宮魔法:浄化』を発動させ、屋敷の中に留まっていた商人の怨霊を成仏させる。


 さて、これで屋敷の購入を躊躇う理由はなくなったはずだ。


「この屋敷を購入したいと思います」

「本気ですか!?」

「ええ、どうせ噂の方もいつの間にか大きくなっちゃっただけでしょうから、気にしなければ大丈夫ですよ」


 家族の方を見ると何も言わなかった。

 購入する資金を出すのは俺なのだから、特に反対もしないつもりらしい。


「そうですか。では、購入する場合は金貨で80枚になります。借りる場合は、月々銀貨で20枚となりますが、購入でよろしいんですね」


 相場を考えるとかなり安いな。

 それだけ噂に悩まされていたということか。


「ええ、購入でお願いします。ただ、支払いは少し待ってもらえますか?」

「分割を希望でしょうか?」

「そうではありません。近々まとまったお金が手に入る予定なので、それを支払いに充てたいと思います」


 俺の言葉を受けた不動産屋が兄に視線を向けると、兄も頷いた。

 騎士である兄が保証したということで、不動産屋も踏み倒される心配がないと安心していた。


「分かりました。今日から住むこともできますので、鍵をお渡ししておきます」

「ありがとうございます」


 引っ越しなど道具箱があれば簡単だ。どんな重い物でも触れるだけで収納でき、好きな場所に取り出すことができるのだから持ち運びに苦労させられることもない。


 不動産屋は不良物件が売り捌けたことで笑顔になりながら帰って行った。


「マルス、この家は本当に大丈夫なのか? さすがに悪霊が出るような場所に母さんたちを住まわせるわけにはいかないんだが」

「それなら大丈夫です。さっき成仏させてきたので、悪霊が出るような心配はありません。仮にまた出てきたとしても、その都度成仏させていくので言ってください」


 悪霊が本当にいるとは思っていなかった兄が驚いていた。


 さて、屋敷を購入したのだから、すぐに引っ越しを始めてもいいのだが、俺には先にやることがある。わざわざ家を購入したのは、母や妹の警備を万全にするためだった。


 そのためには、兄が借りていたアパートでは不都合があった。


『迷宮操作:召喚』


 屋敷の玄関前に行くと、迷宮にいるゴーレムを2体召喚する。


「お呼びデショウカご主人様」


 2体のゴーレムは、鎧を着た人の姿をしていた。ただ、2メートルもあるせいで大男という言葉で済まされない大きさになってしまった。


「お前たちには、この屋敷の警備をお願いしたい。許可のない奴が入って来た時には、力に任せて拘束していい」

「ワカリマシタ」


 2体のゴーレムが俺の指示に文句を言うこともなく門の両脇に立つ。


 迷宮主として彼らの感情もなんとなく読み取れる俺だから理解できたが、どうやらいつまで経っても誰もやってこないせいで感情の乏しいゴーレムなのに寂しさを覚えてしまい、そんな中で俺の指示を受けて退屈な門番も喜んで引き受けてくれたらしい。


「これも迷宮主の能力なのか? なんだか、凄そうな力を感じるけど」

「ええ、強いですよ。なんせさっきまでは地下60階で門番をしていたような奴らですから」

「地下60階!?」


 人類未踏の階層で門番をしている彼らがそこらにいるような冒険者に後れを取るわけがない。


「あとは、こいつらも付けとくかな」


 再び召喚を使用すると母と妹の前に真っ黒な人が現れる。


 背の低い2人と同じくらいの身長しかなく、そいつは人のような形をしているだけで、人ではない。


「お前たちは2人の影に潜んでこっそりと護衛だ」


 街中とはいえ、何が起こるのか分からない。そんな時の為に2人には護衛を付けておくことにした。


 2体の人型の魔物は、母と妹の影に溶け込むようにして消えていくと2人の影と完全に同化する。


 こいつらも暇を持て余してから外に出て仕事をできることが嬉しいらしい。


「今のは?」

「シャドウゲンガー ――地下60階にいる魔物で、ステータスがオール2000という魔物なうえ、持っているスキルによって相手の影と同化することができるんだ。これで、街中を歩いても常に護衛が傍にいてくれる」


 さらにシャドウゲンガーの戦闘能力の真価は、もう1つのスキルである『影変異』にある。これによりシャドウゲンガーは、自分のステータスを別のステータスへと移し替えることができる。たとえば、魔力2000の全てを筋力へと割り振り、圧倒的な力を発揮することも可能になる。

 これなら大抵の状況には対応できるようになる。


 これで、懸念だった2人の護衛については大丈夫だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] 多くの人に驚異的な戦闘力を見せてしまったし、今後どうするんだろうねぇ。 街を移動するのかと思ったら、この街に土地と家を買ってしまったし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ