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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第7話 建築

「え~、現在この屋敷を圧迫している問題があるので解決したいと思います」


 屋敷で眷属を集めて会議を行う。

 兄や母のように仕事がある人は出掛けているし、エルマーを含めた妹たちは学校に行っている。それからノエルの家族も自分たちだけでアリスターの観光に出掛けているため屋敷にはいない。現在、屋敷にいるのはオリビアさんとアリアンナさんだけだ。


「問題って?」


 屋敷にずっといたはずだけど、アイラは気付いていないみたいだ。

 いや、いたからこそ人が増えたことによる問題に気付けなかったのかもしれない。


「今この屋敷では何人が生活している?」

「えっと……」


 アイラが指を折りながら数えて行く。


「というよりも部屋はいくつ使っている」


 俺たちの住んでいる屋敷は、全額を俺が出したということで俺の屋敷として扱われている。そのため、俺や眷属は一人で部屋を使用している。

 つまり、ノエルも加わった今では6人で6部屋を使っていた。


 さらに兄カラリスがアリアンナさんと一緒に一部屋を夫婦で使っている。


 最初は俺たち家族しかいなかったので、部屋を使わないのは勿体ないということで母と妹もそれぞれが部屋を一つ使用していた。


 そして、シルビアの母と妹であるオリビアさんとリアーナちゃんが一室を使っている。

 時折、メリッサの妹であるメリルちゃんが泊まりに来ることがあるが、その時はクリスの部屋で寝ているし、眠るまでリアーナちゃんもクリスの部屋で寝ていることがある。


 エルマーについては、今までは家族がいなくて寂しそうだったので一人にさせておくのが不安だったこともあって留守番していたアイラと同じ部屋で一緒に寝泊まりさせていた。


 メンフィス王国へ出発する前までは今ノエルが使用している部屋を除いて9部屋が使われていた。そのうえ、ノエルの個室と家族3人が生活する為に部屋を貸し出しているため屋敷の中にある11部屋全てが使われてしまっている。


「足りているなら問題ないんじゃない?」

「足りてないんだよ」

「ですね……」


 屋敷の管理もしているシルビアが溜息を吐いた。


 全ての部屋が住人によって使用されているということは、空室がないということだ。

 つまり、客人を招く為の部屋がない。


「あ、そっかノエルたちが使っている部屋って……」


 以前までは応接室として使っていた部屋だ。


「応接室にあった家財道具をしまったのはお前だろう……」


 部屋を用意する為に念話でアイラに家財道具を全て収納するよう頼んでおいたというのに忘れている。

 以前から細かい事は気にしない性格だったが、妊娠している事による影響がアイラの場合は記憶力に出てしまっていた。なので、それとなく察している面々は何も言わない。


「ごめん。忘れていた」

「おい、出すなよ」


 収納リングを光らせて家財道具を出そうとするアイラを止める。


「それで、どうするの?」

「ノエルたちには近い内に部屋を移動してもらう」

「え、わたしたち家族は離れ離れに暮らすの?」

「安心しろ。引き続き屋敷で生活してもらっても問題ないから」


 同じ屋敷で生活できると聞いて安心するノエル。

 今まで離れ離れに生活していたのだから、これからはなるべく一緒に生活していて欲しい。


「ま、現時点でさえ部屋が足りていない」


 そういう訳でやらなければならないのは、屋敷の増築だ。


「あの――」


 ノエルが遠慮がちに手を上げる。


「わたしたちの為に屋敷を増築するっていうのは理解できた。でも、わたしたち家族の為にそんなお金を払ってもらうのは……」

「勘違いするな。お前たち家族の為だけじゃない」

「そうです。これから足りなくなる、という意味もあります」


 メリッサが言うように足りなくなることは目に見えている。


「そういうこと」


 イリスも納得したみたいだ。

 ノエルを除いた全員の視線がアイラに向けられる。


「え、なに?」


 当の本人は全く自覚がなかった。


「これから少なくとも住人が二人は増えることになる。どうなるのか分からない状況でギリギリのままにしておくのはマズい」

「あ、子供が増えるなら子供部屋とか用意しておいた方がいいんだ」

「それだけじゃない。順番が来たら増やすつもりだろう」


 妊娠による戦線離脱期間が被らないよう調整しているだけで、問題がなければノエルを除く全員が妊娠していてもおかしくない。というのも時折だが羨ましそうにアイラの事を見つめている時があるからだ。

 さすがに全員が一斉に抜けられるのは俺も困る。

 最短の場合には、毎年のように生まれて来る可能性だってある。


「元から増築は必要な事だったんだよ」

「なるほど」


 ノエルも納得してくれたみたいだ。

 決して、突然住人が増えてしまったから増築しなければならない訳ではない。


 けれども、のんびり計画を立てて進めて行こうと思っていたところに思わぬ住人が増えてしまったことで早急に手を付けなければならなくなってしまった事には変わりない。

 そんな事までノエルに教える必要はない。


「庭は残しておきたいから増築するなら上に用意するしかないんだよな」


 2階までしかない屋敷なので、3階を増やす予定でいる。


「構造はどうしますか?」

「2階をそのまま造る感じでいいだろ」

「問題ないと思います」


 特に反対意見もないようなので早速進めて行く。


「ちょ、ちょっと待って」


 と思ったが、単純に話の流れに全く付いて行けてないだけの人物がいた。


「家の増築……それも、こんなに大きな屋敷の増築なら簡単にはできないはず。それなのに、まるで自分たちでやるような言い方をするなんて……」

「当然、自分たちでやるんだよ」

「やっぱり……」


 ガックリと肩を落とすノエル。


「専門の大工や技師を何人も雇わないといけない規模なのに自分たちでできる訳ないでしょ」

「それは俺たちが一般人だった場合の話だ」

「へ?」


 俺には迷宮魔法や迷宮操作がある。

 それらを用いれば屋敷の増築など、あっという間に終わらせられてしまう。


 とりあえず打ち合わせは済んだので屋敷の2階へと向かう。何年も住んでいる屋敷だが、念の為にどういう構造になっているのか再確認。部屋の中にまで入る必要はないので廊下を歩いて確認するだけ。


「大体、分かった」


 2階を一回りしてきたところで壁に手を付いてスキルを発動させる。


『迷宮操作:建築(ビルド)


 イメージした建築物を創造するスキル。

 迷宮内で使用した時には、魔力を消費することによって迷宮へ挑む冒険者が休憩できる場所として小屋を用意したり、防衛拠点を用意する為に砦を準備する時に用いられる。

 迷宮の外で使用した場合でも魔力を多めに消費するぐらいで基本は変わらない。


 屋敷全体へと魔力が流れて行く。


「ふぅ」


 思わず汗を拭って息を吐いてしまう。


「ご苦労様です」


 シルビアが汗を拭いてくれる。

 魔力を流していたのは数分間の出来事だったが、想像以上に集中していたせいで疲労が溜まってしまったらしい。


 迷宮で使用した時は、小さな小屋や趣味で作ってみた別荘ぐらいしかなかったが今回ほど疲れることはなかった。両者の違いと言えば、迷宮の中と外のどちらで使用したかという事ぐらいだろう。

 他の迷宮操作にしても迷宮の外で使用した方が負担は大きかった。

 おそらく、その考えで間違いないだろう。


 ――ガコン!


 そんな事を考えていると上から階段が降りて来た。


「な、なに!?」


 突然、聞こえて来た音。

 そして、目の前に現れた階段にノエルが驚いている。


「ああ、3階に続く階段は最後にできるよう設定しておいたんだよ」


 これで3階へ行けるようになった。

 ただ、本来は階段なんてない場所に階段を用意してしまったので2階の廊下が狭くなってしまった事が問題かもしれない。


「よし、成功したのか見てみることにしよう」


 6人で階段を上がって行く。

 スキルで造った階段だったから強度が少し心配だったが、6人が同時に乗っても崩れないところから問題ないみたいだ。


「凄いですね」

「本当に2階と同じようになっている」

「よし」


 3階の完成度に思わず拳を握ってしまった。


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