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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第20章 辺境開拓
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第3話 5人目

 とりあえず初対面の二人が落ち着きを取り戻したところでリビングにあるテーブルで寛ぐ。

 やっぱり久しぶりの我が家は落ち着ける。


「……どうして、アイラの説明をしていなかったんだ?」


 仲間になるにあたって必要な情報の提供は眷属に任せておいた。

 これから眷属になるのだし、同じ立場の相手から話を聞いた方が実体験に基づいた情報を得ることができる。そこに主である俺はいない方が眷属たちも話をし易い……などといった理由を述べさせてもらったが、実際には眷属にする方法を自分の口から語りたくなかっただけだ。


 なので、情報提供に俺は一切関与していない。

 てっきり一番話をしていたシルビアが教えているものだとばかり思っていた。


「わたしは教えましたよ」


 当のシルビアは教えたと言っている。

 聞いていない俺には『聞いていない』と言っているノエルと『教えた』と言っているシルビアではどちらが正しいのか判断することができない。


「たしかに言っていましたが、アレを言ったと言い張るのは……」


 しかし、俺一人で判断する必要もない。

 近くには俺と違ってシルビアの話を聞いていたメリッサもいる。


「どういうこと?」

「シルビアさんは、たしかにアイラさんについて説明されていましたが、それは主の冒険譚について語っている最中の事です」


 まずはシルビアが俺とどのように出会ったのかを説明した。

 そして、そのすぐ後でアイラが加わった経緯を語ったのだが、その内容が『魔剣を追っていた剣士の冒険者が仲間に加わった』としか説明していない。

 冒険譚に憧れながら聞いていたノエルは『剣士=イリス』だと思い込んでしまったらしい。


 それからイリスの加入までですら本気で語ればかなりの時間を必要とする。

 シルビアの語る冒険譚にイリスが登場する頃には2人目の存在はノエルの頭から消えてなくなっていた。


 最終的に『眷属は3人』という認識になっていた。


「ううっ……3人しかいなかったから、わたしが4人目だと思っていました」

「大丈夫。4人も5人もそれほど変わらない」

「そういう問題ではありません」


 自分の知らない女が既にいた。

 人数よりも知らなかった事を気にしているみたいだ。


「眷属は、この場にいる4人だけですよね?」

「他にはいないから安心しろ」


 心境としては浮気を問い詰められている旦那みたいなものだ。

 この場にいる誰とも結婚している訳でもないのに、なぜ問い詰められなければならないのか?


 ホッと安心するノエル。

 アイラを除けば既に気心知れた相手なので許容範囲内なのだろう。


「うぅっ……まさか、他にもいたなんて……しかも妊娠させているし」


 複雑そうな瞳でアイラを見ているノエル。


「アイラが留守番していた理由は分かるな」

「……分かります」


 子供のノキアちゃんだって長旅が無理だったのだ。

 いくら強力なステータスを持っていたとしても妊婦が耐えるべきではない。


「で、本気で彼女も眷属にするつもりなの?」

「約束があるからしないといけないみたいだ」


 そう、ノエルとの間にした約束があるから引き受けざるを得なかった。


「約束?」

「ああ、『護衛に失敗した時には責任を取らせてもらう』。そう言ってしまったんだ」


 あの時はノエルを安心させる為に言っただけだ。

 俺たちも自分たちのステータスに慢心していたところがあったのか軽い気持ちで約束してしまった。


 ところが、ノエルは神託通りに死んでしまった。


「でも、生きているわよ」

「それは、結果論でしかありません。わたしが死んだ後で生き返った事には変わりがありません」

「つまり、わたしたちは守り切れなかったということです」


 シルビアが言うように護衛依頼は失敗。

 【反魂】がなければノエルは今も死んだままだ。


「それで、責任を取ることになったの?」

「そういうこと」

「でも、眷属になるっていう事は……」


 メリットやデメリットについてはシルビアが説明している。


「はい。これは必要な事ですよね」


 眷属にならなければ付いて来る事はできない。


「……本当にいいんだな?」

「もちろんです」


 最後の確認も済んだので立ち上がる。


 ノエルの隣に立って肩を掴むとこちらを振り向かせる。

 何が必要なのか理解しているので覚悟を決めた瞳で俺の事を見ている。しかし、頭の上にある狐耳が忙しなく動き回っているところを見るに本心では怯えているのが分かる。


 これ以上、不安にさせる訳にはいかない。


 相手は初めてなので軽く触れるだけのキス。

 それでもお互いの間に繋がりができたのを感じたのでスキルを使用する。


「ふぁっ……」


 体から力が抜けたノエルが椅子に座り込んでテーブルの上に倒れる。


「大丈夫か?」

「……大丈夫ではありません」


 先ほどまで忙しなく動いていた狐耳もペタンと倒れている。

 少々、刺激が強過ぎたみたいだ。


「これで、次は大丈夫?」


 アイラが言っているのは次の段階。

 これだけのステータス上昇では付いて来ることはできない。


「……どうする?」


 正直言って不安しかない。

 とりあえず保留にしておこう。


「それにしても意外でしたね」

「本当」


 すぐさまステータスを確認したメリッサとイリスが意外さから戸惑っていた。


「てっきり後衛系のステータスになるのかと思っていたのですが」

「俺も『巫女』だった事からそんな風に考えていたな」


 けど、ノエルの舞を見ていたので激しい動きにも付いて行けるだけのステータスがあったと思える。ステータスカードは預かっていたけど、詳しいステータスを見ていた訳じゃないからな。


「あの、みなさんわたしのステータスが見えているみたいですけど、どういうことですか?」

「迷宮主や迷宮眷属だけが使える魔法【迷宮魔法】。その中に【迷宮魔法:鑑定】がある。その魔法を使えば迷宮産の道具や迷宮に関係している人たちのステータスが見られるようになる」

「なるほど」


 今のノエルのステータスが見られる理由を説明すると納得していた。


 早速、彼女も【鑑定】を使用してみる。

 『巫女』として様々な情報を事前に得ていた彼女なので最低限の説明さえしてあげれば使い方もある程度は理解している。


「え……!」


 自分のステータスを覗いたことで驚いている。


「いきなりレベルが3になっているんですけど」

「そっちか」


 今朝、確認した時にはノエルのレベルは1のままだった。

 というよりも眷属にする予定があったので意図してレベルが上がらないようにしていた。


 この短期間で行ったことなど限られている。


「それだけ刺激的な経験だったっていう事だろ」

「そういう事ですか……」


 シルビアたちの時はキスぐらいで上がらなかったことは教えない方がいいかもしれない。


 ノエルが伏し目になりながらシルビアたちの姿を確認している。

 いや、確認しているのはステータスだ。


「わたしのステータスがここまで上がっているのは迷宮主のステータスの一部が上乗せされているからだというのは理解できます。ですが、シルビアさんたちと比べると半分ぐらいしかないような気がするんですけど……」


 そりゃあ、今のノエルは俺のステータスの1割しか上乗せされていない。

 対してシルビアたちは2割が上乗せされている。

 半分くらいしかないのは当然だ。


「それはね……」


 イリスの時と同じように耳打ちして条件を説明するアイラ。


「ふぁっ!」


 説明を聞いて行く内にみるみる顔を赤くしていくノエル。

 その様子をアイラは面白い物を見るような顔で見ていた。


「分かった?」

「はい。アイラさんのような人がいるので、そういう事をしているんだっていうのは理解できるんですけど……」

「分かってくれたならいいわ。それともう一つ――同じ眷属なんだから敬語はなしでいきましょう」

「え、いいんですか?」


 ノエルの視線がシルビアとメリッサに向けられる。


「わたしが敬語を使うのはご主人様相手だけよ」


 アイラたち眷属に対しては普通に話している。

 他には母やギルドマスターみたいな目上の人に敬語を使っているぐらいだ。


「私は幼い頃からこのように教育されて来たので敬語で話すのがデフォルトなのです」


 貴族令嬢として育てられ、見ず知らずの大人の中で幼少期を過ごしたためだ。

 無理にタメ口で話をさせる必要もないので自由にさせている。


 ノエルも敬語の方が話しやすいというなら敬語のままでも構わない。

 けど、両親を相手にしていた時は普通に話をしていた。


「分かりました……ううん、分かった。これから、よろしくね」


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