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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第19章 巫女神舞
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第15話 迷宮主たち

「他の迷宮主の情報、ですか?」


 俺の要望を聞いたノエルが首を傾げている。


 彼女にとっては重要ではないかもしれないが、俺にとっては重要な情報だ。

 帝都でリオが戦闘した謎の弓使い。それに彼女の後ろにいると思われる偽核(フェイクコア)を利用して巨大魔物を生み出している迷宮主。


 何度も敵対してしまっている事から今後も敵対してしまう可能性は非常に高い。にも関わらず、こちらは向こうの情報の全く持っていないと言っていい状況だ。

 今は些細な情報でもいいから少しでも欲しいところだった。


「どんな小さな事でもいいんです」

「わたしも神託で聞いた事を知っているだけですけど……」


 神の遺産に関わる事柄も神託によって聞くことができる。特に新たな継承者が現れた時には必ずと言っていいほど神託が降りて来る。


「それでも構いません」


 小さな手掛かりでもいいから欲しいところだった。


「では、まずはあなたたちに対する神託から話します」

「ちょっと待った」


 報酬として支払われるべき情報を簡単に喋ろうとするノエルを止める。


「もしも、依頼に失敗してしまった場合にはわたしは死んでしまっています。それでは報酬の情報を渡すことができません。だから護衛をしてくれる事に対してのお礼として先に話してしまいます」

「そういう事なら……」


 俺が引き下がるとノエルの説明が始まる。


「わたしがあなたに関する神託を最初に受けたのは2年前『メティス王国の辺境に新たな迷宮主が現れた』というものです」


 その内容で分かるのは迷宮主のいなかった迷宮に新たな迷宮主が誕生したタイミングだけだ。

 俺個人を特定するのは不可能なはずだ。


「次に受けたのが1年以上も経った後。『グレンヴァルガ帝国帝都迷宮の迷宮主とメティス王国のアリスターの迷宮主が競っている』というものでした」


 迷宮主の誕生。

 そして、迷宮主同士の接触。


 迷宮攻略の競争をしていた時、帝都にいた多くの人にカトレアさんたちと一緒にいるところを見られている。

 なにより帝国の人たちは去年の戦争で大活躍をしてしまった俺に関する情報を必死に集めており、アリスターを拠点に活動している事やリーダーである俺が2年前の春から冒険者として活動していた事を調べていた。

 簡単な情報ならメンフィス王国でも調べることができたはずだ。


 そうしてタイミングや一般的な冒険者を逸脱した能力を考えれば俺が迷宮主だという答えに辿り着くのも難しくはない。


「もっともメンフィス王国の行く末に関係していない神託の内容はわたし以外の者には伝えていません」


 つまり、俺が迷宮主である事はノエル以外に知っている者はいない。


「ま、友達付き合いの一環でミシュリナさんには伝えたりしていましたけど」

「ごめんなさい」


 それについては気にしていない。

 悪用された場合には問題視していたけど、結局のところは問題が発生して困っていたところに接触して来ただけだ。


 謝るミシュリナさんに問題ないと伝える。


「そんな感じで、わたしが知る事ができた内容は本当に断片的なんです」


 ノエルが右手を開いて見せる。


「わたしが知っている迷宮主は全部で5人です」


 5人。けっこういるな。


「一人目はメティス王国辺境のアリスターにある迷宮主になったマルス」


 親指を折り畳む。


「次に同じくメティス王国の王都にある迷宮。迷宮主の正体までは知りませんが、迷宮の力は弱く、迷宮主が途切れる事なく継承されていることから王都を守る結界の維持などに利用されているのではないかと予測されます。そして、それなりに権力のある者が迷宮主を兼ねているのではないか、と代々の巫女は考えていました」


 推測だけど合っている。

 メティス王国の住民としては肯定しない方がいいだろう。


「そして、三人目がみなさんも知っている迷宮の力を利用してグレンヴァルガ帝国の皇帝にまで成り上がったグロリオ様です」


 ここまでは知っている情報だ。

 問題は残りの二人。


「4人目は、このメンフィス王国よりもさらに東へ進んだ場所にあるエスタリア王国にある迷宮都市の迷宮です」

「あそこか」


 迷宮都市――以前、迷宮について色々と勉強している時に知った名前だ。

 その都市は迷宮から産出される資源を得て発展し、国を築くまでに至ったと言われている。それだけなら他の迷宮とあまり変わりないように思えるが、迷宮主を兼任している都市長の家には純粋な迷宮攻略を無視して迷宮主を継承する方法が伝えられているらしく、迷宮主と都市長の役割が子々孫々と受け継がれていた。

 同時に迷宮の効率的な運営方法も伝えられているおかげで帝都並に栄えている都市となっていた。


「そこはどうだろうな……」


 メティス王国にあるエルフの里まででもかなりの距離があるため単なる実験の為に赴くにしては遠すぎる。それに保守的な迷宮主らしいので現状を維持したいと考えているのが運営方針から見えて来る。

 今さら新しい……それも危険が伴う事を始めるとは思えない。


 おそらく迷宮都市の迷宮主は違うと思う。


「最後に5人目ですが、ガルディス帝国については知っていますか?」

「名前ぐらいなら……」


 ガルディス帝国――グレンヴァルガ帝国の北西に位置する皇帝が治める国で、何度も戦争をしているはずのメティス王国以上に仲が悪い国だ。


 自分こそが世界を統一する皇帝だと自負しているガルディス帝国の皇帝は、自分と同じように皇帝を名乗るグレンヴァルガ帝国の皇帝に何度も戦争を挑み、領地を奪って行った。もちろんグレンヴァルガ帝国の皇帝もただ奪われるだけでなく自分たちからも戦争を何度も仕掛けていた。

 お互いに領地を奪ったり、奪われたりしているせいで仲が悪い。


「ガルディス帝国の西部にも迷宮があります。そこに新たな迷宮主が生まれた、と5年前に神託を受けました」

「なるほど」


 一番可能性が高そうなのがガルディス帝国の迷宮主だ。

 もっとも消去法でしかないんだけど……


「とはいえ、他に迷宮主がいる可能性がない訳ではありません」

「そうなの?」

「わたしが『巫女』を継承したのは今から11年前の話。それよりも前に誕生していた迷宮主の場合には神託を受けることができません」


 他の迷宮主に接触するなど、神が気にするような行動を起こしていなければ神託を受け取ることもない。

 もしかしたら6人目や7人目の迷宮主が世界のどこかにいるかもしれない。


 それでも貴重な情報が得られた。


「ありがとう。これで今後の方針が決まった」


 一度、迷宮都市やガルディス帝国は訪れておいた方がいいのかもしれない。

 それに世界へ目を広げてみた方が色々な事が見えるかもしれない。


「こんな情報で本当に役に立ったんですか?」

「ああ」


 シルビアたちにも確認してみたところ頷いていた。

 パーティの総意として報酬分の働きは必ずする。


「もしも、俺たちが護衛に失敗した時には責任を取らせてもらう。報酬だけ貰って失敗してそのままなんて冒険者として許される事じゃないからな」

「……分かりました。何か考えておきます」


 こんな事を言いたくはないが、死後に彼女の為にしてあげられる事を本人に考えておいてもらわねばならない。

 万が一に失敗した場合には、その願いを叶えるのが依頼を引き受けた者の責任だと考えている。


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