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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第18章 拠点拡大
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第12話 拠点領域拡大

『経路接続完了』


 迷宮核が最後に必要な作業を終える。


『うん、順調に魔力が流れているね』


 それは、退屈な作業が終わった事を告げる言葉だった。


「終わった……」


 目の前に向かい合っていたイリスと手を組んで喜びを分かち合う。


 作業を開始してから3日目の夕方。

 既に空が暗くなり始めた頃にようやく作業が終わった。


 冬は早くに陽が落ちるので夕食までは時間がある。それでも退屈な作業による疲労から倒れそうになる体を堪えて迷宮の最下層へと転移する。


「おかえりなさい」

「おつかれ」


 そろそろ作業が終わるということで迷宮の最下層で待機していてくれたシルビアたちが出迎えてくれた。


 今回はアイラも含めて全員がいる。

 これから行う作業なら妊婦の体にも負担は少ない。


「ただいま」


 最下層に置かれたソファに寝転がって体を沈める。

 イリスも同じようにソファで横になっていた。


「私たちも手伝えればよかったのですが……」

「こればかりは【迷宮操作】がないと手伝えないからな」


 だから気にする必要はないと伝えてある。

 それに手伝えなかった分メリッサたちが活躍するのはこの後だ。


「じゃあ、拠点拡大」

『了解』


 アリスターにある屋敷を中心に魔力が広がって行く。

 メリッサクラスの魔法使いなら都市全体に魔力が供給されていることに気付くことができたかもしれないが、今のアリスターに気付けるほどの人物はいないので安心して魔力を流せる。


「……どうだ?」


 5分ほど待ってから尋ねる。


『順調だよ。色々と情報が集まって来ている』


 街の至るところで行われている会話。

 どこに誰がいるのか。

 建物の配置や置かれている物。


 アリスターの都市内限定だが、ありとあらゆる情報が迷宮へ集まって来て目の前に出現した透明な画面に文字として表示されていた。

 人間なら精査しているだけで頭が破裂しそうになる量だ。


『ま、僕にとってはいつもの業務に量が増えただけだね』


 普段から迷宮内の全てを把握・管理している迷宮核にとっては管理する範囲が増えた程度でしかない。

 それでも目的の人物を探すには時間が掛かる。


「じゃ、そっちはお願い」


 疲れた俺とイリスはソファで寝る。



 ☆ ☆ ☆



 ――30分後。


「見つけた!」


 アイラの声に起き上がる。

 どうやら目的の人物を見つけたらしい。


「よく見つかりましたね」


 画面を注視していたメリッサも顔を上げる。


「ふふん、どんなもんよ」


 胸を張って自慢気にしていた。

 ここのところ全く活躍できていないだけに見つけられたことが嬉しいらしい。


「それで、あいつらはどこにいるんだ?」

「あ、見つけたって言ってもあたしが見つけたのは後継者連中じゃなくて、あたしたちを狙っている連中ね」


 グリーソン一家の後継者を名乗る二人の目的は、組織を壊滅させた俺たちへの復讐らしい。

 正直言って逆怨み以外の何物でもないので迷惑極まりない。


「で、これが20分ぐらい前に行われた会話ね」


 アイラが画面に手を触れて操作すると問題の会話が再生されて最下層に響き渡る。


『おい、本当にあのマルスとかいう生意気な冒険者の身内を襲うだけで金が貰えるんだよな』

『それが私の依頼だ』

『いいだろう。その依頼引き受けた』


 二人の男の話し声が聞こえて来る。

 一人は聞き覚えがないが、もう一人の方には聞き覚えがある。


『でも、アニキ……これって犯罪じゃないですか?』

『馬鹿野郎! 俺たちがギルドに払わないといけない借金を忘れたのか!? 一人あたり金貨10枚だぞ!? そんな金を本気で支払えると思っているのか? これぐらいの危ない橋を渡らないと払えないんだよ!』


 ……あ、誰なのか思い出した。


『それに俺たちだってバレなければいいんだよ』

『そ、そうですよね! 俺たち以外にも雇われた奴はいるんだ。10人以上で襲い掛かれば女をどこかへ連れ込んで楽しくやるなんて簡単だ』

『今は少しでも戦力が欲しい。だが、向こうも私の存在に気付いている可能性がある。実行するならすぐにでも行動に移そう』

『ああ、いいぜ』


 そのまま小汚い姿をした男数人と合流して街の奥へと移動している。


「明らかにあたしたちに敵意を持っている相手の会話でしょ」

「ついでに依頼を持ち掛けている相手も誰なのか分かるな」


 この間の盗賊退治の依頼で醜態を見せてしまったギーシュだ。

 彼らには故意に命令違反をした罪によって冒険者ギルドから重たい罰が与えられていた。詳しい罰の内容までは確認していなかったが、今の会話を聞く限りは罰金が課せられたらしい。


 この借金から逃れることは出来ない。

 冒険者ギルドは世界中に存在し、罪を犯した者が逃げ出した場合には即座に他の街にある冒険者ギルドにも連絡が行って指名手配されるようになっている。

 金貨10枚は重たい金額だが、絶対に払わなくてはならない。


 その罰金から逃れる為に危ない依頼を引き受けることにしたらしい。


 依頼を持ち掛けているもう一人の男に関しては分からないが、この人物がおそらく盗賊の言っていた『オッサン』だろう。


「でも、その選択も愚か」


 ソファに寝そべったままのイリスが言う通りだ。

 既に俺たちに知られてしまっている。さすがに迷宮の能力で得た情報を公開する訳にはいかないので色々と捕まえるのに最低限の証拠さえ集めれば犯罪者として奴隷落ちさせることができる。


 冒険者ギルドに借金をしている彼らの立場はそこまで低い。


「問題は誰を狙っているのか分からないのよね」


 残念ながら会話の中に誰を狙うのか名前はなかった。

 それでも身内を狙っている事は確かだ。


「私たちの身内全員の現在位置を地図に表示して下さい」

「メリッサ?」

「襲撃者の現在位置は分かっています。おそらく誰かの下へ向かっているはずですので父や母など身内の現在位置が分かれば誰を狙っているのかも自然と分かるはずです」

「なるほど」


 早速全員の現在位置を表示するよう迷宮核に指示を出す。


『あのね。さすがに僕も全員の位置を一瞬で把握するのは無理だよ』


 迷宮核が行っているのは膨大な量の情報の中から必要な情報を探す作業だ。身内をずっと追っている訳ではないので現在位置を把握していない。

 探せなくはないが、条件を絞っても時間が掛かる。


「いえ、この場合は主が必要になります」

「俺?」

「お義母様や妹たちの現在位置は分からなくても護衛の為に彼女たちの影に潜り込ませたシャドウゲンガーの現在位置は指示を出せば、すぐに分かりますよね?」

「もちろん」


 地図にシャドウゲンガーの位置を表示させる。

 なるほど。たしかに襲撃者たちはシャドウゲンガー……護衛されている誰かに近付いている。


 ここからでは誰の護衛なのかまでは分からない。


「お前が護衛しているのは誰だ?」


 迷宮の魔物は迷宮主の支配下にある。

 こうして距離に関係なく指示を出したり、状況を確認することができる。


 ……最悪な状況だ。


「最近新しく護衛任務に就いたばかりのシャドウゲンガーだって言っている」

「それって……」


 最近護衛を用意したのは一人しかいない。

 アリアンナさんだ。


「たしかに彼女も身内になるけどさ」


 俺との血縁関係は『兄の妻になる人』だ。

 そんな人にまで手を掛けようとしている。


 もはや手加減する理由がなくなった。


「依頼で迷惑を掛けただけじゃなくて、ちょっとした関係しかない人まで巻き込むか」


 全く反省していない。

 少なくともギーシュたちは死ぬよりも苦しい目に遭わせる事が決定した。


「行くぞ」


 お互いの距離からして、数十秒後には接触してもおかしくない。

 本当にギリギリで間に合った。


「お前は留守番だ」

「え~」


 着いて来ようとしたアイラを引き留める。

 探し物の手伝いぐらいならまだしも、これから確実に戦闘が行われる。たとえ、相手がどれだけ雑魚だったとしてもアイラの体を考えれば着いて来させる訳にはいかない。


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