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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第18章 拠点拡大
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第9話 領主の許可

 盗賊を退治してから2日後。

 祖父の遣いからアルケイン商会の屋敷へ赴くよう伝えられた。


 招待されているのは俺一人。いつも眷属の中で誰か一人は俺の傍に付いているのだが、俺だけがアルケイン商会の屋敷へと赴いていた。


 商会の使用人に案内されて応接室へと入る。


「招待されていたのは俺だけではなかったんですね」

「私もいる」


 領主であるキース様もいた。


「座ってくれ」


 促されて椅子に座ると使用人がお茶を運んでくる。

 祖父とは親睦を深める為に何度か経験しているので慣れたが、領主であるキース様とは何度経験しても緊張してしまう。


「緊張する必要はない。今日、君を呼び出したのは先日引き受けてもらった依頼について確認したいことがあったからだ」


 依頼は領主からギルドへとなっていた。

 キース様がギルドに尋ねれば詳細な情報を手に入れることは可能だ。


 ちなみに盗賊たちを尋問して手に入れた情報については教えてはいけない情報の入手方法を除いて全てギルドに渡している。


「どうやらサルマ・グリーソンの子供がいたらしいね」

「その通りです」


 その名前を聞いて祖父が顔を顰めていた。


「奴の子供がここへ来ているのか」


 依頼を引き受けただけの相手だが、その相手から命を狙われていたので思わない事がない訳ではない。


「どうするつもりだい?」

「もちろん見つけて対応します」

「見つけられるのかい?」


 白髪の40代ぐらいの男性。

 緑髪に碧眼の少年。

 人相については捕らえた盗賊たちは二人の姿をほとんど見えていないので分からない。知っているのは交渉をしていた盗賊団の頭領ぐらいでギーシュたちに任せて処分してしまったことが悔やまれる。


 キース様が言いたいのは、そんな相手を見つけられるのか?


 正直言って情報が少な過ぎる。


「充分です」


 普通の手段では見つけられないだろう。

 だが、こちらには迷宮(ダンジョン)という通常ではない手段がある。


「もしかして、『あれ』による方法を使うつもりかい?」


 キース様は俺が迷宮主(ダンジョンマスター)であることを知っている。

 『迷宮』という言葉を濁して『あれ』という言葉を使用したのは、この場に俺が迷宮主(ダンジョンマスター)だという事を知らない祖父がいるからだ。


 本当はキース様にも内密に事を進めようと思っていたが、話ができる状況にあるならついでに教えておいた方がいい。


「はい。街に影響はありませんが、特定の人物を探せるようになる方法があります」


 そんな方法があるのか、といった表情で俺を見て来る。


 別にアリスターの為政者や支配者という訳ではなく、あくまでも街に住む者として生活させてもらっているのだから、そんなことをするつもりはなかった。


「都市に問題はないのかい?」


 迷宮の力を使ってアリスターへ何かをする。

 領主として心配になるのも仕方ない。


「アリスターに問題はありません」


 むしろ問題があるのは迷宮の方だ。

 迷宮の魔力をかなり消費してしまうことになる。


 だから本来なら手を付けたくなかった機能だったのだが、万が一の場合を考えると早急に手を打つ必要があった。


「こちらは現在準備を進めています。予定では明日の夕方までには全ての準備が整うはずです」

「それはよかった」


 自分の治めている都市の中に危険人物がいる。

 領主としては安心できる状況ではない。


「ただし、お願いしたい事がある」

「はい」

「今回のような緊急の事態を除いて使用しないで欲しい」


 キース様の要望は領主としてもっともだ。

 ただ、こちらとしても魔力の無駄使いになる可能性が高いので目的が達成されれば撤収するつもりでいた。


「では、色々と進めてしまって構わないですね」

「それぐらいならいいだろう」


 許可を貰えたので念話でイリスに伝える。

 作業は俺とイリスで行っていたのだが、祖父に呼ばれてしまったので今はイリスに全て任せてしまっている。


「その……何をやろうとしているのかは分かりませんが、領主様も孫も私たちの為に色々と動いてくれているのですよね」

「残念だが、少し違うな」


 後継者の狙いは自分の父親の組織を壊滅させた俺への復讐だ。

 血縁者、もしくは最後の依頼の標的ということで祖父が狙われている可能性もない訳ではないが、祖父が直接狙われている可能性は低いだろう。


 それにキース様も当事者だ。

 自分の領民が良からぬ企みに利用されようとしている。

 ここで見逃すようでは領主としての資格を疑われてしまう。


「そういう訳で私たちは自分たちの為に動いている」

「そういうことです」


 祖父に色々と動いていることを聞かせているのは、少なからずグリーソン一家との関わりを事前に知らせておきたかったから。


「私としてはアルケイン商会の元会長として何か情報を掴んでいないのか聞きに来たのだ。人を介してでは伝えられないような話もあるからな」

「それは……」


 どうやら祖父は何か情報を掴んでいたらしい。

 しかし、自分の予想していた事態とは全く違う方向へ進んでしまっているので情報を渡すべきなのか迷っている。


「黙っていたことを咎めるつもりはない。彼らがアリスターへ来なければ私も無関係だったのだから。しかし、貴殿の孫が事態解決の為に無償で、しかも危険を承知で動いているというのを理解して欲しい」


 グリーソン一家の後継者を探す件に関して報酬は出ない。

 誰かが捕まえて欲しい、と依頼を出した訳でもないので報酬も当然ない。

 だが、このまま放置してしまうと自分たちに危害が及んでしまうのは確実なので先手を打って動いているだけだ。


 今のところ危険はない。

 どちらかと言うと危険を避ける為に動いている。


「おじいさん」

「分かった」


 深く頷いてから話し始める。


「商売を続ける傍らでグリーソン一家の後継者が現れたという話は夏前には掴んでいました。報復などされる訳にはいかないので色々と動いて情報を集めて拠点などが分かってから孫に依頼を出すつもりでいました」


 指名依頼なので高額になってしまうが、祖父からは身内以上の信頼を得ている。

 それに相手がグリーソン一家に関係する人物となれば俺が対応する方がいい。


「ですが、こちらが依頼を出す前にアリスターへ来る以前に拠点としていた場所の近くにある街の冒険者が逸ってしまったせいで逃げられてしまいました」


 冒険者が盗賊を討伐した場合には、盗んだ物だったとしても盗賊の所有物は全て討伐した冒険者の物となる。そのため、討伐できるだけの実力があるなら冒険者にとっては儲かる仕事となっている。


 その結果、俺への報復の予定を早めてアリスターへ来ることにした。


「後継者を名乗っている子供の名前はエルマー。サルマが娼婦との間に作った子供です。ただ、サルマも自分の仕事が非常に危険なもので、自分だけでなく家族も恨まれることになるということは分かっていたようで親子関係にあるとは公言していませんでした」


 組織が稼いだ金だけ仕送りして子育ては母親が全て行っていた。

 送られた金は既に母親とエルマーの物となっているので、組織を壊滅させた俺に所有権はない。


「その仕送り金を運んでいたのがエルマーの叔父を名乗る人物だというところまでは調べました。おそらく、その人物が盗賊団と交渉していた人物でしょう」

「母親はどうしています?」


 母親と一緒に暮らしていたはずのエルマーが叔父とだけ一緒に行動しているのはおかしい。


 俺の質問に祖父が首を横に振る。


「亡くなりました」

「それは、確かな情報か?」

「はい。こちらでもエルマーが母親と暮らしていた場所までは調べることができたのですが、去年の冬が終わる頃に病気で亡くなったと近くに住む者が言っていたそうです。その後、エルマーは叔父を名乗る人物に引き取られたとのことです」


 近所の人も仕送りを持ってきていたので叔父だと疑っていなかった。

 だから連れ去られることも疑問に思わなかった。


「叔父の人相や名前は手に入りませんでしたが、エルマーの人相に関しては手に入れることができました。後でお渡しします」

「ありがとうございます」


 必要な情報は手に入った。

 なくても探すことはできたが、これで格段に探し易くなった。


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