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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第18章 拠点拡大
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第5話 受付嬢の苦悩

 衝撃の報告を受けた3日後。


「おはようございます」


 朝早くに今回の依頼の待ち合わせ場所である街の北門へ向かうと冒険者ギルドの受付嬢であるルーティさんが今回の依頼に必要な資料を持って立っていた。

 その隣では俺たちと変わらない年齢の少女が一生懸命資料の内容を確認していた。


「今日はよろしくお願いします」


 早い時間から待っていてくれたルーティさんに挨拶をする。


「みなさんもよろしくお願いします」


 今回の依頼は他のパーティとも一緒に行われるということで先に来ていた2組のパーティにも挨拶をする。


「お、お願いします!」

「よろしく」


 挨拶をされた冒険者は片方は緊張した様子ではあったものの明るく挨拶を返してくれた。


「ほら、あなたも挨拶をしなさい」

「え……!」


 隣にいた少女もようやく俺たちが来たことに気付いたようで顔を上げていた。


「は、初めまして……!」


 たどたどしく挨拶をして来る。

 これまで冒険者ギルドの受付にいる姿は何度か見たことのある新人であったが、こうして言葉を交わすのは初めてだった。


「わたし、秋から冒険者ギルドで働けることになりましたロゼッタと言います」

「はぁ」


 緊張した様子のロゼッタが近付いて来て手を握って来る。


「ようやくマルスさんと会えました」

「えっと……」

「わたしの1つ年上なだけなのに冒険者の中でも最高と言っていいAランクまで一気に駆け上がった凄く優秀な人ですよね」

「たぶん、そうです」


 間違ってはいない。

 しかし、目の前にいる少女のように興奮した様子で言われると肯定しにくい。


「会えて嬉しいです。今日はよろしくお願いします」

「よろしく」


 ロゼッタが手を差し出して来たので握手をする。


「すみません。新人なので若くして成り上がった方に憧れがあるんです」

「何を言っているんですかルーティ先輩。冒険者ギルドの受付嬢の野望と言えば、お金をたくさん持っている冒険者を捕まえて養ってもらうことですよ」

「……そうですね」


 ロゼッタの力説をルーティさんは否定しなかった。

 そういう受付嬢がいるのは確かみたいだ。


「今日は5人ともよろしくお願いしま……あれ?」


 俺たちの姿を確かめていたルーティさんが一人足りないことに気付いた。


「アイラさんはどうしました? 体調不良ですか?」

「そうですね。ある意味体調不良です」


 パーティで依頼に参加しているので本来ならアイラも参加が必須になる。

 だから、この場にいない理由をルーティさんにも伝えなければならない。


「うそ……!」


 不参加の理由を伝えると手で口を押さえていた。その拍子に抱えていた資料が地面に落ちてしまったのでシルビアが回収している。


「10代で出産……」

「ルーティさん?」

「私なんて、もう27歳なのに……」

「先輩?」


 俺やロゼッタの呼び掛けが聞こえていない。


「あの~」


 ルーティさんの顔の前で手を振る。

 だが、見えていないのか全く反応がなかった。


 仕方なく手を引っ込めようとするとガシッと掴まれた。


「え……?」

「マルス君、私も貰って下さい!」


 鬼気迫る表情で顔を近付けてくる。


「は!?」

「冒険者ギルドの受付嬢として働いて早10年。気付いたら、もう27歳になっていたんです。私もそろそろ結婚とか出産を考えないといけない年齢なのになかなか条件のいい男性は捕まらないんです。でも、マルス君なら年齢さえ気にしなければ問題ないです。どうですか? マルス君の資産ならもう一人養うぐらいならできそうですし、ここは一つお姉さんも……」

「はい、そこまで」


 シルビアとイリスに引き摺られて離れて行く。

 あんなルーティさん初めて見た。


 思わず残っていたメリッサの後ろに隠れてしまう。


「ははっ、ごめんなさい」

「大丈夫ですよ」


 メリッサが代わりに謝って来たロゼッタに応えている。


「ルーティさんは焦っているみたいですね」

「実はわたしと入れ替わるように辞めたベテランの方がいたんですけど、その方が辞めてしまったせいで先輩が受付嬢の中で最高齢になってしまったんです。その事を年末にお酒を飲んでいた時に他の先輩が指摘してしまったところ……」


 泣き出してしまったらしい。

 それ以来、ルーティさんの前で年齢に関する話題は受付嬢の間でタブーとなってしまった。


「後は結婚や出産の話もダメですね」


 ロゼッタが自分のメモ帳を取り出してメモしている。

 後で他の受付嬢に報告するつもりなのだろう。


「ただ、先輩の言っていた事も冗談という訳でもないんですよね」


 ガシッと今度はロゼットにも手を掴まれてしまった。


「マルスさんならわたしもお嫁さんに立候補します。あんな年増な先輩よりも齢の近いわたしの方が絶対にいいですよ」


 受付嬢は漏れなく金を持っている冒険者を狙っているのだろうか?


 受付嬢はギルドにとって顔とも言える存在なので基本的にロゼッタのように可愛いい娘やルーティさんのように美人な人ばかりだ。

 そのため荒っぽい男の多い冒険者から何度もアプローチされている。


 ただ、受付嬢も選ぶなら成功している冒険者の方がいいのでアプローチに応える相手は選んでいる。


 で、俺はルーティさんやロゼッタの条件は満たしている。

 ……金は持っていますからね。


「何を馬鹿な事を言っているの」

「いたっ!」


 戻って来たルーティさんがロゼッタの頭を叩いていた。


「ウチの新人職員が失礼をしました」

「いえ……」


 先に妄言を吐いていたのはあなたです。

 ……とは言えなかった。


 ルーティさんの後ろにいるシルビアとイリスも苦笑いしている。


「ええと、しばらくアイラさんは休養ということでよろしいですね」

「そうですね。依頼を受けさせるつもりはありません」


 アイラだと自分の妊娠にも気付かなかったように体調の悪化にも気付けずに依頼を引き受けそうで心配だったため冒険者としての活動を全面的に禁止させてもらった。


 当然、アイラはそれに反対した。どうやら体を動かしていないと体が鈍ってしまうせいでストレスもあって逆に体調を崩してしまいかねないとのことだ。

 仕方なく迷宮での軽い運動ぐらいなら許可した。あそこなら魔物は出て来て本来なら危険な場所なのだが【迷宮適応】さえ使用していれば魔物が襲って来ることは絶対にないので環境が常に一定に保たれていることもあって地上よりも逆に安全となっている。


「分かりました。しばらくは4人パーティとして登録しておきます」


 アイラが不参加となることを手元の資料に書き込んでいく。


「あ、ようやく残りの2組も来たみたいですね」


 振り返ると街の北門で手続きをしている8人の冒険者の姿が見える。

 残り2組のパーティがようやく姿を現したらしい。


「よう、あんたがマルスか」


 やって来た冒険者の中でリーダー格らしい相手が近付いて来るなり俺にそんな事を言って来た。


「そうだけど?」


 相手とは初対面なはずだ。

 辺境ということで様々な魔物が出没し、近くには迷宮があることもあってアリスターにかなりの数の冒険者がいる。それに毎年のように自分の力を過信した新しい冒険者が来ては怪我や実力不足から引退して行く冒険者は何人もいる。

 それなりに知り合いはいるが、全員を知っている訳ではないので目の前にいる男のことを知らなくても仕方ない。


「ちょっと運が良かったから戦争で活躍できてAランクになれたみたいだけど、お前みたいに弱そうな奴が簡単にAランクになれるはずがないんだ。俺が化けの皮を剥いでやるよ」

「ギーシュさん!」

「チッ」


 ルーティさんに注意されて舌打ちしながら7人の冒険者を連れて離れて行く。


「ごめんなさい。ギーシュさんはDランクの冒険者で実力はそこそこあるんですけど、素行が悪いせいでCランクになかなか上がることができずに何年も燻っているんです。そのせいで簡単にランクを上げられたマルスさんを目の敵にしているみたいで」

「事情は分かりました」


 つまりは、あっという間にランクを上げた俺に対する嫉妬だ。

 実際、迷宮主(ダンジョンマスター)になれたおかげなので俺から何かを言う事はない。


「それでは――依頼の説明を改めてしたいと思います」


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