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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第18章 拠点拡大
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第2話 逃亡盗賊

 久しぶりに訪れた冒険者ギルドは閑散としていた。

 併設されている酒場の方には午前中の内から酒を飲んで顔を赤くしている者がいたのだが、ギルドの方では二人の冒険者が掲示板で依頼の内容を確認しているだけで職員の受付窓口も二人の女性がいるだけで残りは奥の方にいた。


 俺たちの担当であるルーティさんも窓口の方にはいないようなので、まずは掲示板で依頼の内容を確認して見ることにする。


「やっぱり迷宮で薬草とか特定の魔物の素材を採取して来て欲しい、っていう依頼が多い」

「それだとつまらないだろ」


 迷宮へ転移して必要な素材のある場所へ行って回収するだけ。迷宮主(ダンジョンマスター)なので素材がどこにあるのか探す必要もない。採り尽くされていた場合には宝箱(トレジャーボックス)で手に入れることも可能だ。


 本当に困っている場合なら助けてあげてもいいが、難易度が低すぎると面倒なだけになってしまう。


「あとは護衛依頼とか……」

「そっちはもっと却下」


 なぜ、この寒い中で他の街まで護衛をしなければならないのか。


 護衛依頼ともなれば他の街まで商売に出掛ける商人が中心となる。冬なので野営はせずに途中にある村で宿に泊まれるよう計画的に移動する。そうなると夏以上に何日も時間が掛かってしまう。

 基本的には引き籠るつもりなので、あまりアリスターを留守にしたくなかった。


「とはいえ、他の依頼も……」


 依頼人の方も冬なので細々と商売をしている。

 冬になって冬眠しているのは魔物だけでなく人間も同じだ。


「急ぎの用事もないみたいだし帰るか」

「ま、やる気のない人に依頼をやらせても意味がないし、その方がいいのかもね」


 帰る為に踵を返すと肩に手を置かれた。

 振り返ると笑顔のルーティさんがいた。


「お久しぶりです」

「すいません。しばらく来られなくて」

「いいんですよ。冬はほとんどの冒険者が体を休めていますからね。でも、本当に助かりました」


 俺たちが現れたことでホッとした様子だった。


「何かありました?」


 面倒な依頼があって頼み事があるということだろう。

 これでもAランク冒険者で、アリスターにいる冒険者の中では経験は不足しているが戦闘能力面では最高レベルだ。


「ちょっと頼みたい依頼があったんです。いつも顔を出してくれるアイラさんに頼めばいいかと思っていたんですけど、今日に限ってお昼近くになっても来てくれないので屋敷の方へ私が赴かないといけないかなと思っていたところにお二人が来てくれたんです」


 本当に久しぶりに冒険者ギルドを訪れた俺には今日に限ってギルドへ顔を出さなかったアイラを咎めることはできない。


 ルーティさんにとっては、ちょうどいいタイミングで来られたらしい。

 厄介なのは、態々高ランク冒険者に頼まなければならない依頼。


「話を聞くだけならいいですよ」

「ありがとうございます」


 非常に面倒な事になりそうだ。

 けれども、ルーティさんには新人の頃からお世話になってばかりだったので、お願いを無碍にもできない。


「ただ、このような場所で話せるような内容でもないので奥の方へお願いします」


 ルーティさんに案内されて2階にある応接室へ向かう。


 お互いにソファに座ったところで1枚の依頼票を差し出して来た。

 内容を確認させてもらう。


「……盗賊退治?」


 アリスターの近くに盗賊が住み着いてしまったかもしれないので捜索と討伐をお願いしたいという領主からの依頼だった。


 盗賊の情報については既にある程度は分かっていた。

 規模は30人程度で、街道を利用する商人と荷物を積み込んだ馬車を既に何度も襲っており、犠牲者が何人か出ていた。


「けど、この程度の規模なら中級冒険者でもどうにかなるんじゃない?」


 イリスが疑問に思ったように盗賊退治ならCランクやDランクの冒険者でも何組かパーティを用意すれば難なく片付けられる依頼のはずだ。

 少なくともAランク冒険者が5人もいるパーティに依頼する内容ではない。


「もちろんマルス君たちにお願いしている理由があります」


 個人を指定したい理由。

 本当なら聞きたくない。


「今回の依頼はイリスさんが言ったようにCランクとDランクのパーティ4組に依頼しています。ですが、依頼人からは一人も逃がさずに討伐もしくは捕縛するよう厳命されていますので万が一のことがあっては困るんです」


 ギルドとしても盗賊が出没するのは困るので反対する理由もなかった。


「そこで、高ランク冒険者を付けることにしました」

「なるほど」


 つまり、俺たちは万が一の事があった場合における保険みたいなもの。

 ランクは高いが、若く経験不足なところは否めないので引率役ではない。


「それだけですか?」


 俺たちの依頼したい理由がそれだけなら他のAランク冒険者でも問題ないはずだ。


「いえ、どちらかと言うともう一つの理由の方が重要です」


 それを聞いてしまえば受けざるを得ないような気がする。


「今回、討伐依頼が出された盗賊は他の街で活動していたところ失敗して拠点が知られてしまったので辺境まで逃げて来た盗賊です」

「今の時期に活動場所を変えるのはおかしいですからね」


 盗賊は当然のように人の出入りを厳しく確認される街の中へ入ることができない。

 小さな村のように確認が甘いところなら入れるかもしれないが、追われる立場にある事を思えば街の外にある森や洞窟のように人目に付かない場所を拠点にしている。

 そんな場所は、今の時期は過ごすには不適切な環境になっている。


 逃げて来たということは、よほどの事情があったみたいだ。


「実は、盗賊の何人かについては気になる人がいたんです」

「気になる人?」

「元グリーソン一家の構成員です」


 眉がピクッと動いてしまう。

 思わず反応してしまった。


 グリーソン一家。

 暴力による揉め事の解決を請け負っている裏家業の組織で、1年前に母の実家であるアルケイン商会を襲撃するよう依頼を引き受けた。その時に俺たちが護衛依頼を引き受けていたので、面倒事をさっさと解決する為に組織を壊滅させた。


 グリーソン一家の話を持ち出して来たということは、ルーティさんも俺たちと彼らの関係性を知っているはずだ。


「以前に全滅させたはずですよ」


 他に大きな依頼を引き受けている訳でもないから全員がいると言っていた。

 だから殲滅することに躊躇しなかった。他にいるようなら居場所を聞き出す為に何人か生き残しておいたからだ。


「壊滅した事実はギルドの方でも掴んでいました。ですが、春ぐらいからグリーソン一家の後継者を名乗る人物が現れたらしく、盗賊活動を行っていました」


 グリーソン一家の後継者を名乗る人物の盗賊団。

 それが、俺たちに依頼したい理由。


「いいですよ。そういう事情なら引き受けます」


 俺たちがきちんと殲滅できなかった事に原因があるかもしれない。

 それに後継者を名乗る人物も気になる。


「ありがとうございます」


 依頼の開始は3日後。

 他の冒険者たちが準備に時間が必要ということで取り逃がしたりしないよう全員で同時に捜索を始めるとのこと。その際に冒険者ギルド主導で行われるので、ギルドからルーティさんが監督役として派遣されることを聞いた。


 俺については準備もそれほど必要ないので、決まった事を夕食の時間にでも伝えれば問題ないだろう。


「では、3日後にお願いします」


 挨拶を交わして冒険者ギルドを後にする。



 ☆ ☆ ☆



「おかえりなさい兄さん」


 依頼も引き受けて屋敷でのんびりとした時間を過ごしていると夕方になる前に兄が返って来た。


「ただいま」

「おじゃまします」


 アリアンナさんも一緒だ。

 デートを切り上げて帰って来たのかと思えば夕食は屋敷で一緒に摂るということで帰ってきたようだ。


 アリアンナさんが兄と別れてシルビアのいるキッチンへと向かう。


「ちょうどいいところにいてくれた」

「何です?」

「夕食の後できちんと言うつもりだけど、報告とお願いしたい事があるから屋敷にいる全員に伝えておいて欲しい」

「分かりました」


 アリアンナさんを連れて来た状況で報告したい事。

 思い当たる事は一つしかないので全員に夕食にはきちんと参加するよう伝える。


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