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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第17章 亡霊行進
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第23話 死を超越せし者⑤

 氷の中に閉じ込められた爺さん。


「やったの、ですか……?」


 アンデッドの浄化を終えたミシュリナさんとクラウディアさん、メリッサが近付いて来る。


「いや、まだです」


 気配を感じる。


「離れて!」


 地中から瘴気が溢れ出して来た。

 瘴気は爺さんの閉じ込められている氷に体当たりをするように何度も当たり、氷を砕いてしまった。


 パラパラと氷の破片が舞い散る中、爺さんが俺を睨みつけて来る。


「そんな……」


 ミシュリナさんとクラウディアさんが言葉を失っている。

 氷の中に閉じ込めても瘴気が閉じ込めている物を破壊してしまう。氷以外の物で閉じ込めても同じような結果になるだろう。


「封印してもダメなのですか?」

「一体、どうすれば……」


 ……ん?


「もしかして、殺せないから氷の中に閉じ込めたとか考えています?」

「違うのですか?」


 たしかに浄化も通用しない不死を相手にするうえで有効な手段かもしれない。

 しかし、俺たちが爺さん対策に考えておいた方法は別にある。


「もう次の手は打っています」


 そう言って握っていた鎖を見せる。


「鎖……?」


 鎖の先を確認する。

 道具箱(アイテムボックス)から取り出した俺の持っている鎖の反対側はシルビアが握っており、同じように道具箱(アイテムボックス)から取り出したイリスの鎖をアイラが握っていた。


「なんじゃ、この鎖は?」


 ようやく爺さんも自分の体に鎖が絡まされていることに気付いた。

 けれども、もう遅い。


「廻れ」


 俺の合図と共に4人で爺さんの体の周りを回る。


 すると、4人で持っていた鎖が爺さんの体に絡み合って行く。

 抵抗する間もなく鎖を絡み付かされた爺さんが立っていられなくなって座り込んでしまう。


「こんな物で拘束したくらいでなんじゃ」


 爺さんが霊体化しようとする。

 物理的に拘束したところで霊体になってしまえば抜け出すのは簡単だ。


 もっとも、それも霊体になれたらの話だ。


「なぜじゃ!?」


 霊体になれないことに驚いている。


「理由は簡単だ。爺さんの体に巻き付いている鎖は『狂感鎖(きょうかんさ)』。拘束された者の感覚を狂わせてスキルの使用を封じる鎖だ」


 スキルが封じられている為に霊体になることができない。


「無駄じゃ。儂自身のスキルを封じたところで、どうにもならん」


 氷の中に閉じ込めた時と同様に瘴気が集まって来る。

 拘束しても瘴気が自動的に助けてしまう。


「いや、一時的に脱出ができないようにすれば問題ない」


 俺とイリスで爺さんを囲むように【迷宮結界】を展開させる。

 爺さんの体に集まろうとしていた瘴気が結界に阻まれて合流できない。


「とはいえ、瘴気がないからって爺さんから不死性が失われたわけじゃないんだよな」


 この場で爺さんの体を灰にしたところで後から瘴気が勝手に爺さんの体を再生させてしまう。結界だっていつまでも展開し続けられていられる訳でもないので、いつかは再生されてしまう。


 結局、結界内に閉じ込めるという方法も無駄に終わってしまう。


「いい加減に学習するがよい。儂をどうにかする方法など存在しないんじゃ」


 爺さんが何かを言っているが無視だ。


「どうするつもりですか?」


 心配になったミシュリナさんが尋ねて来る。

 さすがにここまでの不死性は予想外だったのだろう。


「大丈夫です。きちんと方法は考えています」


 もう少し稼ぎたいところだったが、そろそろ面倒臭くなってきたので終わらせることにする。


「その前に一つ確認したいんですけど、聖女の【転移】でここへ戻って来ることは可能ですか?」

「聖女の【転移】は条件を満たして拠点にすることができた神殿、神殿のある街への移動を可能にするものなので、ここへ戻って来ることはできませんが、ここから西へ4キロほど進んだ場所にある街への転移なら可能です」


 4キロ程度ならすぐに戻って来ることができる。


「だったら協力してくれますか?」

「何をすればいいですか?」

「あの爺さんを完全に無力化する為に迷宮へ連れて行きます。ただ、連れて行くだけなら眷属の誰でもいいんですけど、迷宮でやらなければならないことがあるんです。それは俺にしかできないことなので、俺が行くしかありません。ここへ戻って来る為の協力が必要になります」

「分かりました。私が戻る為の協力を――」

「お待ちください」


 協力が得られそうなところでクラウディアさんから待ったが掛かる。


「いくら迷宮主が同行するとはいえ、ミシュリナ様を危険な場所へ赴かせる訳にはいきません。私が同行します」

「……大丈夫ですか?」

「はい。【転移】だけなら侍女でも可能ですから」


 結局クラウディアさんが同行することになった。

 鎖に縛られて身動きのできない爺さんを連れて迷宮の地下60階へ跳ぶ。



 ☆ ☆ ☆



 クラウディアたちが姿を消してから30分。

 入念な浄化が終われば、特にすることもないので聖女としてアンデッド騒動に巻き込まれてしまった人たちの為に炊き出しを手伝っています。とはいえ、ほとんどは迷宮眷属であるシルビアさんに任せてしまっています。私もある程度ならできるのですが、料理関連に関しては彼女の方が圧倒的に上です。


「あ、来ましたよ」


 他の眷属の方々もクラウディアが戻って来る予定のここから一番近い街の方向を見ています。


 私にもクラウディアが帰って来たのが分かりました。

 彼女たちは、自分の主の反応を感じ取ったのでしょう。


「ただいま」


 それから5分ほどするとクラウディアを抱えたマルスさんが戻って来ました。

 その際、抱えられていることを羨ましそうに見られていることに気付いてクラウディアが肩をビクッと震わせていました。


「上手く行ったのですか?」

「はい。あの爺さんについては無力化できました」


 マルスさんの隣に魔法陣が現れ、光が弾けるとアルフレッド様がいました。

 特に変わったところはないように思えます。


「成功したみたいでよかったです」

「全部終わったみたいだし、あたしは適当なところで寝ているわね」

「何を言っているの。あんたも炊き出しを手伝うの」

「え~」


 眷属の皆さんは事態が解決したのを見届けて解散して行きます。


「あの……」


 私には何が起こったのか全く分かりません。


「ああ、見えていないと分かりませんよね」


 マルスさんが魔法の光で文字と数字の羅列を表示させます。

 これは、この世界に住む人間なら誰もが見慣れた物――ステータスです。



==========


 名前:不死者を喰らいし者(アンデッドイーター)

 レベル:100

 体力:2000

 筋力:1500

 敏捷:900

 魔力:6000


 スキル:瘴気形成 霊体化 不死喰い 穢れ


==========



「こ、これは……?」


 名前やスキルからしてアルフレッド様の現在のステータスではないかと思われます。


「予想以上に弱くてビックリでしょう」

「そうではなくて!」


 なぜ、マルスさんがアルフレッド様のステータスを確認することができるのか?


「ミシュリナ様、簡単な話です」


 私が困惑していると顔色の悪いクラウディアが近寄って来て説明しようとしてくれます。


「大丈夫? クラウディア」

「はい。運んでいただいた時にさらに気分を悪くしただけです」

「そもそも、なぜ運ばれているんですか?」


 クラウディアにも大量の魔力を利用して身体能力を強化するという移動方法があります。

 一緒に走ってもどうにか追い付けるはずです。


「申し訳ございません。迷宮での光景があまりに衝撃的だったので……」

「何があったの?」

「彼が行ったのは調教(テイム)です」

調教(テイム)って魔物に言う事を聞かせて従魔にするアレ?」

「その認識でほぼ正しいです。迷宮主には、外から連れて来た魔物を迷宮の管理下に置く権限が与えられています。ただし、その権利を行使する為には通常の調教(テイム)と同様に主人の力を見せつけて従魔となる魔物が完全に降伏しなければなりません」


 マルスさんの説明によれば迷宮主と魔物が1対1で戦って、迷宮主の力を見せつけるのが1番オーソドックスな方法らしいです。

 迷宮主と魔物の一騎打ち。


「あれは酷かったです。迷宮に着いてから彼はまず鎖を解いて、自分たちが迷宮にいることを説明してアルフレッド様が目的を完遂する為には迷宮から脱出しなければならないことを説明しました。当然、アルフレッド様は脱出する為に霊体となって逃げようとしましたが、霊体になる度に魔力を叩き込まれて体を何度もボロボロにされる、というのを30分間繰り返していました。そうして、降伏を宣言したアルフレッド様が従魔として迷宮の管理下に置かれました」


 その光景を詳細に説明すればするほどクラウディアの顔色が悪くなって行く。

 事情を詳しく知らなければ青年が老人を何度も殴りつけているだけにしか見えないので、クラウディアにとっては耐え難い光景だった、ということでしょう。


 本当に私が同行しなくてよかった。


「これで、爺さんがどれだけ体を再生させようと俺に絶対服従だ。事態は解決したようなものですよね」


 そうですね……未だに項垂れたまま死んだような表情をしていなければ、気分は晴れやかになったのでしょうが、スッキリとしません。


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