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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第3章 報復計画
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第9話 VS魔物の軍勢―前―

 陽が昇ってから数十分も経っておらず、まだ朝陽がわずかに差し込むような時間に村を歩いていた。


 後ろには母と妹。それにルーティさんが歩いており、周囲を騎士の3人が守っていた。


 こんな時間に村を歩いているのには理由があった。


「マジか……」


 目的地に辿り着くと、そこには誰もいなかった。


「いったい、彼らは何を考えているのですか? 森から魔物が攻め込んでこようとしているのに門番を置いていないなんて」


 俺たちが向かっていたのは村の南側にある門。


 ここからなら森を一望することができる。


 冒険者に頼らなければならないほど危険な状況にもかかわらず、村の兵士は誰も詰めていなかった。普段から門の警備は日中に行うだけで、陽が沈めば門を閉じて誰も入ってこられないようにしている。つまり、普段通りに行動していた。

 今が緊急事態であるという認識が欠如している。


 慌てた騎士が近くにあった鐘を鳴らして村中に緊急事態であることを知らせていた。


「誰だ、鐘なんて鳴らしているのは!」


 一番近くにある家からおっさんが出てきた。

 既に起きて朝食の準備をしてゆっくりとしていたところにけたたましい音が鳴り響いてきたため急いで外に出てきたようだ。


「もちろん、緊急事態が起こったら鳴らすことになっている鐘は緊急事態が起こったから鳴らした」

「どういうことだ!?」

「あれを見たらどうだ?」


 その間にも村人が次々と集まってくる。

 というか、兵士だけじゃなくて村人にも緊急事態だという認識が欠如しているぞ。


「な、なんだあれは!?」


 村人たちの視線の先には、1キロ以上先にある森の方から土煙を上げながら近付いてくる何かが見えた。


「何だ、って……魔物が大発生して近くにある村に襲い掛かってきているんだ」

「どうして、そんなことになっている!?」


 その言葉でおおよそ理解した。


 村長たちは村人たちに何一つ説明していない。

 本来なら、兵士の鳴らした鐘で起きて魔物の接近を察知したいところを偵察に出していた使い魔からの連絡によって知ることになってしまったので、疲れていたところを起こして全員に来てもらった。

 こんな状況にもかかわらず、母と妹を連れてきたのは、俺の力を見せる為でもある。それに討ち漏らしがないとも限らない。俺のすぐ後ろの方が安全だった。


「な、なんなのよあれ……」

「怖いよ……」

「おい、早く逃げ出した方がいいんじゃないか?」

「逃げ出すって言ってもあの数だぞ」

「どうすりゃいいんだよ」


 村人たちはただ戸惑うだけだった。

 まあ、普通の人間が何の説明もなくこんな状況に追い込まれればまともな対応はできない。


 ここは、責任者から説明してもらうことにしよう。


「みんな落ち着け」


 村長が動揺する村人を落ち着かせようとしていたので、


「村長、どうして何日も前から魔物が押し寄せることが分かっていたのに皆には何の説明もしなかったんだ?」


 援護として1つの事実を皆に聞こえるように言うと、全員の視線が村長に集中して静かになる。


「いや、それは……皆に要らぬ動揺を与えぬ為だ。こうして冒険者も連れて来た。冒険者が魔物を倒せば、要らぬ心配を掛けるだけだろう」


 こうして魔物を見られてしまった以上、事前に説明しておいた時以上の動揺が広がっているじゃないか。


 冒険者、と言われて今度は全員の視線が俺に集まる。


「おい、連れて来たって言ってもマルスしか連れてきていないじゃないか」

「他に騎士が3人いるけど、大丈夫なのかよ」

「う、うるさい……!」


 何も知らせず、満足な対応もできていない村長に何人も詰め寄っていた。


 煩くなってきたので、そちらは無視することにした。


「さて、やりますか」


 肩を回しながら村の外へと出て行く。


「大丈夫なんですか?」


 隣に来たルーティさんが尋ねてきたので笑顔で答える。


「大丈夫ですよ。敵はどうやら統率された動きをしていますね」

「そうですね」


 騎士3人には見えていないようだったが、俺たちにはしっかりと見えていた。


 多種多様な魔物が混在した軍勢でありながらも一か所に固まって村の方へと進軍していた。中には足の速い馬型の魔物がいるにもかかわらず、全員が速度を合わせていた。


「こういう風に統率者がいる場合には、統率者から倒して指揮系統を瓦解させるのがセオリーですけど……」

「そんな面倒な真似はしませんよ。せっかく一か所に固まってくれているので、一網打尽にしましょう」


 収納リングから一本のナイフを取り出す。


「そんなナイフで戦うつもりですか?」

「このナイフで直接戦うわけじゃありませんよ。このナイフは、距離制限のある俺のスキルを発動させる為の媒体として使用するんです」


 スキル――迷宮操作は、レベルが上がったことにより外でも問題なく力を発揮することができるようになったが、遠く離れた場所に効果を及ぼすほどにはなっていなかった。


 そこで、ナイフを中心にスキルが使用されるように改造した。


 ナイフを全力で投げると、魔物の軍勢の間を縫うように進み、地面に突き刺さる。


「おい、あんなナイフで何やっているんだ!」


 訳の分からない村人が吠えてくるが、無視してスキルを発動させる。


『迷宮操作:落とし穴』


 ナイフを中心に半径50メートルの大穴が出現する。


 次の瞬間、大量にいたはずの魔物が次々と消えていく。いや、実際には落とし穴へとほとんどの魔物が落ちて行った。落ちた際に大型の魔物に踏み潰され、ゴブリンのような小さな魔物が死んでいく。


 間髪容れずに今度は目の前にスキルを使用する。ただし、土魔法を使用しているように見せるため、地面に手を付いて魔力を流す。


『迷宮操作:坂道』


 高さ10メートル、傾斜角45度の坂道が出現する。


「さらに!」


 造り出した坂道に魔力を流して天頂に巨大な鉄球を造り出す。


『迷宮操作:鉄球』


 坂道に造られた鉄球は、そのまま大穴のある方へと転がっていく。


 迷宮の罠の定番。一本道の坂道の先から転がってくる鉄球。

 魔力を大きく消耗してしまうものの、落とし穴に落として逃げ場をなくしたところで、その罠を再現して一網打尽にしていた。


「潰れろ」


 小型の魔物を踏み潰した大型の魔物を上から潰してしまう巨大な鉄球が大穴を塞ぎ、這い上がろうとしていた魔物を一気に潰す。


 迷宮操作――迷宮内の構造を変化させることのできるスキル。外で使用することによって罠や地形を再現することができた。


 急激に静かになる村。

 誰もが唖然としていた。


 土魔法を使用すれば似たようなことはできるが、規模が明らかに違う。

 しかも、それを行ったのは数カ月前までただの村人で、魔法も大したものが使えなかったはずの少年なだけに驚きは一入だ。


「これで、地上部隊の大凡は壊滅と考えていいだろう。残りは……」


 視線を空へと向けると前半分が鷲、後半分が馬の体をした魔物――ヒッポグリフの3体が空を飛んでおり、他にも巨大な鳥型の魔物がいた。

 空を飛ぶ魔物も地上にいたリーダーに統率されており、いきなりリーダーからの指示がなくなってしまったので困惑し、その場に佇んでいた。


「じゃ、ちょっと空中戦力も倒してきます」


 呆然としているヒッポグリフは奇襲するにはちょうどいい。


『迷宮魔法:跳躍(ジャンプ)


 一瞬で空中にいるヒッポグリフの上を取った。


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