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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第16章 競売怪盗
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第43話 皇帝VS弓士

リオ視点です。

 女が次々と矢を放つ。


 特殊な弓は手を添えるだけで光の矢が新たに生み出され、矢の残りを気にする事なく放ち続ける。

 矢を弾くと後ろで起こる爆発を無視しながら女に向かって走る。


 6本目の矢を弾いた瞬間、


「……っ!」


 後ろに飛ばされてから引き起こされていた爆発が手元で起こる。

 爆風に吹き飛ばされながら屋上に剣を突き刺して耐える。


「矢の種類を変える事ができるのか」


 俺も魔剣の色を変える。

 黒から白へと変わった魔剣が俺の体を癒し、火傷を負ったように爛れていた手の皮膚が元通りになる。


 癒しの力を持つ白色の魔剣。


「……って、いないし!?」


 さっきまでいた屋根の上に女の姿がなかった。


 けど、帝都で俺から逃げられる訳がない。


 姿を消してから5秒。

 最初に存在を確認した時は存在を隠蔽させる事ができていたが、今は戦闘中なせいなのか隠蔽させる事ができていない。


 迷宮操作【地図(マップ)】で相手の位置を確認する。

 地図に表示される相手の表示は、俺たちのいた倉庫の中にあった。


「逃げられると思うなよ」

「問題ない。私は『自力で脱出する』と言った」


 倉庫の窓を突き破って紫色の矢が出て来る。

 窓から出て来た矢は、正面にあった別の倉庫の手前で進行方向を変えると俺へと狙いを変えて来た。


「さっきまでの矢とは違うのか……?」


 最初に飛んで来たのは白い矢だった。

 最後に爆発した矢の色まで確認していなかったが、俺の魔剣と同じように矢の色によって特性を変える事ができる。


 どんな効果を持っているのか色で判別する事は可能だが、最初は分からないまま受け止めるしかない。


 魔剣の色を白銀へと変える。

 振り下ろした魔剣から放たれた冷気が紫色の矢を凍らせる。


「そう来ると思った」


 倉庫内から全方位に向けて何本もの矢が撃たれる。

 矢ではあり得ない……生きたような動きをしながら全方位から紫色の矢が襲い掛かって来る。


「なるほど。紫色の矢は、自分の思い通りに放った矢を動かせるのか」


 事前に決められた動きをするだけなのか。

 放った後も自分の意思で操作する事ができるのか。


 操作能力によって矢への対処法は変わって来る。


「けど、お前への対処は同じだ」


 敵は足元の倉庫内にいる。


 魔剣の色を黒へ変えると足元に叩き付ける。

 床が崩壊し、衝撃が倉庫全体へ伝わると倉庫が倒壊し、俺の体が倉庫の中へと吸い込まれて行く。


 頭上では標的を見失った何本もの矢が衝突していた。


「事前に決められた動きをするのか」


 倉庫の倒壊に女も巻き込まれていた。

 とても矢の操作をしていられるような状況ではない。

 そんな状況にも関わらず、紫色の矢は正確に俺のいた場所へと到達していた。

 事前に相手のいる場所を指定して、無秩序な軌道で放たれた矢を目的の場所へと届ける矢らしい。


「どこへ行った?」


 倉庫内に女の姿がない。

 急いで【地図】で確認する。

 倉庫街のどこに隠れたのか分からない女を探す為に表示する地図の範囲を広めに設定していた。

 倉庫内のどこにいるのか探すには不向きな広さだ。


 正確な位置を表示する為に表示範囲を縮小させる。


「それが【地図】の弱点」


 倉庫の外。

 倒壊と同時に外へ避難していた女が矢を構えていた。


 色は――真紅。

 真紅の矢には炎が渦巻いており、矢から放たれると勢いを更に増して倉庫の壁に突き刺さり倉庫を瞬く間に炎で包み込んでしまう。


「元々は階層の状況を調べる為のスキル。絶えず変化し続ける状況を把握するには向かない」


 距離を置いて行う追跡などには有効だ。

 だが、広範囲を表示する【地図】では追っている対象が同じ建物内にいた場合は正確な位置を割り出すには向かない。そして、今いる建物のすぐ傍にいた場合には同じ建物内にいると誤認してしまう可能性がある。


 相手も同じスキルを持っているから弱点にも詳しい。


「さて……」


 女が踵を返す。

 このまま走って逃げるつもりだろう。


「もう少し待って行けよ」

「……少し出てくるのが早い」


 倉庫を包み込んでいた炎が俺の魔剣に吸い込まれて行く。


 色は、黒よりも暗い闇。

 その刀身には何も映し出していなかった。


「この魔剣だけは使いたくなかった」


 魔力効率が非常に悪い。

 このまま使い続けていると5分と経たない内に魔力切れで気絶してしまう。


 その代わりに強力な能力を持っている。

 対象が瓦礫であれ炎であれ、ありとあらゆる物を刃に吸い込み、喰らい尽くしてしまう魔剣。

 ソニアの塵は塵箱へ(ダストシュート)と似たような能力だが、あれよりも吸い込める範囲は広い。


 闇色の魔剣を持っているだけで倉庫を包み込んでいた炎と邪魔な瓦礫が全て消える。

 俺が身の安全を確保している間に女の持つ弓に特大の力を籠めた矢が番えられていた。


虹色の矢(レインボーアロー)(イエロー)


 一矢だけ放たれたはずの矢から同時に何本もの矢が円状に広がって放たれる。


 黄色の矢は、強大な力を持った矢を一度に何本も同時に放つ事ができるらしい。


 頭上、左右と同時に襲い掛かって来る矢。

 これまでのどの矢よりも速く俺へ到達したため後ろにしか逃走場所はない。


 後ろへ跳んで回避すればいい。

 だからこそ裏を掛ける。


跳躍(ジャンプ)

「……!」


 倒壊した倉庫を吸い込んだ事で俺の視界を阻んでいた物が消えた。

 視界内にいる女の背後まで空間を跳躍すると初めて襲い掛かった時と同じように背中から斬り掛かる。


 女も矢を射ったばかりの体勢から体を反転させて弓を掲げる。


 ――ガキン!


 魔剣と弓が衝突した瞬間、剣を打ち付け合ったような音が響き渡る。


「無茶苦茶な弓だな」


 一撃で終わらせる為に魔剣の色は黒――一撃必殺の力を発揮できる色へと変えていた。

 その強力な一撃で女は弓で受け止めていた。


「ううん、ここまでみたい」


 俺の力に耐え切れず女が後ろへ吹き飛ばされ、魔剣が倉庫の屋上を叩く。


 吹き飛ばされながら弓を構える女。

 その弓には既に緑色の矢が番われていた。


虹色の矢(レインボーアロー)(グリーン)


 ――ヒュン。


 僅かな風切音だけが聞こえた時には左肩に緑色の矢が突き刺さっていた。


 赤い血が流れて来る。


 矢の軌道が認識できなかった。

 緑色の矢は、神速の矢といったところだろう。


 突き刺さっていた矢を抜き取って捨て去ると屋上に落ちる前に消えてなくなる。


 女が無事な倉庫の屋上に立つ。

 間に倒壊した倉庫を挟んでお互いに武器を構える。


「随分と多種多様な矢を使えるんだな」

「たしかに何十種類もの矢を使う事ができる。けど、そんなものはこの状況では意味を成さない」


 どの矢でも俺に致命的なダメージを与える事ができない。


「逆に私はあなたの事を過小評価していた。倒すのは無理でも逃走に必要な隙を作り出すぐらいなら簡単にできると思っていた」

「悪いが、俺は負けるにはいかないんだ」

「なぜ?」

「お前が俺の民を傷付けたからだ」


 女が倉庫街を見渡す。

 事前にソニアに頼んで避難誘導を始めて貰っていたから人的被害はない。


「お前は、スラムにいた連中を殺した」

「あの世界に役立たない連中ならいくらいなくなったとしても問題ない」

「そういう問題じゃないんだよ」


 たしかにスラムにいる連中は何の生産性もなく生きている。

 だけど、そんな連中でも帝国に生きる(・・・・・・)人間である事には変わりない。


「俺には皇帝として帝国民を守る義務がある。少なくとも仇を取らずに逃げ出すような恥知らずな皇帝に俺はなりたくない」


 だから事情に関係なく女は必ず捕らえる。


「そう……」


 女が憎悪に満ちた目を向けて来る。


「今さら、そんな事を言ったところで……」


 女の持つ弓に赤よりも暗い銅い矢が生み出される。

 とてつもなく危険な矢が生み出された。


「やっぱり、俺が来て正解だったみたいだな」


 俺が戦うにあたって眷属たちから反対された。


 女への対処を帝国兵士や騎士に任せず、眷属にも任せなかった。

 その理由は単純――女の姿を確認した瞬間、迷宮主(ダンジョンマスター)である俺でなければ対処できなさそうな勘がしたから。


 その予感は、(あか)い矢を見た瞬間に確信に変わった。


 一般兵士なら数十人……対処しようとした全員が返り討ちに遭う。

 眷属でも誰かが犠牲になった可能性があった。


 だが、俺なら無傷で対処できる。


 (あか)い矢が引かれた瞬間、東側から光のような何かが高速で飛来して来た。

 その光のような物は弓を構えていた女を飲み込むと一撃で灼き尽くしてしまった。


「攻撃したけど、問題なかったよな」


 攻撃のあった東側を見てみると傷を負っている様子などない消息不明だったマルスが別の倉庫の屋上の上に立っていた。


主人公じゃないので主人公の介入によって決着はつきませんでした。

彼らの決着はしばらくありません。

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俺なら対処出来るとかじゃなくて、なんで自分がやらなくていいことをするのかのが問題
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