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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第16章 競売怪盗
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第25話 狙っていた宝石

「やった!」


 予想以上の利益を出せた事にアイラが喜んでいる。


 俺も信じられない。

 あの掛け軸にそこまでの価値があったなんて……


「何か理由があるのか?」


 それだけの魔力が得られたという事は、芸術的価値以外に何らかの力が備わっていたという事になる。


『この掛け軸、というよりも描く為に使った道具、それから絵のモデルの方に原因があるんだよ』


 迷宮核によれば描かれているのはミズガルムドラゴン。

 そして、ミズガルムドラゴンを書く為に使用したのはミズガルムドラゴンの髭から作った筆らしい。

 今では姿を見なくなったミズガルムドラゴンの髭から作った筆で描いた絵に彼の竜の想いが宿った結果、【魔力変換】によって大量の魔力が得られたらしい。


「それって筆が手に入った方が効率よく魔力が得られないか?」


 大量の魔力が得られたのはミズガルムドラゴンの髭を素材にした筆を使っていたから。


『問題は、筆の方が現存しているかどうかなんだよね』

「そうだよな……」


 掛け軸の方が100年近くも無事だったのは状態保存の魔法が掛けられていたから。

 司会がどのような筆で描かれていたのか言っていなかったことから筆については有名ではない事が予想される。


「うん、あたしも初めて聞いた」


 色々な情報に詳しいソニアも知らなかった。

 そうなると帝国内でも知っている人は少ない。


「隣の個室にいる奴は知っているんだろうけど……」


 価値を正確に知っていたからアイラと競っていた。

 結局、手が出せないほど高額になってしまったので競り合っていたアイラに譲る形になってしまった。


「どうよ、あたしの勘は」


 ドヤ顔をして立っているアイラ。

 たしかにアイラが気付かなければスルーしていた品だったのだが、こんな風に得意気な顔をされるとムカつく。


「……護衛としては失格だけどな」

「ちょ!?」


 ボソッと呟くとアイラが反応していた。

 俺の傍から離れて周囲を警戒する事もなくオークションに熱中する。落札後も自分から金を渡して掛け軸を受け取りに行く始末。落札者が品物を受け取りに行く時に護衛も一緒に向かう事はあるが、護衛だけで行くような真似はしない。


 何か言いたそうにしていたが、休憩時間が終わったみたいだったのでオークションへと戻る。


「只今、戻りました」


 次の休憩時間になると出掛けていたメリッサとシルビア、それからソニアが部屋に戻って来る。


「ご苦労様」


 シルビアが部屋のテーブルの上に落札した品物を広げる。

 パーティー会場で彼女が欲しがっていた茶器と皿だ。都合よく2つの品が連続で出されて来たので金貨6枚と3枚であっさりと落札させてもらった。


 パーティー会場に展示はしていたものの貴族からの評価はそれほど得られなかったようで落札する為に札が掲げられることはあまりなかったので俺たちで落札させてもらった。


 シルビアの顔を確認してみる。

 表情は平静を装っているつもりなのだろうが、歩いている姿が軽やかだったのでご機嫌なのは簡単に分かった。

 彼女としては、こういう日常に役立つ道具が手に入る方が嬉しいみたいだ。


「メリッサも悪いな」

「いえ、私が一緒にいた方がいいですから」


 いくら落札した品物を受け取る時に落札額を支払えるとはいえ、誰が支払うかはオークションによって公平によって決められている。


 商品の受け渡しを行っている受付なら誰が落札したのか正確に把握しているが、さすがに護衛として付いて来ている人物の顔まで把握しているはずがない。

 商品の受け渡しが行われる際には厳重な身分確認が行われる。先ほどアイラが掛け軸を受け取りに行った時は、身分証を見せただけでは信じてもらえず四苦八苦していたところに偶然通り掛かったリオが手を貸してくれたから身分を証明することができたから受け取る事ができた。


 そこで貴族夫人に扮したメリッサに受け取りに行ってもらった。

 身分の証明についてはリオの側室であるソニアが付いていてくれたので新皇帝の招待客だと一瞬で分かったみたいだ。彼らも接待のプロなので皇帝の側室の顔ぐらいしっかりと把握していた。たとえ、それが幼い女の子だったとしても。


 そういうわけで受付にメリッサの顔は覚えて貰えた。

 今後は、彼女に夫人として使用人の誰かと一緒に受け取りに行ってもらえば受け取りに関しては問題ないだろう。


「とはいえ、オークション会場の掃除も順調じゃないのか?」

「今確認してみたらピナの方で会場にいた人の内、半数以上の人には接触できたらしいよ」


 念話で連絡を取ったソニアが教えてくれる。

 眷属であるメリッサとしては俺が正体不明な相手の影響下をウロウロするのを許容するわけにはいかない。そのため自分で商品を受け取りに行っていた。


 だが、それも今日中には終わりそうなので明日以降はもっと伸び伸びと参加する事ができるかもしれない。


「では、お昼にしましょう」


 シルビアが収納リングから取り出したお弁当に舌鼓を打つ。

 現在、オークションは休憩中で招待された貴族も食事をしながら他の貴族へ挨拶回りをしていた。

 リオも忙しくしているみたいで部屋に戻って来る様子がない。


「結局、午前中にマークしていた商品が出て来る事はなかったな」

「仕方ありません。私たちが見つけた商品に目を付けている方々はパーティー会場に他にもいらっしゃいましたから少しでも落札価額を釣り上げたい主催者側としてはメインに持ってきたいと考えているはずです」


 パーティー会場に展示されていた迷宮から発見された美術品や宝石。

 それらは控室の方で保管されたままらしく出される様子がない。


「始まるみたい」


 オークション会場を眺めていたイリスが教えてくれる。

 休憩時間が終わるとオークションが再開される。


「お、動きだしたみたいだな」


 午後の最初に出て来た商品は絵画だった。

 競りが開始されると下級貴族が掛け金を上げて行く。


 これは無視して意識を地図(マップ)へ向ける。

 あらかじめマーカーを施していた商品がオークション会場のステージへと運ばれている。


「私が見つけていた宝石だ」


 台車に乗せられて運ばれて来たのは朱色に輝く宝石の付いた指輪。


『こちらは数年前に帝都の迷宮で冒険者が発掘したヒヒイロカネの原石です』


 ヒヒイロカネは魔力の伝導率が他の金属よりも強く、他の金属と混ぜ合わせるだけでも強力な武器や防具を造ることができる。

 ただし、非常に貴重な代物で指先程度の大きさのヒヒイロカネが手に入るだけでも幸運である。迷宮の力で生み出そうとしても魔力効率を考えるとあまり勧められない。

 あのような指輪に使用できるほどの大きさで手に入る方がおかしい。


『ある有力貴族が大金を叩いて冒険者から買い取り、指輪へと加工されていますので最初はもっと大きな原石だったとの事です。加工はされていますが、これだけの状態で見つかる事は稀です。その辺を踏まえて金貨100枚から始めたいと思います』

「随分と強気に出て来たな」


 午前中の内における最高価額はアイラが競り落とした金貨109枚だ。

 そこから始めるとなると躊躇う者が多く出てくるはず。


「金貨110枚!」

「120枚」

「金貨130」


 しかし、次々と手が上がって値段も上がって行く。

 そこに躊躇うような様子はない。


「最初の壺が目玉じゃなかったのか?」

「骨董品として価値がある目玉商品なのは間違いないんだけど、こっちは身に着ける物で持っているだけで自分の経済力を示す事ができるからね」


 自らの経済力を自慢したい貴族が競ってでも手に入れたい代物らしい。


 朱い宝石は持っているだけで目立つ。


 だが、俺たちは見栄とは別の観点から欲しい。


「迷宮産だったから【鑑定】を使ったけど、【魔力変換】すれば100万は手に入るはず」


 金貨1000枚までなら利益を出す事ができる。


「鑑定したなら問題ない。利益を出せる範囲で買い取れ」

「了解」


 今も手に入れようと四苦八苦している下級貴族たち。

 落札価額はいつの間にか金貨300枚に届いたところで動きが鈍くなっている。


「金貨500枚」


 一気に釣り上げるイリス。


「510枚」

「512枚」


 上級貴族がイリスの提示した金額に続く。

 入札が終わると個室のある方を見上げて睨み付けて来る。彼らも手に入れたかったのだが、一気に落札価額を釣り上げたこちらが忌々しいらしい。普通に考えて金貨500枚など貴族でも簡単に用意できる金額ではない。


「金貨650枚」

「……」


 イリスが落札価額を告げるも誰も続く様子がない。


『「ヒヒイロカネの指輪」は金貨650枚で落札されました』


 司会者が認めた事で競りが終わる。


「よしっ、350枚以上の利益」


 利益の確定したイリスは本当に嬉しそうにしていた。


 魔力を大量に含んだ宝石は希少な品となる。

 昨日の内から狙っていた品だっただけに嬉しいのだろう。


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