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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第3章 報復計画
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第4話 リーエル草―後―

 地下12階にある転移結晶の前に転移すると、必死になって目的の薬草――リーエル草を探している冒険者の姿が目に映る。


 最下層で覗いていた時は、あちこちに視点を持って、そこから見える光景が頭の中に流れ込んできていた。その時と比べて実際に自分の目で見ると、全く別の感想が出てくる。


 ――醜い。

 冒険者が血眼になって地面を見つめている姿は必死すぎて、少し怖いぐらいだった。


 まあ、そんな冒険者を相手にこれから商売をしようというのだから俺も十分に醜いはずである。


「お、兄ちゃんも来たのか」


 俺が転移してきたことに気付いた冒険者が声をかけてきた。今日もギルドにいた冒険者だ。


「はい。しかし、みなさん必死に探していますね」

「まぁな。ギルドが通常の3倍で買い取るなんて言いやがったから全員血眼になって探していやがる。もう、とっくに必要な量は採取し終えたんじゃないのか」


 その辺りは計算していなかったな。

 単純にあちこちに生やしたためリーエル草が全体でどれだけあるのか分からない。


 まあ、その辺りはギルドが考えることで俺が考えることではない。


「兄ちゃんもこんな時間に来てどうしたんだ? もう、近くにあるリーエル草は採取されちまったぞ」

「緊急依頼についてはするつもりはありませんね。ちょっと商売でも始めようかと思います」

「商売?」


 何をするつもりなのか分からない冒険者を無視して、少し離れた場所に移動すると、収納リングからシートを取り出して、その上にポーションの入った瓶を置いていく。


 その数――50本。


 突然物が現れた光景に何人かの冒険者が集まり始めた。


「さて、みなさんは突然の依頼に大した物も準備せずに出てきてしまったことでしょう。なので、俺の方からこれを売りたいと思います」


 これ――ポーションを何人もの冒険者たちが見ていた。

 なにせ彼らは競い合うようにしてギルドを出て、装備品など必要最低限の準備だけをして迷宮に来ていた。


 そのため、ポーションのような体力や魔力を回復させる物が不足していた。


「けど、売るっていうことは金を取るんだろ」

「俺もさすがに銀貨を1枚出して買ったものを無料で売るような真似はしませんよ」


 その言葉に男たちが呆れたような表情をしていた。


 ポーションが欲しいのは本当だが、そのためにぼったくられるような真似はしない、ということだろう。


 だが、安心してほしい。ぼったくったりしない。


「そうですね。銀貨1枚で購入したポーションなので、銀貨1枚と大銅貨1枚で売りましょう」


 その言葉を聞いた冒険者たちがポカンとしていた。


 購入した費用の1割増しで販売。


 アリスターの街へ帰れば銀貨1枚で買える物だが、そこに大銅貨を1枚追加するだけでこの場で購入することができる。


「おい、それだとお前の利益が大銅貨1枚しかないじゃないか」

「たしかにそうですね。ですが、1本なら大銅貨1枚でも50本を売れば大銅貨50枚の利益になりますよ」

「その通りなんだが……」

「俺には、収納リングがあるので、普通なら50本も持ち歩けば重たくて仕方ないところをほとんど手ぶらで来ているような状態ですからね。1本分の利益も50本分の利益も大差ないんですよ。なんせ、俺が負担した費用なんて迷宮まで移動する為に使った体力なんですから」


 俺の言葉を聞いて冒険者たちも利益が少ない理由に納得してくれたらしい。

 やはり、収納リングを得ていて正解だった。


「さて、この後も探索を続けるならみなさんポーションが必要なはずですが、必要な方はいますか?」


 俺の問いかけに冒険者が次々と銀貨と大銅貨を1枚ずつ払ってポーションを持って行く。


 数分もしない内に全てのポーションが俺の手元からなくなっていた。代わりに銀貨と大銅貨が50枚ずつ増えていた。


「ありがとうございます」


 上機嫌になってシーツを回収し、銀貨と大銅貨を布袋に詰めると転移結晶の方へと帰っていく。


「では、商売の方も終わったので、俺は帰ることにします」


 転移結晶に触れながら『転移』を使用して、最下層へと向かう。俺の姿を見ていた冒険者たちには地下1階に向かったように見えただろう。


 だが、俺は目の前に現れた迷宮核へ自慢するように布袋を見せていた。


「見てくれよ。あんな一瞬で銀貨と大銅貨を50枚ずつ稼いだよ」

『まったく、よくやるよ。それに元手なんて掛かっていないのに』


 ポーションそのものは街の道具屋で購入した物だが、それを購入する為のお金については迷宮が得ていた物を道具箱(トレジャーボックス)から取り出して支払った。


「いいんだよ。金は使ってこそ価値がある」


 道具箱の中には、俺がしまった物だけでなく、迷宮が得た金銀財宝がそのまま入っている。


 迷宮で息絶えた冒険者は数多く、死体がそのまま残されていたとしても構造変化が起きた際には迷宮に吞み込まれて消えてしまう。装備品や魔法道具のように魔力を多く含んでいる物は、分解されて迷宮の消費する魔力となる。だが、お金については吸収せずにそのまま残されており、道具箱を使用することによって自由に取り出すことができた。

 そうした方法で何百年も貯め込んだ財宝は、金貨だけでも数千枚になっていた。


『今まで、こんな方法で利益を出す迷宮主なんていなかったよ』


 どれだけ冒険者を招き、消費する魔力を節約することができるか?


 そればかり考えていたらしいが、それだけでは不足している。


「せっかくこんな方法で金が手に入るんだ。こうして得られた金を宝箱に入れて上層に置いておくだけでも多くの冒険者が釣れるぞ」

『ま、運営方法については君に一任するよ。けど、そんな小銭を稼いで何がしたいの?』


 道具箱の中には銀貨が微々たる金額に思えるだけのお金が詰め込まれている。


「いや、小銭稼ぎに関してはついでだから。俺が本当にやりたかったのは、彼らにポーションを渡すこと」

『……? それをして何になるの?』

「まあ、見ていろ」


 俺と同じように迷宮核も地下12階の様子を見始める。


 そこでは、ポーションを買った冒険者たちが不味いのを我慢して飲み干していた。


「よし、これで探索が続行できるぞ」

「2本買ったから今日は徹夜もできるし」


 冒険者たちがその場から駆け出し、草原フィールドの奥の方へと向かって行った。


 俺が売り渡した冒険者たちは、魔力が尽きそうになっており、転移結晶を使って迷宮から帰ろうとしていた冒険者たちだ。急いで出てきたためポーションのような回復薬を持ってきていなかった。


 そんな緊急依頼の報酬に目が眩んだ彼らが探索を続行できるようになればどうなるのか?


 俺が予想した通り、探索を続行してくれた。


『なるほど。そういうことね』


 迷宮核も俺が何をしたのか理解したらしい。


「俺たちにとって最大の利益は、金なんかじゃなくて冒険者から得られる魔力だ。彼らが長時間滞在してくれればくれるほど俺たちが得られる利益は大きくなる。後は黙っていても俺たちは利益を得ることができる」




 ☆ ☆ ☆




 冒険者ギルドのギルドマスターを任されている私は朝から困っていた。


「これは……」


 ギルドには朝早くから帰ってきた冒険者が持ち込んだ素材――リーエル草の買取に忙しくしていた。


 いや、緊急依頼など出したのだから忙しくなることは分かっていた。


 問題は、持ち込まれた素材の量だった。

 依頼主である病の流行った村から来た青年からは、街で手に入らなかった約50人分のリーエル草を用意して欲しいと言われた。緊急で必要ということで依頼主からは多めに報酬を貰い、負担してもらうことになった。


 当初の予定では、それでも必要数は集まらないと考えていた。

 誰かが運よく持っていれば多めの報酬を払う程度の考えでしかなかった。


 ところが、迷宮で得られた、と一人の冒険者が言ったところで歯車が狂いだした。

 依頼主が必要で、報酬を払うと言ったのは50人分のリーエル草。残りの50人分のリーエル草については、ギルドが負担して通常の3倍の金額で買い取ることになった。

 依頼主からは仲介手数料などを多めに貰っているが、それでも明らかな赤字になることは間違いなかった。


「どうして、次から次に問題が舞い込むんだ……」


 俺の目の前には昨日の朝の内にある事を調査してもらう為に派遣した冒険者からの報告書があった。


 ――デイトン村近くの森で魔物が大発生。

緊急依頼のリザルト

・銀貨と大銅貨50枚ずつ

・迷宮の魔力

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― 新着の感想 ―
[一言] ギルド赤字かい! 流石に当てがはずれたかー でも冒険者は儲かる、病人は助かる、主人公も儲かる! 悪くないよね。
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