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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第16章 競売怪盗
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第5話 リストと怪盗の噂

「今日は、忙しい仲間に代わって私とネリア様からお礼を言いたいというのもあったのですが、貴方たちにとって必要な物を持ってきました」

「必要な物?」


 収納リングから紙の束を取り出した。

 俺の前に差し出して来たので受け取って内容を確認させてもらう。


 紙の束はオークションに出品される品物のリストだった。

 リストには出品される物の名前と競売に掛けられる時の最低金額が描かれていた。


「手に入れる事ができたんですか?」

「私はこれでも次期皇妃です。頼めばリストぐらいは融通する事ができます。申し訳ありませんが、私にできるのはここまでです」

「いえ、十分です」


 出品される品物の名前が分かるだけでも狙いを付ける事ができる。

 ひたすら目を通して行く。


 目を通し終えればカトレアさんへ返却する。


「もう、よろしいのですか?」

「はい。全て記録しました」


 俺の視界を通して迷宮核に記憶させた。

 必要な時に情報を呼び出す事ができる。


「お互いに便利な能力を持っていると助かりますね」

「本当ですよ」


 出品される品物は数百種類に及ぶ。

 人の記憶力だけで覚えようとするのは無理がある。


「色々な物が出品されるんですね」


 今もシルビアが出品される品物を確認しているが、彼女の前にリストはない。視界の隅に表示されているリストを見ている。


「オークションは3日間開催されます」


 1日目は、骨董品や美術品が競売に掛けられる。

 2日目は、聖剣や魔槍のような特殊な力を秘めた装備品が対象となる。

 3日目は、魔法道具がメインとなっていた。


 元々は粛清された貴族が所有していた資産という事で数多くの品物が出されていた。

 オークションに招待された客は多くが貴族で箔を付ける為に優秀な武具を求め、美術品も高値で取引される。魔法道具も役立つ物が多く、商人などに好まれる傾向にある。


『これは……』

『どうした?』

『「月の涙」まで出品されているなんて驚きだね』


 『月の涙』……?


『大昔に月から落ちて来たと言われている石の事だよ。かなりの魔力を内包していて製錬技術が伝わっていた頃なら錬金術の優秀な素材になったんだけど、今では精錬技術が喪われてしまったから美術品としての価値しかないけどね』


 それでも月の石だと言われて価値を見出すのが貴族だ。

 俺たちなら精錬技術を持っていなくても魔力をそのまま再利用する事ができる。


『他にも「ブルースフィア」、名前を聞いた事のある魔剣まであるよ。どうして、こんな物が世に出る事もなく埋もれていたのか不思議なぐらいだよ』


 妙にテンションの高くなってきた迷宮核。

 品物の確認は迷宮核に任せておけば大丈夫だろう。


 それよりも気になるのは隣に座ってリストを真剣な目付きで確認しているメリッサだ。


「何か気になるような品物でもあったのか?」

「い、いえ……!」


 メリッサにしては珍しく歯切れが悪く、驚いていた。


「欲しい物があったのですが、ちょっと予想以上に高かったので」

「なんだったらパーティの資金から出そうか?」


 パーティで活動して得た資金は個人に分配し、もしもの場合に備えてパーティの為に貯蓄している。

 今回のオークションに使用する金額は、ここから支出する予定でいた。


 他にも個人で欲しい物があれば自分の貯金から出すように言っている。メリッサの欲しい品物の最低価額が貯金額以上だったのだろう。


 だが、普段から計画的に貯金しているメリッサはかなりの大金を溜め込んでいるはずだ。


「いえ、私の所持金なら少々競りが激しくなっても問題ないと思うのですが……」


 メリッサの目が仲間へ向けられる。


「え、本当に?」

「はい。それよりも念話で会話して下さい」

「ごめん……」


 どうやら念話で会話をしていたらしくアイラの驚きをメリッサが咎めていた。


「そういう事なら、わたしもお金を出す」

「皆で使う物なんだからメリッサの負担は少しでも軽くしないと」

「あたしは、お金に余裕が……」


 どうやらメリッサが欲しい物は4人で使う物らしく、全員でお金を出し合って買い取る相談をしていたらしい。


 シルビアやイリスもお金に問題はない。

 シルビアは料理にお金を使う事はあってもパーティの豊かな生活の為にする出費なので自分の懐から出した場合でも全員で話し合っていくらかパーティから出すようにしているので、あまり自分のお金を使っていない。


 イリスもあまり自分の趣味にお金を使っている姿を見ていない。


 逆にアイラは少し金欠気味だった。

 それと言うのもお金に余裕ができると食べ歩きをしたり、甘い物を買い込んだりしてしまうからだ。気前がいい時は、妹たちにもプレゼントをしているので、嬉しそうな妹たちの顔を見ると強く言う事もできない。


「ありがとうございました。色々と予定を立てる事ができました」

「こちらも面倒な依頼をしているので、何か役に立てたなら幸いです」


 怪盗に関する依頼も引き受けていた。


「そう言えば、帝都を騒がせている怪盗の噂はご存知ですか?」


 依頼は引き受けたが、詳しい事は知らない。

 帝都に来るまで怪盗の噂すら聞いた事がなかったし、情報収集をするなら明日からのつもりでいた。


「何者なんですか?」

「平民から嫌われている貴族や悪事を働いて稼いで来た大商人だけを相手にする怪盗で、必ず予告状を出す事で知られています。そして、数日後に控えたオークションを狙っている予告状が出されています」


 その辺りの説明は既に受けている。


「これまでは予告状でどの財宝を盗むのか事前に知らせていたんですけど、今回の盗みでは物を指定していないんです」

「随分と詳しいんですね」

「リストを貰う時に色々と聞いて来ました。こちらが予告状を模写した物です」


 収納リングから取り出された予告状。


 オークションの出品リストと違って薄い紙に一言だけ描かれていた。


『貴族が多く集まる日、貯め込んだ宝の山を奪いに行きます』


 これだけでは何を狙っているのか分からない。


「予告状は、帝城門前にある掲示板とオークションに出品される品物を運んでいた馬車の1台に貼り付けられていたそうです。馬車に貼られていた事と予告状の内容からオークションに出される品物が狙われていると担当者は判断したみたいです」


 そのため帝城の方はピリピリした空気に包まれていた。


 怪盗は狙っている対象によって平民からの支持は強く、俺たちと関係がないのなら平民として応援したいぐらいだ。

 しかし、狙っている物が俺たちにとって必要な物だった場合には困った事態になる。


「まったく……困った奴ですね」

「ええ。たしかに領民に重税を課していた悪辣な貴族からも没収した資産が含まれますが、それらを有効に利用して平民に還元する為にもオークションは必要な措置です」


 戦争によって少なくなってしまった国庫。

 それを少しでも補填する為にもオークションは必要だった。


 だが、そんな事情は平民にまで伝わっていない。伝わるわけにはいかない。


 裏の事情を知らない人々は、自分の知り得た情報だけを信じて没収した資産によって私腹を肥やそうとする新皇帝を懲らしめようとする怪盗を応援する。


 もちろんリオにそんなつもりがない事は俺たちが知っている。


「みなさんは動かないんですか?」


 カトレアさんとリーシアさんはともかく他の眷属は直接動く事ができるはずだ。

 眷属の力は一流の冒険者の遥か先を行く。

 彼女たちが動くのが一番手っ取り早い気がする。


「残念ですが、今回はリオ様の眷属全員が動けません。どんな事情があっても皇帝の側室になる者が冒険者の仕事をするわけにはいきません」

「それは、そうですね」


 だからこそ同じ迷宮関係者である俺たちに白羽の矢が立った。


「こちらとしてもリオ様のお披露目も兼ねているので失敗したくありません。どうぞよろしくお願いします」


 同じ迷宮主である事だし、これぐらいの力を貸すぐらいなら問題ない。


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