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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第3章 報復計画
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第3話 リーエル草―中―

『おや、今日はもう来ないかと思っていたよ』


 いつものように迷宮の最下層へ転移すると迷宮核が驚いていた。


「あれ、俺の様子を覗いていなかったのか?」


 新しく得た『迷宮同調』の力を使って迷宮核はちょくちょく俺の様子を覗いているはずである。というか、今日も打ち上げが始まった最初の頃までは覗いているのを俺の方でも確認している。


『途中までは見ていたよ。隣に好意的なお姉ちゃんもいたから楽しかったね。けど、途中で隣の男とデキていることに気付いたら、何だか白けちゃった』


 なんとも人間らしいセリフを言う迷宮核だ。

 まあ、お姉さんの隣に座った剣士のパーティメンバーとの距離が近くなったことには俺も気付いていたが、やっぱりそういうことだったのか……。


 いや、そうじゃなくて!


「悪いが、今すぐに構造変化を起こすぞ」

『構造変化? 満月の日はまだまだ先だよ』

「別に迷宮の全部に起こすつもりはない。地下12階――それも、ごく一部にだけだ」

『何を考えているの?』


 面倒だったが、迷宮核の協力も必要だったので何があったのか簡単に説明する。


『え、迷宮にリーエル草なんてないよ!?』


 迷宮核が言うように迷宮にリーエル草はない。

 ないならば、用意すればいい。


「これから地下12階のどこかにリーエル草が生えている場所を用意すればいい。その為に構造変化を起こす必要がある」

『構造変化を起こす理由は分かったけど、必要なことだったの?』


 わざわざ、そんなことをして一体俺にどんな得があるのか?

 いや、構造変化を起こす必要がある以上、魔力を大きく消費してデメリットが発生している。


 しかし、これから得られるメリットを考えれば、それぐらいのデメリットには目を瞑る。


「これから満月の日の翌日みたいに多くの冒険者が訪れる。それは、緊急依頼なんて餌に釣られてやって来た連中だ。魔力なんていくらでも落として行ってくれるさ」


 俺がギルドを後にする時でさえ、数十人という冒険者が迷宮へと向かって行った。

 その後からも緊急依頼の話を聞きつけた冒険者が迷宮へと訪れてくれるはずである。


「というわけで、構造変化を起こしても目立たない場所を教えてくれ」


 迷宮内部の様子を迷宮核に見てもらう。

 俺だけでも把握することは可能だが、情報が過多なため非常に辛い。迷宮核に頼るだけでいいなら頼った方がいい。


『いいよ。地下12階には12人の冒険者がいるけど、2~4人で固まって薬草の採取をしているって感じだね。そうだね。候補としては、この辺りかな』


 迷宮核が丁寧なことに地下12階の地図を水晶に映し出してくれる。表示された地図にいくつかの赤い点が打たれていた。


「この場所は、目立たないのか?」

『手前に大岩があるとか、背の高い草が茂っていて見えにくいとか、地下12階にいる全員から死角になっている場所とか、そんな感じだね』


 あの短い時間にそこまでの事を調べていたらしい。

 普段は、構ってあげないといじけて、寂しいとか言い出す迷宮核だったが、迷宮の管理に関してはこれ以上の存在はいない。


「分かった。構造変化は俺の方でやる」

『大丈夫? さっきまでお酒を飲んでいたんだよね』

「酒なんて魔法で抜いた」


 迷宮の中にいる魔物の中に回復魔法が使える魔物もいたおかげで、回復魔法も使えるようになっているので、自分に魔法を使って状態異常を回復していた。


「――迷宮操作!」


 特に意味はないが、叫びたくなった。

 かなり広範囲に渡って変化を起こしたせいで、ゴッソリと魔力を持っていかれたせいでおかしなテンションになっていた。




 ☆ ☆ ☆




「よし、着いたぞ」


 最初に地下12階に辿り着いたのは、俺からリーエル草が地下12階で得られたことをきちんと聞いた冒険者だった。

 その傍には3人の冒険者がいた。


「この地下12階のどこにリーエル草があるのか分からないが、あの冒険者によれば地下12階で見つけたことは間違いないらしい。買取金額は通常の3倍だぞ。稼ぐチャンスだぜお前ら」

「おう!」


 冒険者の言葉に頷いて仲間が足元を警戒しながら走り出す。


 地下11階~20階は草原フィールドとなっており、短い場所でも足首辺りまでは草に埋もれてしまう。普段でも草に擬態したキラーリーフという牙が何本もの草を纏ったような魔物が現れるため警戒しながら歩く必要がある。

 そんな状態で、今日はどこかに生えている薬草を探しながら歩かなければならない。

 当然のように走っていてもゆっくりとしたものになる。


 しかし、上の洞窟フィールドのように罠は一切ないので、罠を警戒する必要はないので気楽なものだった。


 それに洞窟フィールドと違って草原フィールドには空と太陽がある。もちろん本物の空ではなく、迷宮に映し出された映像によるもので、太陽もそれらしい物を投映し、光を放っているだけである。


 そうしているうちに新たな冒険者が転移結晶を利用して地下12階に現れる。


「クソッ、俺たちもさっさと探しに行くぞ」

「おう」


 やはり、パーティ単位でまとまって探索にやって来ているらしく新たに現れた冒険者も5人組だった。


 5人組の冒険者パーティが最初のパーティとは別の方向へと走り出す。

 まあ、同じ方向を探して取り合いにでもなったら面倒なことになるからな。


 その後も続々と冒険者が地下12階を訪れる。

 そんな光景に地下12階で元々採取をしていた冒険者が驚いていた。彼らにしてみれば、いつものように薬草の採取を行っているだけだ。緊急依頼のことなど知らないため不思議に思っていることだろう。


 そうして、地下12階の様子を観察していると気付いた。


(あれ、最初に冒険者ギルドを後にしたはずの冒険者がまだ来ないぞ?)


 真っ先に出て行ったはずの彼らがいつまで経っても地下12階に現れない。

 気になって迷宮の中を探していると、


「なんで、地下11階にいるんだよ……」


 俺からどの階でリーエル草を採取できたのか聞かずに出てきてしまったため、かなり早くに辿り着いたが、薬草採取と言えば草原フィールドという安易な発想から地下11階以降を虱潰しに探すつもりでいるらしい。


 まあ、俺にとってみれば迷宮の中にいれば何も問題ないので、彼らについては無視だ。


「そろそろ誰かが最初のリーエル草を見つけてもいい頃かな?」


 自分で設定したためどこにリーエル草があるのか分かっている俺は、あらかじめ待ち構えるかのような感じで冒険者たちが近付いてくる姿を見ていた。

 だが、なかなか見つからない。


 本当にあるのか?

 元々、地下12階で探索をしていた冒険者たちからリーエル草を見たことがないと教えられて誰もが諦めかけた時……


「あったぞ!」


 一人の冒険者がリーエル草を詰め込んだバッグを掲げながら冒険者たちが集まっていた場所に近付いていた。その表情はニヤニヤとしている。


「どこにあった!」


 その表情を見た冒険者が怒りを含ませながら採取した場所を聞く。


「あっちの方だな。俺は、それなりに採取したからもういいや」


 あまりに採りすぎては冒険者から要らぬ怒りを買ってしまう。真っ先に見つけると必要な数だけ採取して今も探している冒険者たちに見つけた場所を教えていた。


「さっさと行くぞ」


 仲間を引き連れて冒険者が指し示された方向へと走って行く。リーエル草が生えている場所に辿り着くと、すぐに採取を始めるが次々に冒険者がやって来てちょっとした喧嘩のようなものが始まる。

 すぐに生えていたリーエル草を刈り終える。


「これだけかよ」


 競い合うように採った結果、大した量にはならなかった。それでも普段の3倍の金額で買い取ってくれるとなれば満足だった。


 帰ろうかと考えていると1キロ以上離れた場所で冒険者が騒いでいる姿が遠目に見えた。


「まさか……」


 リーエル草が生えている場所は他にもあり、離れた場所にあったものを見つけられてしまった。今から同じ場所に向かってはここ以上に悲惨な状態になっている。


 抜け駆けするには……


「もっと広範囲を探すぞ」


 草原をもっと奥へと走って行く。


 視線を遠くへと向けると既に夕方になっており、迷宮に来てから数時間が経過していた。


 冒険者たちは次第に焦り始めていた。


「いいね。こっちは儲かりまくりだよ」


 そんな冒険者たちの必死な様子を俺は迷宮の最下層でずっと眺めていた。

 数百人という冒険者が訪れたことによって魔力がどんどん貯まっていく。冒険者が焦っているのは、迷宮に長時間いれば魔力を常に消費してしまい、最後には倒れてしまうからだ。


「さて、俺も俺なりの方法で稼がせてもらうことにしますか」


 魔力ならこのまま黙っていても稼ぐことはできるが、稼げる機会があるなら自分なりの方法で動くべきだ。


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