第23話 VS巨大土竜ー後編ー
広場の壁にはイリスの【迷宮結界】が施されていた。
迷宮結界は、非破壊属性が付与されており、一定以上のダメージを与えない限り壊れることがなく、スキルや魔法による効果を無力化することができる。
広範囲に展開させる為に薄く広げているため強度が落ちているが、巨大土竜の爪爆程度では壊れないため問題ない。
地面との間に『土』以外の何かを挟めば【土中潜行】は使えない。
それは地面の上に氷を張り巡らせて確認している。
「もう、お前に逃げ場はないんだよ」
巨大土竜の頭上に大きな鉄球を4つ出現させる。
手から放たれた8本の爪が鉄球に向かって飛び、突き刺さった瞬間に爆発を起こすと鉄球を粉々に砕く。
破片の一つが巨大土竜に当たる度に体から金貨が1枚飛び出してくる。
「凄いわね」
次々と金貨の出て来る光景を見ながらアイラが呟く。
「それよりお前も参戦しろ」
「はいはい」
道具箱から面の大きなハンマーを取り出して渡す。
剣よりも広範囲を攻撃できる武器として事前に用意していた。
「たしかに広範囲の攻撃が有効ではありますが、今の攻撃から見て分かるように手数の多い攻撃も有効ですよ」
シルビアが収納リングからナイフを次から次へと出して投擲する。
30本のナイフが体に突き刺さるが、金貨と一緒にナイフが抜けて行く。
涙目になったように見える巨大土竜の姿が目に映るが跳躍で懐へ飛び込むと構わずに拳を叩き付ける。
「魔導衝波」
魔力が衝撃波となって全身へと伝わって行く。
全身から大量の金貨をばら撒きながらふらついている。
衝撃を対象の全体へと行き渡らせる魔導衝波ほど巨大土竜向きな攻撃はない。
「吹っ飛びなさい!」
後ろへ倒れ込んだ巨大土竜の背中からハンマーで叩いて吹き飛ばす。
その先へシルビアが回り込んでいた。
「パス!」
横から蹴り飛ばしてメリッサのいる方へと飛ばしてくる。
「お願いします」
メリッサも魔法で人ほどのサイズがある金属の腕を出現させて殴り飛ばす。
「任せろ」
爆発拳。
炎を纏った拳が当たった瞬間、爆発を起こし天井へ打ち上げる。
爆発の衝撃によって金貨が周囲にばら撒かれる。
「後はよろしく」
巨大土竜の飛ばされた先にはキラキラと光り輝く氷があった。
「落氷彗星」
10メートルサイズの氷の塊が天井付近に造られていた。
イリスが魔法で作り出した巨大な氷。
それが重さに任せて落下してくる。
巨大土竜も対抗しようと残っていた2本の爪を飛ばして爆発を起こすが、ヒビを発生させるのが精一杯で巨大な氷を抱えながら地面へ落ちて来る。
衝撃から逃れる為に後ろへ跳ぶ。
氷に圧し潰されて粉塵が舞う。
「メリッサ」
「はい」
魔法による風が粉塵を外へと流す。
視界が良くなると氷の下から押し上げる姿が見える。氷を砕くことはできなかったが、爪爆によってたしかに罅が入っていた。巨体で圧力を与えたことによって氷が割れていた。
「どうしますか?」
「全身に打撃を与える方針に変更はない」
道具箱から取り出した首輪を投げる。
巨大土竜も捕まえられるよう特別に用意した代物で首にガッチリと嵌る。
「……!」
自分の首に嵌った首輪に驚いていて手で引っ張るが、そんな力では外れないように造ってある。
「うおりゃぁぁぁあああ!」
首輪には鎖が繋がっており、鎖を振り回すと鉱山の壁に叩き付ける。
そのままステータス任せに振り回して壁を引き摺り回すようにすると作業場の外側に金貨の山ができる。
「おい、そんな衝撃を与えていると鉱山が崩落するぞ」
「あ、やべ……!」
壁には【迷宮結界】がある。
フィリップさんが心配したような鉱山の崩落が起こるような事態にはならないはずだが、衝撃を与えすぎると【迷宮結界】が解除されてしまう可能性がある。
ここまで追い詰めて逃がすわけにはいかない。
鎖から手を放すと巨大土竜が天井に向かって飛んで行った。
天井にぶつかると地面へ落ちて来る。
「そこへ落とさないで下さい」
メリッサの手から放たれた何十発という風弾が巨大土竜を吹き飛ばして何もない場所へと落とす。
風の弾丸が何十発も当たる光景は殴られているようだった。
「ねぇ、そろそろいいんじゃない?」
アイラが足元を見ながら呟く。
それなりに広かったはずの作業場には大量の金貨がばら撒かれていた。
人ぐらいのサイズなら地面にばら撒かれた金貨を避けて行動するのも難しくはないが、巨大土竜みたいな巨体が相手では金貨を踏み付けてしまう。それではせっかくの金貨に価値がなくなってしまう。
【魔力変換】でも物体の損傷が激しいと価値が低くなって魔力も得られなくなってしまうので金貨は可能な限り無事な状態で確保したい。
「う~ん……もう少し取れそうな気もするんだけどな」
搾り取るつもりで見てみると巨大土竜が怯えていた。
坑道へ逃げ込もうとしていたので足元に落ちていた岩を投げ付けると金貨を出しながら転んだ。
【鑑定】を使用してみると魔力は1000ぐらい残っている。
しかし、ダメージをなかったことにできるとはいえ、精神的に受けてしまったダメージのせいでボロボロになっている。
逃げ出してしまうのも無理ない。
「シルビア……」
「はい」
前に出たシルビアが腰を低く落とす。
巨大土竜までの道を一気に駆け抜けると後ろに回り込んで胸の中心にあった物を手で掴む。
これもシルビアにしかできない【壁抜け】だ。
掴みたい物に触れる一瞬のみスキルを解除して掴んだ瞬間にスキルを再び使用する。
掴んだ物は――巨大土竜の魔石。
巨大魔物であっても魔物である事には変わりない。
魔物は体内にある魔石を失えば機能を停止する。
機能を停止した巨大土竜が大きな音を立てながら後ろへ倒れる。そこに金貨がないことは事前に確認している。
魔物に対しては絶対的な能力を誇る【壁抜け】。
しかし、問題がないわけではない。
「水をいただけませんか?」
「はい」
胸の前に広げた手の上に50センチほどの水球を出現させる。
そこへシルビアが魔石を掴んだ手を突っ込んで洗っていた。
「ありがとうございます」
たった一瞬とはいえ、スキルを解除した時に体内に腕があることになる。そのため巨大土竜の体液がベッタリと付いていた。
魔石を破壊してしまえれば、こんな面倒な事をせずに済んだのだが、確認しなければならない事があったため魔石を確保してもらった。
「終わったのか?」
「ええ、これでカンザスを脅かしていた魔物は退治されました」
「随分と呆気ないものなんだな」
俺たちのステータスやスキルを考えれば呆気ないのも当たり前だ。
むしろ戦闘へ持ち込むまでに時間が掛かってしまう。
「とりあえず礼は言わせてくれ。ありがとう」
フィリップさんは本当に安堵していた。
「この街は昔馴染みの街だ。平和になってくれて本当に助かっている」
「だったら、これから見せる光景についても黙っていてもらえますか?」
「なんだ?」
作業場に散らばった金貨を眺める。
ざっと見ただけでも数十万枚の金貨が散らばっていた。
6人で協力しただけでは回収し切れるような量ではない。
人手が必要になる。
巨大土竜討伐リザルト
・金貨数十万枚
・金貨100枚
・巨大土竜の魔石




