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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第15章 金貨採掘
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第21話 カンザスでの襲撃

「……数は?」


 冒険者ギルドで諸々の打ち合わせをしていると外はすっかりと暗くなっていた。

 大通りの近くにある店の中からは僅かに灯りが漏れているが、夜の闇は隠れている人の姿を隠してしまう。

 取り囲まれている気配を感じて仲間に尋ねる。


「50人ぐらいでしょうか?」

「そこそこ集めた方なんじゃない?」


 シルビアの回答にアイラが反応する。

 取り囲んでいるのは間違いなく冒険者たち。

 狙いは俺たちの持っている大金だろう。


「そろそろ出てきたらどうだ?」


 闇の中に向かって問い掛ける。

 すると、一人の男が出て来た。


「あんたは……」


 男の顔には見覚えがあった。

 両替時に金貨の枚数を水増ししてボコボコにさせられていたダントとか言う男だ。


「さっきはよくもやってくれたな」


 男の胸には痛々しいほど包帯が巻かれていた。


「治療は済んだのか?」

「ああ、街で一番の治癒魔法の使い手に治してもらったから問題ない。だが、そのせいで多額の金を請求させられた。お前には金を払ってもらおうか」

「あれは、お前が水増ししたからだろ」


 半数以上の水増しは明らかに悪意があった。

 だから俺も容赦なく片付けさせてもらった。


「う、うるせぇ! お前は素直に大金を置いて行けばいいんだよ!」


 路地の裏、建物の陰、玄関横に置かれていた木箱の中から次から次へと男たちが出て来る。

 シルビアが言ったように数えてみると全員で50人近くいた。

 待ち伏せされていたみたいだ。


「状況を分かったか? 金を置いて行けばお前たちを傷付けないことを約束してやる。今日、両替した金以外にもたんまりと持っているんだろう」


 両替に手数料まで出して大盤振る舞いしたことから大金を持っていることが知られてしまった。

 そうなるように仕向けたので問題ない。


「却下。金を渡したところでお前たちが満足する保証なんてどこにもない」


 俺がどれだけの大金を持っているかなどダントに分かるはずがない。

 もしかしたらさらに多くの金を持っているのかもしれない。

 そう、考えて脅してくる未来が見えている。


「そもそも、俺たちは巨大土竜と戦えるだけの実力があるんだ。たったこれだけの人数でどうにかなると考えているのか?」

「数を数えることもできないのか? こっちは5人に対して50人も用意して来ているんだぞ」

「だから足りないと言っている」


 人数がどれだけいたところで恐れる必要などない。

 自分たちが勝てないと思っている相手を圧倒した人物をなぜ人数を集めればどうにかなると思っているのか理解できない。


 だが、隠れていた冒険者の顔を見てみると笑っていた。

 全員が男で、剣やナイフといった武器を持っていた。後ろの方には杖を持った魔法使いらしきローブを着た人物も見える。


 襲撃者の一人が剣に手を掛ける。


「待った」

「なんだ?」

「街中での冒険者同士の喧嘩は禁止されている。けど、正当防衛の場合は別だ。武器を抜いた瞬間、こっちも手加減を止める。慎重に行動した方がいいぞ」


 何人かが武器から手を放す。

 しかし、自分の実力に自信のあるダントは違った。


「ハッ、テメェらみたいな弱そうな奴が戦えたって事は土竜野郎が大した事なかったって事だろ。だったら問題ねぇ」


 近くにあった屋根の上から矢が飛んでくる。

 隣にいたシルビアがナイフを投げて矢を叩き落とした。


「なっ……! こんな暗い中で矢を叩き落としただと……!?」

「いや、丸見えだったから」


 屋根の上にいた人物は気配を消して隠れていたつもりだったのだろうが、シルビアの【探知】からは逃れられていなかった。


 迷宮の魔力を消費してしまうので非常時以外は地図(マップ)を使用したくないので、自分たちの感知能力に頼るしかない。とはいえ、囲まれている状況とはいえ、非常時とは思えない。現に矢が当たったとしても問題なかった。


「矢を射って来たので敵対行動と見做す」


 収納リングから取り出したナイフを屋根の上にいる人物に向かって投げると小さな呻き声が聞こえた後で何かが落ちる大きな音が聞こえる。おそらく、屋根の上から落ちてしまったのだろう。


「この……!」


 取り囲み、会話をしている間に注意を惹いて弓矢で奇襲を考えていたらしいが失敗した事を悟ると3人の男が一斉に斬り掛かって来た。

 俺、アイラ、イリスの剣が3人の体を斬る。

 地面に倒れた3人は血を流しながら意識を手放した。


「襲撃するならもっと強い奴を連れて来るんだったな」

「クソッ……!」


 ダントが歯噛みする。


「お、女……それもそこにいる魔法使いの女を人質に取れ!」


 その言葉に活路を見出したのか一斉に襲い掛かって来る男たち。

 はっきり言ってそれは悪手だ。


「メリッサ、後で片付けもあるんだから街に被害が出るような魔法は使うなよ」

「分かっております」


 自分へ狙いを定められた事でメリッサも怒っている。

 杖を振り回すと杖から発生した風の刃が男たちの体を両断して地面に倒して行く。火事になる火属性の魔法を使わなかっただけでも配慮した方か。


「な、なんなんだよ……」


 ダントは何も言えなくなっていた。

 見た目から強そうに見えなかったことで俺たちの実力を本当に侮っていたみたいだ。


 あっという間に10人以上の人物が無力化された事で再び武器から手を放していた。


「悪いが、俺たちの仲間の一人が領主と知り合いなんでカンザスで暴れるような奴は容赦なく叩きのめすつもりだ。覚悟のある奴だけ掛かって来な」


 殺気を放ちながら忠告すると何人かがしり込みしながら逃げ出して行く。


「ひっ……!」

「こんな奴を相手にしていられるか!」

「俺も付き合っていられない!」


 カンザスに俺たちみたいな規格外な奴がいると分かれば荒くれ者の多くが街から逃げ出して行く。

 これで街が落ち着くのも早くなるだろう。


「どけっ!」


 しかし、まだ諦めていない奴もいる。

 俺たちの持っている大金はそれだけ人を惑わせてしまう。


「情けない連中だ」


 その男は全身甲冑を着込んでいた。

 街で装備するような代物ではないのだが、俺たちの実力をそれなりに評価して用意していたらしい。


「さすがに剣でこの甲冑を斬るのは無理だろう」

「う~ん……」


 自信満々に言う男を前にすると簡単です、とは言えない。

 どうするべきか悩んでいるとシルビアが前に出る。


「シルビア……?」

「少し試したい事があるのでわたしに任せてくれませんか?」


 攻撃力の低いシルビアでは全身甲冑を着た相手は相性が悪い。

 しかし、シルビアの表情を見ると何か考えがあるようなので任せる。


「嬢ちゃん。悪いが、腕の1本でも折って痛い目を見てもらうことにするぜ」

「そんな事を言っている暇があるんですか?」

「あん?」


 全身甲冑を着た男には自分の後ろへいつの間にか移動していたシルビアの姿を目で追う事すらできなかった。


「何の、つもりだ……?」


 倒れながら疑問を口にする全身甲冑だったが、意識が徐々に遠退いて行く。

 何らかの方法で全身甲冑を倒したシルビアが倒れた相手を一瞥することもなく近付いて来る。


「何をしたんだ?」

「どれだけ強固な防具で身を固めていても体の内側までは守ることができません。【壁抜け】で擦り抜けた瞬間にナイフを置いて来ました」

「うわ……」


 シルビアの行動に思わず言葉を失ってしまう。


 彼女の手に掛かればどんな防具も意味をなさない。

 他の【壁抜け】を所有している者では、魔力が足りずにタイミングを合わせて置いて来るような事ができない。眷属になったシルビアだからこそできる芸当だ。

 巨大土竜との戦いで行ったナイフを置いて来る攻撃方法を人間相手でも通用するのか試してみたかったらしい。


「く、くそっ……!」


 取り囲んでいた連中が逃げ出して行く。


 全身甲冑の男はそれだけ連中にとって切り札のような存在だった。

 それがあっという間に何もできず倒されたことで戦意を失ってしまった。しかも、この街にいる限りその恐怖心が続くため安寧を得る為にも街から出て行くしかない。


「これで、後は明日巨大土竜(ジャイアントモール)を倒すだけだな」

「その前に掃除をする必要があります」

「あ……」


 シルビアの倒した全身甲冑以外は血を流して倒れている。

 このままにすると街から苦情が来る。俺たちは被害者だが、加害者である襲撃者が街から逃げ出した以上、当事者は俺たちしかいないので俺たちが掃除するしかない。


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