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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第15章 金貨採掘
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第20話 偽金

 巨大土竜(ジャイアントモール)の生み出した金貨。

 見た目は普通の金貨と全く変わらないどころか含有している金の量まで変わらないと思わせてくれる。


 しかし、【鑑定】を使用してみると『金貨(偽)』と表示される。


 そう、偽金扱いされていた。

 その事は一部の冒険者の間では既に知られた事で、街の住人に偽金だと知られる前に使い切るつもりでいた。


 俺たちも昨日、メリッサが【鑑定】を箱に使用するまで気付けなかった。


 冒険者たちは偽金であることを冒険者ギルドに黙っていて価値が下がるのを防いでいたみたいだけど、ギルドだけでなく街の方でも既に把握していた。

 ギルドや街としても【鑑定】すれば価値のなくなる金貨など抱えたくはなかったが、下手に規制などして冒険者に暴れられても困るということで街が抱えることになった。


 フィリップさんに確認してみたところ、彼は知らなかった。

 領主であるガンツさんからは冒険者仲間から知らされているだろうと思っていたらしいし、領主が把握している事実を知られたくなかった。また、冒険者はベテランで領主とも顔見知りのフィリップさんには知られたくなかった。


 そういった両者の行き違いから偽金である事実が事前に俺たちへ伝わらなかった。


「今ので分かったと思うけど、俺たちは【鑑定】を持っている」


 周囲にいる冒険者たちを睨みながらいうと何人かが持ち込もうとしていた皮袋から金貨を抜き取るのが見えた。

 同じようなことを考える奴は何人もいるみたいだ。


 最初に騙して来た奴をボコボコにしたのもこれ以上おかしな事を考えるような奴が現れないようにする為だ。

 俺は、取引は対等に行うつもりだが不正を許すつもりはない。


「持って来るなら巨大土竜(ジャイアントモール)が生み出した金貨だけにしろよ」


 冒険者たちも偽金であることを知っていたからこそ通常の金貨と混ざったりしないように採掘で得た金貨を別に保管していた。

 しかし、既に混ぜてしまって本人にも分からない。


「あの……」


 おどおどした様子の大男が皮袋を差し出してくる。

 体格は大きいのだが、態度があまりに小さい。それというのも差し出して来た袋の中には本物の金貨が混ざっている。さっきの光景を見ていれば恐れてしまうのも無理ない。


「実は、何枚か混ざっているんだが……」


 俺が何か言う前にイリスが金貨の山から5枚を取り出す。

 シルビアには受け取った金貨の数を数え、イリスには【鑑定】を使って偽物と本物を見分けるよう頼んでいた。


「偽金貨は11枚」


 ギリギリ10枚を超えていたので1枚増やして返金する。

 偽る相手には容赦をするつもりはないが、正直者にはきちんと取引を行う。


「混ぜてどれが本物なのか分からなくなった人たちにはこっちで判別してやるから持ってきてください」


 セコイ真似をしようとした連中が10人以上並んでいる。

 みんな、ボコボコにされるのは嫌だが、それ以上に稼ぎたいと思っているような連中だ。手数料分を稼ぐことを優先していた。



 ☆ ☆ ☆



「全部で3200枚です」


 金貨の集計をしていたシルビアが1日かけて手に入れた金貨の枚数を教えてくれる。


 カンザスには現在200人近い冒険者がいる。

 その誰もが10枚近い枚数の金貨を残していた。


 昨日までに街でかなりの金額の飲み食いをしていたはずなのだが、それでもかなりの金額を溜め込んでいた。

 いったい、どれだけの金貨が鉱山にあったのか……


 ここに俺たちが手に入れた初日の1000枚と巨大土竜(ジャイアントモール)にダメージを与えて吐き出させた800枚が加わる。

 5000枚にはなったが、まだ足りない。


「おい、3000枚集めて来たぞ」


 冒険者ギルドに部屋を借りて集計をしていると護衛にアイラとメリッサを連れたガンツさんが入って来る。


「頼む」


 テーブルの前に立ったアイラが収納リングから金貨の詰まった袋を出して行く。


 これらは偽金だと分かっている冒険者が街で飲み食いをして街に落として行った金貨だ。

 朝の内に領主であるガンツさんの下を訪れて偽金が混ざっている事実を伝えたところ、既に知っていたので冒険者と同じように両替を提示させてもらった。


 さらに街にある店に掛け合って金貨を全て両替する為に走ってもらった。

 アイラとメリッサは大量の金貨を持つガンツさんを狙う連中がいるかもしれないので護衛と【鑑定】の為に着いて行った。


「しかし、よくこれだけの金貨が街の中にありましたね」

「冒険者の連中だよ。奴ら、偽金だと分かっていたから毎日のように騒いで大量の金貨を落として行ったんだ」


 使えないと言われる前に使い切ってしまう。

 下手に溜め込んで価値がなくなってしまうよりも有意義な使い方かもしれない。


「問題はこれだけあって足りるかなんだよな」

「8000枚もあるのよ。足りるんじゃない?」


 一般的な感覚から言えば大金だ。

 しかし、大きな獲物を釣り上げるには足りないかもしれない。


「いや、正確に言うなら8200枚だ」

「え……?」

「200枚分については呼んで来て手伝ってもらった」


 近くにガンツさんがいるので誤魔化したが、迷宮から魔物を呼んで朝から採掘に勤しんでもらった。

 残念ながら魔物の手では器用な事ができなかったのでシルビアやアイラどころか普通の冒険者よりも少ない効率しか発揮できなかった。それでも数に任せて採掘させたので1日で200枚の金貨が手に入った。

 不眠不休で働いてくれる人手があるっていうのは便利でいいな。


「目立つような真似をしてよかったの?」

「問題ない。鉱山にいても目立たないような連中に来てもらったし、昨日の崩落で冒険者は全く訪れていなかったらしい」


 魔物からもそういう報告を受けている。

 誰にも見られていなければ問題ない。


「できれば1万枚ほど用意できるのがよかったのですが、これしかなかったと言うのなら仕方ないですね」


 作戦を立案したメリッサとしては、もう少し欲しかったみたいだが、これ以上用意するのは難しいだろう。

 もっと広範囲を探す――2カ月もあったのだから街の外へ流れてしまった金貨も少なからずある。そこまで手間を懸ける余裕もないのでカンザスの中だけに限定させてもらう。


「では、手数料分を加えた金額をお渡しします」


 領民から集めた金貨の手数料だが、領主として領民に還元してもらうのが1番いいだろう。


「しかし、本当にこんな事をしてもよかったのか?」


 手数料の事は【魔力変換】を知らなければ損をしているようにしか思えない。


「いいんですよ。これだけ最後に稼がせれば冒険者連中も地元へ帰ることでしょう」

「ほう……」

「昨日の戦闘で鉱山にある金貨が巨大土竜(ジャイアントモール)の生み出した物だという事は広まっています。明日、俺たちが巨大土竜(ジャイアントモール)を倒せば新たに金貨が生み出されるような事はない。最後に少しばかり稼がせてあげたんですから納得して地元へ帰って行く事でしょう」


 手数料を得たばかりだけでなく、偽金を両替してあげた。

 これ以上カンザスに居座る理由がなくなれば冒険者の数もいずれは落ち着いて行く事になる。


「それはカンザスの事を思ってのことか?」

「そうです……と言いたいところですが、実際のところはイリスの為です」


 幼い頃の体験から負い目があるらしいので恩を返す意味も含めて冒険者の数を減らすことに協力させてもらった。

 ただし、地元へ帰るのは全員ではない。


「何人かは今日この街で骨を埋める事になるかもしれませんがよろしいですか?」

「どういうことだ?」


 部屋の中心には8000枚という大金があった。

 偽金とはいえ、【鑑定】をしなければ分からない精巧な金貨。

 これだけの大金を持ち歩いていれば狙われてもおかしくない。


「まさか……だが……」

「確実に狙ってくるでしょう。向こうが殺す気で来た場合には容赦するつもりはありませんからね」


 これで正当防衛が成立し、物理的に人数を減らすことができる。


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