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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第15章 金貨採掘
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第19話 両替

 昼過ぎ。

 冒険者ギルドへ行くと中にいる冒険者の表情は極端に分かれていた。


 片方は笑顔で酒を飲み、談笑をしている。

 逆に暗い表情で、羨ましそうな眼を向けている冒険者たちがいる。


 笑顔の冒険者たちには見覚えがある。昨日、一緒に鉱山へ採掘に向かった冒険者たちだった。彼らは1日の間に金貨を何枚も手にしたことで笑顔になっていた。

 逆に鉱山へ行かなかった冒険者たちは羽振りのいい冒険者たちを羨んでいた。


 俺たちが冒険者ギルドへ入ると羨ましそうにしていた冒険者の視線が一斉に集まる。


 その瞳には期待が込められていた。

 一昨日、ギルドで雇われる者がいないか募った時には俺たちの事をバカにしていた連中だったが、戻って来た冒険者から話を聞いてしっかりと報酬も手に入れている事から、今回も儲け話を持って来たのではないかと期待されている。


 彼らの期待に応えることにしよう。

 今回も儲け話を持って来た。


「はい、注目」


 カウンターの近くに立って道具箱(アイテムボックス)から長い机を置き、机の上に2つの箱を出現させる。


 冒険者たちはいきなり出現した道具に驚いているようだったが、箱の蓋を開けて中を見えるようにすると、それ以上に机の上に置かれた箱の中身に驚いて道具がいきなり出現したことなど頭の中から消えていた。


 箱の中身は金貨。

 分かり易く金貨の詰まった箱を用意させてもらった。


 手を叩くと冒険者たちの注目を集める。


「今日は、みなさんにお願いがあって来ました」

「なんだ? まだ誰かを雇うつもりなのか?」


 いかにも「俺は興味がない」といった表情の男が近付いて来る。

 けれども、すぐに喰い付いては儲け話に乗っかる気満々なのは見え見えだ。


「今回は、依頼じゃなくて両替のお願いに来ました」

「両替?」

「そう。俺たちは鉱山で採掘された金貨を求めている。採掘した金貨と普通に市場で出回っている金貨を交換して欲しい。もちろん手数料として10枚につき1枚増やした状態で渡すことを約束しましょう」

「あん?」


 分かり易く説明したはずなんだけど、男が首を傾げていた。

 冒険者は身分を問わずに誰でもなれるけど、そのせいで最低限の学すらない者までいるのでマナーなんかを必要とされない低ランクの冒険者の中には荒くれ者が多い。

 彼らもそんな荒くれ者の一人だ。


「簡単に言えば金貨10枚を渡してくれれば金貨を11枚に、20枚を渡してくれれば22枚にして返してあげるっていうこと」

「そ、そんなことをしてお前にどんな得があるんだ?」

「俺が必要としているのは巨大土竜(ジャイアントモール)が生み出した金貨だ」


 メリッサの考えた策。

 それは、大量の金貨を用意して巨大土竜(ジャイアントモール)を誘き出そうというもの。


 近くに俺たちがいて罠だと分かっていても無視できないほど大量の金貨を用意することで誘き出す。


 しかし、初日にしたように金貨1000枚を用意しても俺たちが近くにいたのでは寄って来ることすらしてくれない。

 昨日、巨大土竜(ジャイアントモール)から出させた800枚を追加しても足りないだろう。


 そこで、もっと大量の金貨が必要になった。

 通常の金貨を用意するだけなら迷宮の力を利用すれば問題ないのだが、巨大土竜(ジャイアントモール)が求めているのは自らの魔力で精製した金貨。

 何日も掛ければ大量の金貨を手に入れるのも難しくないかもしれないが、そこまで時間を掛けるつもりはない。


 幸いにして街には2カ月近い時間の間に冒険者たちが採掘してくれた大量の金貨が溢れている。彼らから貰えば不足している分を補うことができる。


 しかし、彼らも自分に得がなければ両替など簡単にしてくれないだろう。

 だからこその手数料。

 ただ、自分の持っている金貨を両替するだけで1割儲けることができる。


「なら、こいつを両替してくれ」


 男が腰に吊るしていた皮袋を渡してくる。

 中には金貨が入っていた。

 皮袋をシルビアに渡す。


「俺の記憶が確かなら30枚入っているはずだ」

「全部で27枚入っていました」


 皮袋の中にある金貨を数えたシルビアが教えてくれる。

 男の教養から考えて悪意から多めに申告したわけではなく、単純に何枚の金貨が入っているのか覚えていなかったのだろう。


 この程度なら許容範囲内だ。

 イリスにも確認してみたが、問題ないみたいで頷いてくれる。


「じゃあ、こちらをお渡しします」


 誰の目にも明らかなように金貨の詰まった箱から22枚を渡す。

 余った7枚については返却する。


「い、いいのか?」

「何か問題でも?」


 約束通り1割増やした状態で渡したのに委縮していた。

 男が離れて行く。


「お、俺の金貨もいいか?」


 別の男が両替に近付いて来る。

 新たに来た男も皮袋に金貨を詰めていた。

 同じようにシルビアに渡して枚数を確認してもらい、イリスから許可を得たところで枚数を増やして渡す。


『おお!』


 目に見えて金貨が増える光景を見てギルドが沸き立つ。


「そんな損をして本当に大丈夫なのか?」

「問題ありません。昨日の巨大土竜(ジャイアントモール)との戦闘を見ていた人なら知っていると思うけど、奴はダメージを与えると金貨を吐き出す。その時に得られる金貨を考えれば、この程度の損失なんて問題ない」

「なるほど」


 表向きにはそういうことにするものの、実は巨大土竜(ジャイアントモール)の生み出した金貨を得られた時点でそれほど損をしていない。


 鉱山で採掘できた金貨は、巨大土竜(ジャイアントモール)がスキルで精製しているおかげか通常の金貨よりも保有している魔力が少しばかり多い。【魔力変換】で魔力に換えて金貨を生み出せば20枚ほどで1枚分の魔力にはなる。

 後で大量に手に入ることを考えれば最終的にプラスになる。


「おい、急いで宿屋へ戻るぞ」

「金貨なんてこんな場所に持ってきていないからな」

「奴らが心変わりする前に両替してしまおう」


 手数料を得られる光景を見ていた者たちが急いで保管している金貨を取りに保管場所へ戻る。

 金貨みたいな貴重品を持ち歩くなど危険すぎる。


 この場には、逆に保管しておくことに危機感を覚えてしまう者もいる。


「俺も頼む」


 3人目の男が持って来た金貨を両替する。


「おい、お前は何枚持っている?」

「7枚だ」

「俺は3枚持っている。二人で10枚にしよう」


 賢い奴は協力して10枚にしている。

 というか話を持ち掛けているのは最初に両替をした男だ。


 そうして、ホクホク顔の冒険者が増え、10人以上相手にしていると急いで宿屋へ戻った冒険者の一人が戻って来る。


「おう、こいつを頼むぜ」


 机の上にドシッとした重みを感じさせる皮袋を置いた冒険者が目の前にいた。

 シルビアが枚数を数える。


「……凄いです! 60枚あります」

『おお!』


 これまでを大きく上回る枚数にギルドが沸き立つ。


「お前らチマチマと両替をし過ぎなんだよ。オレ様なら、これぐらいは簡単に稼げるぜ」

「さすがはダントさんだ!」


 近くにいた舎弟みたいな男がヨイショする。

 ダントと呼ばれた男の体を見るとかなり鍛えられていることが分かる。これなら採掘も苦ではなかっただろう。


 イリスに確認する。

 今までと違って首を横に振っていた。


「アウト」

「へ?」


 ダントの体を背中から蹴り上げて浮かせると、落ちて来たところを踵で叩きつけて床に落とす。

 ギルド内が沈黙に包まれる。


「テメェ……」


 それなりに手加減しておいたおかげで意識がギリギリあった。


「俺が求めているのは巨大土竜(ジャイアントモール)が生み出した金貨だって伝えておいたはずだ。普通の金貨を混ぜているんじゃねぇよ」

「金貨の1枚や2枚で……」

「混ざっていた通常の金貨は全部で37枚」


 半分以上じゃねぇか!


「う、うるせぇ! 採掘して得た金貨なんてほとんど街で使っちまったよ!」


 聞いてみれば持ち込んだ金貨のほとんどが部下を脅して奪い取った金貨らしい。

 手数料だけは自分の懐へ入れて元々の金額を返金する。相手には「損をしていないから」と脅して得たとのこと。実際には得られるはずだった手数料分を得られなかったので損をしている。


「何枚か紛れているだけなら見逃してやるけど、明らかに悪意があって水増ししているようだとボコボコにするから注意するように」


 両替を見て沸き立っていた冒険者たちが引いて行く。


「おい、こいつらの中に【鑑定】使いがいるぞ」


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