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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第15章 金貨採掘
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第5話 偽物騒動

「冒険者のマルスさん、ですか……?」

「そうだけど」

「アリスターを拠点にしている」

「はい」


 クラーシェルの街へ入る為に門番に身分証である冒険者カードを見せる。

 どこの街でもしている事なのでおかしなところなどないはずである。

 下手に犯罪者を招き入れたりしない為に必要な事。だから門番が戸惑う理由が分からない。


「何かありましたか……?」

「偽物? けど……」


 ブツブツ言いながら俺の冒険者カードをジッと見つめる門番。


「おい、どうしたんだ?」


 と、手続きが遅い事を不審に思った同僚の門番が近付いて来た。

 彼はイリスとメリッサの手続きをしていたはずなのだが、そちらは既に終わっているらしく2人は手持無沙汰に待っていた。


「それが偽の身分証を提示して来たんです」

「はぁ!?」


 同僚の門番が声を上げている。

 俺だって声を上げたい。


 この冒険者カードは冒険者になってから1年以上使って来たけど、今まで問題になるような事はなかった。


「これです」


 同僚の門番に冒険者カードを見せる。


「……どこにもおかしな所なんてないじゃないか?」

「何を言っているんですか? アリスターのAランク冒険者マルスと言えば巨漢の大男だって有名じゃないですか」


 え、なんでそんな事になっているの!?

 俺の身長は175センチと長身に入る部類ではあるものの大男と言われるほど大きくはないし、筋肉はそこそこにしか付いていないので巨漢というわけでもない。


「おまえ……彼はマルスさん本人だぞ」

「そんな!?」


 まるで信じられない! といった様子で驚いている門番。


 いい加減に怒ってもいいんじゃないかな。

 同僚の門番が怒っている俺の様子に気付いて汗を流している。


「も、申し訳ございません。こいつは戦争後に入って来た新人で教育が行き届いていないんです」

「いや、それはいいんですけど……」

「問題ないと確認できましたので通ってもいいですよ」


 先輩門番が通してくれる。


「どうしたんですか?」


 シルビアとアイラも問題がなかったようで全員が通っても問題ないみたいだ。

 しかし、俺にはどうしても確認しておかなければならない事がある。


「さっきの俺の容姿については誰から聞いたんだ?」

「え!?」


 新人門番の肩に両手を置いて少しばかり威圧する。

 兵士として駆け出しの彼では耐えられなかったらしく、体を震わせて尻餅を付いてしまった。漏らしていないだけでも頑張った方なので偽物云々については許す事にする。


「ははっ、許してやって下さい」


 新人門番の醜態を見て先輩門番が笑っている。


「こいつ、街中に流れている噂を信じたんですよ」

「噂?」

「そうです。戦場で活躍した冒険者は軍の部隊を一振りでぶった切れるほどの大鉈を持った巨漢の大男だって」


 残念。大鉈ではなくギロチンです。

 そもそも大鉈の一振りで部隊をぶった切るなんて不可能だろ。


「他にも単身で突っ込んで屈強な軍人を千切っては投げていたと聞いています。鎧を着た軍人ですよ。こんな細い人にできるわけがないです」


 人を指差すんじゃありません。

 それに穴へ投げ飛ばしていただけで千切ってはいない。


「おまえな……俺はあの時、東側に配属されていたから見て知っているけど、この人は間違いなく本物だぞ」

「そんな……」


 へなへなと崩れ落ちる新人門番。

 なんだか俺が悪い事をしたわけでもないのに申し訳ない気持ちになってくる。


「済まない。こいつはあんたに憧れているところがあって鍛えていたんだ」

「それは申し訳ない事をしました」


 こんな体の細い冒険者で申し訳ないです。


「君たちの入場は問題ないから通ってもいい」

「ありがとうございます」


 門を潜ると眷属4人も俺に付いて来る。


「これからどうしますか?」

「全員でギルドへ行く必要もないだろ」


 話を聞くだけなら最低限のメンバーさえいればいい。

 内容に関しては【迷宮同調】があるおかげで簡単に共有する事ができる。合流も離れた場所からでも連絡する事ができるので簡単に済ませる事ができる。


「なら、私とマルスが行く」

「俺も?」

「リーダーなら依頼内容の話を聞きに行かないのは失礼」

「それもそうだな」


 結局、クラーシェルの冒険者ギルドにイリスと俺が話を聞きに行く事になった。

 シルビアたちには街の様子を見て回ってもらう事にする。戦争後、街への影響はそれほどなかったとはいえある程度の復興は必要だった。少しばかり手を貸したので復興の状況を知りたかった。


「あ、あの……!」


 後ろから聞こえた声に振り向けば新人門番が立ち上がっていた。


「銀髪の女性。あなたが『賢者様』ですよね」

「……人違いです」


 言われた二つ名にメリッサが人違いだと否定する。

 しかし、顔が真っ赤なので誤魔化せていない。


「そ、そんな事ないですよ。マルスさんの事だけじゃなくて仲間の話も仲間になった人の話も有名ですから」


 自分も故郷で有名になっていると知ってイリスも落ち込んでいる。


「わたしはどうですか?」

「あ、あたしは!?」

「……どちら様ですか?」


 新人門番の反応にシルビアとアイラが落ち込む。

 二人はメリッサとイリスとは対照的に有名になってみたかったらしい。


「お二人に関しても申し訳ない。二つ名で呼ばれるようになった『賢者様』と元々クラーシェルにいたイリスティアについては話が勝手に出回っているんだが、そっちの二人に関しては……」


 地味だったので出回らなかった。

 それでも今利用している南側の門前で無双していたのに有名にならなかったのはなんでだろう。


「殲滅力がない自分が恨めしい」

「そうね。わたしたちは基本的に帝国軍を相手に立ち回っていただけですから地味だったんですよね」


 魔法を使って焦土と化してしまうほど派手な攻撃をしたメリッサ。

 北側や南側とは比べようもない大量の兵士を虐殺していった俺。おまけに街の中で働いているはずの奴隷のほとんどが俺が捕らえたようなものだ。


 俺とメリッサの活躍に隠れてしまった。


「あ、あのサインを……!」

「いい加減にしろ!」


 とうとう先輩門番から叩かれて詰め所の方へと連れて行かれる。

 仕事をサボって憧れの人に近付こうとしていたようなものなのでコッテリと怒られて欲しいところだ。


 彼女たち3人と別れてイリスと一緒に冒険者ギルドへと向かう。



 ☆ ☆ ☆



「さて、わたしたちは復興の様子を見に行く事にしましょうか」


 シルビアさんが街の外壁に沿って歩き出そうとします。

 戦争は私たちが間に合ったおかげで街の外でしか行われていません。それでも街の中への被害が全くないというわけではないので外周部分は酷い物でした。

 なので、被害状況を確認するなら外側から見て行くべきです。


 ですが、私は街の中へと進んで行きます。


「あれ?」

「街の中なら問題ありません」


 魔法で生み出した風を街の中に流して既に確認は済んでいます。

 細かい部分まで分かる魔法ではありませんが、少なくとも崩れた建物の残骸などが未だに放置されているような状態ではない事が分かっています。


「じゃあ、何をするの?」

「決まっています」


 私にとっては相応しくない二つ名。


「どこまで広がっているのか。具体的な状況を確認しに行きます」

「えぇ、いいの……?」

「二つ名なんて付けられて注目されている私の気持ちが分からないのですか!?」


 しかも『賢者』。

 おこがましいにも程があるので自分から名乗るような事は絶対にしたくないですし、なによりも私がそんな風に呼ばれているなど『大賢者』様本人には知られたくないです。


「あたしたちは、その『大賢者』様も詳しくないんだけど有名な人なの?」

「いいでしょう。『大賢者』様がどれほど素晴らしい人なのか説明してあげます」


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