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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第3章 報復計画
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第1話 新たな力

 父の行方を知ってから2カ月。


 あれから目立った行動は起こさず、コツコツと冒険者ギルドで依頼をこなしていた。

 その結果……


「おめでとうございますマルス君。これで、君もDランク冒険者よ」


 俺の担当のようになったルーティさんが自分のことのように喜んでくれる。

 自分のレベルを上げる目的もあって討伐依頼を受け、時々採取依頼も受けて色々な場所に出向いていた。まあ、レベルに関してはたった1つしか上がっていなかった。既に俺自身のレベルもEランクの依頼で倒すような魔物では上がらなくなってしまった。


 それというのも地下77階でレベル500の相手をレベル10程度しかないにもかかわらず倒してしまうというジャイアントキリングを巻き起こしてしまったからだ。そのせいでレベルが一気に上がってしまったのが原因だ。


「それでは、Dランクの依頼を受けてみますか?」


 ルーティさんが確認してくるが、今日はちょっと遠慮しておきたかった。


「いえ、久しぶりに迷宮に挑んで自分のレベルを上げたいと思います」

「そうですか。迷宮ならいきなり強い魔物が出現する、ということもないので安心ですね……ただ、レベルを上げることも大事ですが、装備についても気にした方がいいですよ」


 俺が身に着けている装備品、神剣・星雫と深淵の黒衣は、迷宮で見つかった物だが、Fランク冒険者だった頃から愛用している物だ。

 普通は、ランクが上がれば得られる報酬も弾み、装備品に掛けられるお金も大きくなり、装備品を新調するのが普通だ。


 しかし、Eランクに上がった時にはそんなことをしなかった。


 というかする必要がない。

 ルーティさんがどの程度の力があると判断しているのか分からないため困るところだが、俺の装備品はSランク冒険者相手でも通用する代物だ。変えないのではなく、変える必要がないのだ。


「装備については困るような事態になれば変えるようにしますよ」

「それでは遅いんです。ちょっとした油断から危機的状況に陥って冒険者を続けられなくなった者も多いんですから備えておくことは大切なんですよ」

「あ、はい……」


 そのまま逃げるように冒険者ギルドを後にする。


 ただし、その後で向かうのは街の外へと出る為の門ではない。ギルドから少し離れた場所にある裏路地に隠れると、魔法を発動させる。


『迷宮魔法:転移』


 俺の視界が一瞬で裏路地から迷宮の最下層にある神殿へと変わる。


『おや、今日は来たんだね』


 唯一の話し相手が来たことで上機嫌になった迷宮核(ダンジョンコア)


「数日空けたことは悪かった。けど、会話だけなら毎日のようにしていただろ」


 俺自身のレベルが上がったことにより、迷宮核との間にある繋がりも強化され、色々なことができるようになった。


 その一つとして心の中での会話――念話が可能になった。


 しかし、迷宮核はそれだけでは不服らしい。


『分かってないな~。コミュニケーションっていうのは、こうして直に顔を合わせてした方が効率いいんだよ』

「いや、直に顔を合わせてって……お前、水晶で顔なんてどこにもないじゃん」

『……こういうのは雰囲気なの。僕にとっては水晶そのものが体で、きちんと顔もあるつもりなの! 少しは空気を読みなよ』


 迷宮核から怒られてしまった。


 元々は最初に迷宮主(ダンジョンマスター)になった人物の人格を転写されただけの存在で、役割は迷宮主に代わって迷宮の管理を行うことだった。それが、ここまでの自意識を持ってしまったのは問題ではないのだろうか?


『で、今日はどんな用だい? いつものように貯蓄している魔力の確認から行う?』

「ああ、頼む」


 迷宮核の水晶に数字が表示される。

 そこには、1200万と表示されており、あれから2カ月経ったことにより、それなりに魔力が溜まっていた。

 俺の目的を達成するにはギリギリ足りる量が溜まっていたが、予測していない事態に備える為には余裕が必要だ。しかし、貯める為の時間が足りない。


『足りない? けど、構造変化が起きたばかりだから、急激な貯蓄は無理だよ』


 構造変化――満月の日になると迷宮の構造が一新され、消費された資源だけでなく、宝箱の中味まで補充されるという出来事だ。満月の日に限定されている理由は、分からない。迷宮主にもこの設定は変えられなかった。


 迷宮主のスキルを使えば構造変化を起こすことは可能だが、一部だけならまだしも階層一つ分だけでも周囲への影響は計り知れない。それに構造変化が起こると知らないタイミングで起こしても多くの冒険者が訪れてくれる可能性は低い。


「やっぱり構造変化が起こった次の日が一番訪れているよな」


 構造変化に巻き込まれると高位の冒険者でも無事では済まない。


 そのため、満月の日の次の日に多くの冒険者が補充された宝箱を求めて迷宮へと潜るようになっていた。

 その後は、緩やかになっていくのが迷宮核の表示してくれたグラフによって如実に表れている。


 そして、構造変化は数日前に起こったばかりである。


『ここから次の満月までは得られる魔力が少なくなっていく。もう、時間もそんなに残されていないし、そろそろ行動に移した方がいいんじゃないかな?』


 時間――村長たちへの報復をどうするのか、計画は既に立てられており、迷宮核にはそのことを教えている。下調べは済んでおり、後は村長たちが自滅してくれるのをまつだけでいい。本当に俺は何もしていない。村の周囲を調べただけである。


「正直言って今のステータスなら大抵の事態には対応できるから大丈夫だと思うけど、問題は計画の中にない要素が含まれるかもしれないことなんだよな」


 少なくともギルドからの監視、もしくは介入があるとは考えていた。

 それに領主である伯爵には計画の一部で協力が必要だったため根回しを含めて計画の一部について説明している。協力者だけでなく、監視者が付くことも予想できた。


 予想外の事が起きることは予想できても正確な予測ができなかった。


『うん。それだけのステータスがあれば魔物の方は問題ないよね』




==========

 名前:マルス

 年齢:15歳

 職業:迷宮主(ダンジョンマスター) 冒険者

 性別:男


 レベル:102

 体力:12000

 筋力:13500

 俊敏:13000

 魔力:15550


 スキル:迷宮操作 迷宮適応 迷宮創造

 適性魔法:迷宮魔法 迷宮同調 土

==========




 レベルが一気に上がっていたおかげでステータスが急激に上昇していた。


 そして、新しいスキル迷宮創造を手に入れた。

 迷宮創造は、別に新たな迷宮を造り出すようなスキルではなく、迷宮主である迷宮に新たな階層を造り出すスキルだった。ただ、消費魔力が途方もないので、範囲が極限まで狭い階層をまだ一つしか造っていない。


 もう一つ、新たに得た迷宮同調は、迷宮にいなくても迷宮の様子を把握することができるという魔法で、微量の魔力を消費することによって迷宮核との間に繋がりを得て、迷宮核の把握している迷宮の様子を確認したり、逆に自分の様子を見せたりすることができる。

 迷宮核は、この魔法を利用して暇な時間は俺の様子を観察している。

 おかげで話のネタにされてしまうせいで下手なことができなくなってしまった。

 俺の方で見えなくさせることはできるのだが、会う度に寂しそうな声を上げる迷宮核を前にするとそんなこともできなくなってしまう。


「とりあえず今日は急ぎの用事もないし、村の様子を確認してくるよ」

『うん。行ってらっしゃい』


 最下層を後にすると迷宮魔法:転移を使用して地上に出る。そこは、迷宮の入り口である大岩の裏側にある陰になって見えないところだった。


 今までと違って迷宮の外へ移動できるようになった、というわけではない。この場所も迷宮である。迷宮創造によって、この場所を中心に半径10メートルだけを迷宮の1階として設定させてもらった。転移結晶を設置しているわけでもないので、冒険者にこの場所も迷宮だと知られてしまう心配もない。


「さて……」


 そのまま人目に付かない場所まで移動するとデイトン村まで全速力で駆け抜ける。


 ただし、村へ行くような真似はしない。行き先は少し離れた場所にある森だ。


 森の中を奥まで駆け抜けていくと、そこにはウォーウルフが率いていたのとは比べ物にならない1000匹近い魔物の軍勢が集まっていた。


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