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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第29話 交代

 ――帝都迷宮地下26階。


 坑道を抜けた先には洞窟になっていた。

 ただし、上層にあった洞窟フィールドのような暗い洞窟ではない。


 高い天井と50メートルほど先にある左右の壁は蒼く輝いていた。

 さらに俺たちが立っている場所は幅が10メートルほどの一本道で、道の左右には水が満たされていた。

 川の中央を走る道。


「洞窟フィールドじゃなくて海底洞窟フィールドってところか」

「どうしてこのような場所を造ったのでしょうか?」

「それは、うちの海フィールドと同じようなものだろうな」


 色々と生活に役立つ道具を造る為に必要な素材を手に入れた。

 次に人が求めたのが食生活を豊かにする事だった。


 道の縁に立って水中を覗いてみる。

 水中には様々な魚が自由に泳ぎ回っており、水底には貝のような物も見られる。

 海産物を手に入れるには問題ない場所だ。


「それなら普通に海を造ればよかったのでは?」


 シルビアの疑問ももっともだ。


「転移で来てしまったので分かり辛いかもしれませんが、帝都の近く――馬車で2日ほど移動した場所に海があります。移動方法や保存方法に気を付けていれば帝都は海産物にはそれほど困らないはずです。おそらく海とは違った環境で海産物を手に入れる方法を模索した結果、このような場所を用意したのだと思います」

「なるほど」


 これはこれで面白い場所だ。

 壁自体が発光しているのか明かりには困らない。


 一本道の海底洞窟を進む。


「真っ直ぐ進んで問題ないのか?」

「はい。地図によると分かれ道も3回しかないみたいです」


 シルビアから地図を貰って確認させてもらう。

 分かれ道はあるが、問題ない。


 道を進んで行くと左右に分かれているみたいだが、どちらを選んだ場合でも最後には合流するようになっている。

 これなら迷う心配はない。


 海底洞窟フィールドがどのような場所なのか確かめる為にも一気に駆け抜けるのではなく、ゆっくりとした足取りで進む。


 ――ポチャ。


 左側にある水面から大きな魚が顔を出していた。

 こっちを見て口をパクパクさせている。


「可愛いですね」

「そうか?」


 俺とは対照的にシルビアは魚を見て微笑んでいる。


「いえ、あの魚は魔物みたいです」

「え……」


 魚が魔物である事に気付いたメリッサが教えてくれたが、既に遅かった。

 口の中から水鉄砲が発射されて胸に当たる。


「いた、くはないけど……」


 コートが濡れてしまった。

 服のようにしか見えないが、歴としたSランクの装備品。

 高密度に圧縮された水の弾丸を受けてもダメージがない。


「まったく……ご主人様に攻撃してくるなんて躾のなってない魚ですね」


 攻撃して来た魚の魔物はシルビアの投げたナイフによって串刺しにされていた。

 ナイフには柄の部分にワイヤーが付けられており、投げた後でも回収できるようになっていた。

 ナイフを回収すれば突き刺さっていた魚も回収できるようになっている。


 魚の魔物は、1メートルほどのサイズで鱗が普通の魚よりも硬い事を除けば普通の魚とそれほど変わらない外見をしている。


「掴まえたけど、こいつをどうするんだ?」

「帰ったら調理しましょう」


 サックリ息の根を止めて収納リングに保管する。

 生きたままでは収納できないから最低限殺しておく必要がある。

 調理に関しては、現在は帝都の宿屋で宿泊しているから帰ってからする必要があるが収納していれば保存状態も保持されるので問題ない。


「改めて水中の様子を確認してみると色々な生き物がいますね」

「本当だな」


 魚だけでも同じ種類がいるようには見えない。

 水中を覗いていると橙色をした大きな魚と目があった。

 大きな魚が口を開けて襲い掛かって来た。


「これも美味しそうですね」


 一緒に覗いていたシルビアのナイフが魚に突き刺さっていた。


「容赦ないな」

「襲い掛かって来た時点でわたしにとっては食材でしかありません」

「あ、こんな物はどうですか?」


 水中に手を伸ばしてメリッサが岩にへばり付いていた蛸を引き剥がしていた。

 そのまま両腕で抱えると、蛸は足を動かしているものの逃げるような様子もなく大人しくしていた。


「蛸か」

巨大海魔(ジャイアントクラーケン)と比べれば小さいですが、美味しそうな蛸ですよ」

「あの巨大魔物と大きさを比べること自体が間違っている……」


 全長30メートルを超えるような魔物とサイズを比べることが間違っている。

 あんな巨大な魔物が迷宮内にいれば、それだけで迷宮が崩壊してしまう。


「ま、これだけ大きければ食事には困らないだろうな」


 メリッサの両腕で抱えられていた蛸。

 十分な大きさを誇っていた。


 ツンツンと触ってみる。


「普通の蛸みたいだな」

「ここでは普通の魚と魔物の魚が一緒に生息しているんでしょうか?」

「珍しいけど、それも迷宮の特徴かもな」


 通常、魔物の方が強い。

 そのため弱肉強食が基本な野生では魔物の方が生き残ってしまう。


 共生は難しい。

 だから、こんな風に穏やかな蛸が魔物もいる水中でいる事が珍しい。


「このサイズなら可愛いですよね」

「いや、男の俺にはやっぱり分からない」


 サイズが小さいから可愛いかもしれないが、抱えて笑っていられるような気分にはなれない。

 いつまでもこうしてはいられない。


「それでは……」


 捕まえた蛸を逃がす。

 襲い掛かって来て倒してしまったのなら食材として持って帰るのは仕方ないが、ここへは食材集めに来たわけではないので襲い掛かって来たわけでもない魔物は逃がすようにする。

 水辺に屈んで抱えていた蛸を逃がす。


「きゃっ」


 いきなりメリッサが水中へ落ちた。


「は?」


 突然の事で何が起こったのか分からない。

 しかし、シルビアはしっかりと見ていた。


「大変です。水中から蛸の触手みたいな物がメリッサの足に絡み付いて水中へと引き摺り下ろしてしまいました」

「クソ……!」


 水中へ飛び込む。

 最初は底が見えるほどの浅さしかなかったのにいつの間にか10メートル近くはありそうな深さになっていた。


 メリッサは……いた。

 水底には人よりも大きな蛸がおり、水底から伸ばした触手をメリッサの足に絡み付かせていた。

 魔法を使えば水中でも呼吸ができるようになるし、泳げるようになるのだが自力では泳げないメリッサがいきなり水中へ引きずり込まれた事が原因で暴れているだけで魔法を使うような精神的余裕がない。


『メリッサ、落ち着け』


 念話で落ち着くように言うが、杖で触手を叩くだけだ。

 声を必要としない念話だから水中での会話も可能だ。


 だが、聞き入れてくれる様子がない。仕方ないので触手を斬り飛ばして暴れるメリッサを抱えて水面へ向かう。

 メリッサを地上に上げて呼吸をさせる。


「だ、大丈夫!?」


 慌てた様子のシルビアがメリッサの背中を擦って落ち着かせている。


 俺も座って休憩させてもらう。

 水中で暴れている女性を抱えながら魔物と戦闘をするのは不可能。


 水底にいた大きな蛸が再び襲い掛かって来るような様子はない。

 他にも襲ってくるような魔物がいるかもしれないから警戒する必要がある。


 だが、この海底洞窟フィールドでは泳げないメリッサを連れて行くのは難しい。また、いつ水中へと引きずり込まれるのか分かったものではない。


「メリッサ、アイラ」

「はい?」

『なに?』


 俺たちの様子を見ていたアイラからも返事が届く。


「交代」


 シルビアと俺の二人での探索は難しい。

 イリスを連れてくるわけにはいかない以上、アイラを連れて来るしかない。


 召喚(サモン)でアイラを呼び寄せる。


「ここからはあたしのターン」

「……よろしくお願いします」


 落ち込んだメリッサが体調が回復していないにも関わらず迷宮へ戻って行く。


「さ、行くわよ!」


 対照的に探索にやる気を出しているアイラが先頭を歩く。


アイラIN

メリッサOUT

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