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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第27話 マグマの門番

リオ視点です。

「リーシア!」


 マリーを抱き寄せたままマグマへ投げ出されたリーシアへと手を伸ばす。

 だが、更に大きく揺れた事で俺の体はリーシアとは反対側へと倒れ、リーシアから遠ざかってしまい……


「【神聖抱擁(ディバインブレス)】」


 マグマの上に平然と立っているリーシアの姿を見るしかなかった。


「……マグマの上にも立てるのかよ」

「いや、今まで同じぐらい危険な場所にも立ってきたじゃないですか」

「そう言えば酸の池も自力で横断できたな」


 リーシアがマグマの上でも平然としていられる理由。

 それは、彼女が身に纏う光にあった。


 【神聖抱擁(ディバインブレス)】――絶対不可侵の鎧を身に纏う事ができる。たとえマグマや酸の上でも影響を受ける事無くそこに在ることができる。


「邪魔」


 真っ赤な魚が襲い掛かって来たが、拳を叩き付けると弾け飛んでいた。

 神聖抱擁による防御は、同時に強力な装備による攻撃となっている。


 しかし、そんな姿を改めて見ていると不思議に思わずにはいられない。


「お前って元々は補助系の魔法が得意な魔法使いだったよな」

「今さら何ですか? あのドラゴンから助けてくれたのはリオじゃないですか」


 マグマの蛇が海面を泳ぎながら近付いてくるが、リーシアが踏み付けると弾け飛んでしまう。


 リーシアと初めて会ったのは危険な魔物が出没したという事で引き受けた討伐依頼の時。俺たちのパーティが依頼を引き受ける前にランクの低い冒険者が引き受けてしまったらしく、その救援に向かっていた。そして、当時リーシアが所属していたパーティが先行してしまったランクの低いパーティ。

 そのパーティに追い付いた時、リーシアだけを残して5人のパーティが全滅していた。


 パーティが壊滅した事で行き場を失くしたリーシア。

 補助魔法が得意なリーシアではパーティを組まなければ冒険者としてやって行く事ができない。


 パーティを壊滅させたドラゴンを討伐した張本人という事で安全な街までは俺が連れて行った。その後まで面倒を見るつもりはなかったが、気付けば一緒にいるようになっていた。


 パーティを組んでいるのは問題ない。

 しかし、俺のパーティに入ってから補助魔法を自分に施して殴って蹴る魔法使い兼格闘家に転職していた。


 なぜ?


「私はドラゴンにやられて朦朧とする意識の中、ドラゴンを相手に剣一本で無双しているリオの姿に憧れました。私も前衛職に転向してみようと思うのですが、生憎と武器の扱いには不慣れなので拳を使って戦う事にしました」


 その想いだけで魔法使いから格闘家に転向できるのが凄い。


「次から次へと湧いて来ますね」


 マグマの川からマグマで作られた腕――マグマハンドが20本飛び出してくる。

 川の上を走って腕を砕いて行くリーシア。


「2本そっちへ行きました」


 川スレスレを飛んでボートを掴もうと手を広げている。


「そういうことか」


 マグマハンドの目的は冒険者を攻撃する事ではない。

 川を下っているボートを転覆させる事にある。

 しかし、2本程度なら問題ない。近付いて来た瞬間、ボートに触れる前に魔剣でマグマハンドを砕く。


 マグマの上を走って先行していたリーシアがボートの上に戻って来る。


「ご苦労様」


 リーシアの纏っていた白い光が消える。

 迷宮眷属になって得た【神聖抱擁(ディバインブレス)】は破格の防御能力を有しているが、強力過ぎるが故に味方からの援護も弾いてしまうという欠点がある。


 光が消えたのを確認してから頭を撫でる。


「この道は想像以上に危険です。どうにか対応する事ができていますが、こんな状況では撤退も不可能です」

「それが狙いだろうな」


 俺たちから景品を出すと言っている以上、俺たちが死んでしまっては景品がもらえなくなって意味がない。

 だからギリギリ対応できて消耗してしまうぐらいに調整している。


「そろそろゴールだ」


 マグマの川に終わりが見えた。

 これで、こんな熱い場所ともおさらばだ。


「いえ、最後にマグマドラゴンという魔物が出てきます」

「そうだろうな。本気で足止めをするつもりなら強力な魔物が出してくる」


 終点の手前でマグマが盛り上がり、最後の魔物が姿を現す。


「は? レベル300?」


 姿を現した魔物は――溶熱巨人。

 鋼鉄の巨体にマグマを身に纏っていた。

 マグマドラゴンとは違う。


「……っ、散開!」


 溶熱巨人が手を伸ばしてくる。

 既に見た光景。目的は分かっている。


 ボートから飛び出すと、乗っていたボートが溶熱巨人の手によって転覆させられていた。


 全員、それぞれの方法で空中に留まっている。


「ボート転覆しちゃったけど、どうするの?」


 空中に生み出した仄暗い穴(ダークホール)に足を突っ込んで浮いているソニアが訊ねて来る。


「まともに戦って勝てるような相手か?」


 俺も魔法で足に風を纏って浮いている。


「勝てはするけど……」


 状況が悪すぎる。

 レベル300の魔物が相手であっても自分の迷宮で鍛えた俺たちなら負けない。

 しかし、空中に浮いた状態で足元にはマグマの川が広がっている状況では万全の状態の力を発揮することができない。


 ゴールはすぐ目の前に見えている。

 転移魔法陣は溶熱巨人の大きな体に隠れて見えなくなってしまっているが、飛び込む事ができる。

 だが、そんな逃げるような真似は俺が許さない。


「あのレベルならどうにかできる。俺がぶった斬る」

「分かった」


 ソニアが頷く。

 ただし、動き出したのはピナとリーシア。

 二人が突っ込んで行くのに合わせて溶熱巨人が腕を振るう。

 ただ腕を振るっているだけだが、マグマを纏った状態での攻撃は非常に危険だ。


「【跳躍(ジャンプ)】」


 リーシアの前を走っていたピナに腕が当たる直前、ピナの姿が消える。

 攻撃しようとしていたピナが消えた事によって溶熱巨人は空振ってしまった。


 転移スキルである跳躍を使ってリーシア本人は溶熱巨人の頭の後ろへと移動していた。


風弾(ウィンドショット)


 ピナの手から放たれた風の弾丸が溶熱巨人を吹き飛ばす。


「はぁ!」


 倒れて来た溶熱巨人をリーシアが受け止めている。

 溶岩を纏った状態の相手を受け止めるなど、体が無事では済まされないところだが、既に【神聖抱擁】を纏っているリーシアにダメージはない。


氷結界(アイスフィールド)


 ナナカの魔法によって足元にあったマグマの川が凍り付く。

 これで強固な足場が作られた。

 ついでに溶熱巨人の体も下半身までだが、氷に覆われて動けないようになっている。


「リーシア」


 名前を呼ぶとリーシアが溶熱巨人から離れる。


「デモンソード」


 名前を紡ぐと白銀色に輝いていた刀身が真っ黒に変色する。


「一撃粉砕」


 溶熱巨人までの間に出来上がった氷の道を駆け抜け、巨人の頭に剣を落とす。

 デモンソードの一撃を受けた溶熱巨人の体が粉々に砕け散る。


「……相変わらず強力な一撃だが、魔力をバカ食いするな」


 迷宮主になったおかげで余裕を持てるが、迷宮主になる前だったなら一撃放っただけで気絶してしまうほどの魔力量を必要としている。


 デモンソードは魔力を注げば注ぐほど一撃の破壊力が増して行く。

 最低でも気絶してしまうほどの魔力量を求められてしまうので魔力量に自信のある前衛でなければ使いこなせない剣だ。


 氷に覆われた川の上を歩いて地面のある場所に立つと転移魔法陣へと向かう。


「全員、体調はどうだ?」

「探索に問題はないレベル」

「そうか」


 ショートカットの為に色々と無理をさせてしまった。


「気にしないで下さい。大変な場所ではありましたけど、これはこれで楽しかったんですから」

「そうそう。こんな面白い場所、あたしたちの迷宮にはないからね。どうせなら今度はあたしたちの迷宮にも造らない?」

「それは難しいでしょう。ここまでの大規模な改造には魔力が大量に必要になります。戦争の影響で余力がない状況では難しいです」

「残念」


 何でもないように笑っているピナとマリーだったが、やはり疲れを隠し切れていない。


「せっかくショートカットして時間を短縮したけど、今日の探索はここまでにしよう」

「……いいの?」

「疲れた状態で探索を続ける方が危険だ。今日の所は帰ろう」


 転移魔法陣を使って次の階へ行けば転移結晶がある。

 それを使って帰る。


 俺の決定なら、という事で全員頷いてくれる。


「……じゃあ、わたしは迷宮の最下層に戻る。今の状況、カトレアさんにとっては我慢ならない状況かもしれない」

「ああ。【迷宮操作】が使える二人っていう事でお前とカトレアを防衛に向かわせたけど、可能な限りカトレアには戦わせたくない」


 ストレスを溜め込んだあいつが何をやらかすのか想像したくない。

 俺の為に全力を尽くしてくれるカトレアだけど、俺の為なら何をしてもおかしくないのがカトレアだ。


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