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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第26話 マグマ強襲

リオ視点です。

 ――アリスター迷宮地下27階。


「なになに……」


 転移魔法陣から出てすぐ目の前にある看板。


『ようこそマグマ急流エリアへ。ここでは左右の道を迂回して進む方法と正面の道を選んでショートカットして進むコースがあります。お好きなコースをお選びください』


 そんな言葉が描かれていた。


「あの、明らかに罠なんですけど」

「そうだろうな」


 マリーが言うように罠なのは間違いない。

 先を急ぐ俺たちにとって時間短縮は最も優先される事項だ。


 しかし、相手も同じ状況なのだからそんな事は分かっている。ショートカットコースを選ぶ事が分かっている状況で何も仕掛けていないはずがない。


「お前はどっちを選んだ方がいいと思う?」

「【未来観測】」


 こんなほとんど情報がない状態では使うべきではない。

 しかし、俺たちだけで対処できる未来ならショートカットを選ぶべきだ。


「左右の道を進んだ場合には時間が掛かることになりましたが、問題なく次の階へ辿り着く事ができました」

「そうか」

「ですが、正面のショートカットは危険です」

「危険?」


 それは間違いない。

 なにせショートカットコースの進み方は迷宮が用意したボートに乗ってマグマの上を泳いで進んで行く。今もマグマの上に浮かんでいることから耐久力はあるのだろうが、うっかりとマグマの上に落ちてしまった時には無事では済まされない。


 溜息を吐きながらマリーが【未来観測】の結果を報告してくれる。


「私の【未来観測】は今ある情報から未来に起こる出来事を具体的に観測するスキルです。ソニアが集めてくれた攻略情報からマグマの海から魔物が現れて攻撃して来る光景、マグマそのものが襲ってくる光景が見えました。ですが、最奥にいるボスを倒せば10分ほどで転移魔法陣へ辿り着けるようになっています」

「10分!? それは凄まじい短縮だな!」


 10分で辿り着ける。

 途中で様々な襲撃があったものの誰一人欠ける事無く辿り着けたという結果に繋がっている。


 問題がないのなら早速挑むべきだ。

 時間短縮の件もそうだが、それ以上にこんな面白そうなイベントを逃すべきではない。


「待って下さい。私が言ったのは今まで知られている攻略情報を元に観た光景でしかありません。私たちを誘導するような文面。明らかに今までに知られている以上の危険度になっているはずです」


 案内役(ナビゲーター)であるマリーにそう言われては仕方ない。

 先を急ぎたいし、マグマの急流を楽しみたい気持ちはある。

 しかし、それでも仲間を危険に晒すわけにはいかない。


「……何をしているんですか?」


 迷っているとマリーがボートに乗り込んでいた。

 マリーに続くように他の仲間も次々に乗り込んでいる。


「危険なんじゃないのか?」

「たしかに危険です。ですが、それ以上に主が楽しみしている気持ちが眷属として伝わってきます。なら、全力を以て眷属が主を守るだけです」

「そういうこと」

「あたしたちも面白そうだから乗ってみたかったの」


 ソニアとピナが言う。

 アイリスとリーシアは隣で「仕方ないな」という感じで笑っている。


「おまえら……」


 笑いながら俺もボートに乗る。

 ボートは6人も乗れば不安定に揺れる。が、大きめに造られているボートからは簡単に落とされるような事にはならない。


「もう一人ぐらいなら大丈夫そうだな」


 召喚で迷宮の最下層にいるナナカを呼び寄せる。


「このフィールドだと水に弱い炎系の魔物が多い。お前の力が必要だ」

「……状況は見ていたから分かっている」


 ボートの上から魔物に対処する必要がある以上、魔法が得意なナナカは必要だ。

 防衛の方にはカトレアとボタンが残っていれば問題ない。


「操縦はあたしがやるね」


 ソニアがボートの先端に立つ。

 ボートの先端には水晶が置かれており、それに触れて魔力を流す事によって操縦者となり、操縦者の意思に従って移動が行えるようになっている。


 ボートがマグマの上を進んで行く。


「本当にマグマの上を進んでいる……」


 既にボートが停泊していた場所から30メートル進んでいるが、湖にあるようなボートと同じように進んで行く。


 しかし、油断は禁物だ。

 何が起こるのか分からない。


 マリーの【未来観測】によればマグマの中から魔物が襲ってくることがある。

 常に警戒をしていなければならない。


「魔物が現れたよ」


 先頭にいたソニアが50メートルほど先にマグマの中から顔を出した2匹の魔物が左右にいる事に気付いた。

 その魔物は亀の魔物で、背中に大砲のような物を背負っていた。

 いや、大砲を背負っている。


 大砲から巨大な砲弾が発射される。

 ただの砲弾ではなくマグマの塊みたいな砲弾だ。


「アイリス」

「はいはい」


 俺が左からの攻撃に。

 アイリスが右からの攻撃に対応する。


「フロストソード」


 背中の大剣を引き抜きながら魔剣の発動に必要な言葉を紡ぐ。

 使用者の意思に応えて黒かった刀身が白銀へと色を変える。


「凍て付け」


 魔力を放出させながら剣を振るうと冷気が放たれ、俺たちへと撃たれたマグマの砲弾が凍り付いてマグマの中へと落ちて行く。


 魔剣デモンクライ。

 剣を通して魔力を放つ事で様々な効果を生み出す事ができる魔剣。魔力消費も少なく、魔法がそれほど得意でもない俺にだってマグマの砲弾を凍らせられるほどの冷気を放てるようになれる。

 属性を変える為には剣の名前を紡ぐ必要があるので、1度に使える属性は1つだけという欠点はあるものの十分強力だ。


「撃ち落とせ【彗星(ミーティア)】」


 アイリスの持つ二丁拳銃から放たれた20発の弾丸がマグマの砲弾を粉々に砕いて撃ち落とす。

 彼女が持っている二丁拳銃はただの拳銃ではなく、使用者の魔力を弾丸に変えて魔力が持続する限り無尽蔵に銃弾を撃ち続けることができる拳銃だ。


 眷属になって一気に向上した魔力と新たに手に入れたスキル【百発百中】の効果を利用して砲弾の脆い部分に適切に銃弾を当てて行く。


水弾(アクアショット)


 槍のように飛んで行った水の弾丸が砲弾を撃って来た魔物の体を撃ち抜く。


「助かったよ」

「……わたしも迷宮の最下層に引き籠っていたせいでストレスが溜まっている。少しは暴れさせてほしい」

「魔力残量にさえ気を付けてくれれば暴れても問題ない」


 マグマの亀を倒したところで天井付近を飛んでマグマの鳥が近付いて来る。


水竜(アクアドラゴン)


 ナナカの頭上に大きな水の球体が現れ、ボートの周囲に絡み付くように動いて行くと胴の長い竜の姿へと変わる。

 雄叫びを上げながらマグマの鳥を次々と呑み込んで行くアクアドラゴン。

 マグマの羽が海面と落ち、体は蒸発し何も残らない。


「よし、この調子なら……」

「……衝撃に備えて下さい」


 50メートル先で爆発でも起こったように隆起するマグマの海。

 壁が立ちはだかっているせいで進めずボートを止めたいところだが、ソニアにボートを止める様子はない。


「ソニア?」

「あれ、あたし以外に無効化できる?」


 時間を掛けて凍らせて進む、という方法もあるが、それではショートカットを選んだ意味がない。


仄暗い穴(ダークホール)


 ボートの前方5メートルの位置に黒い球体――ダークホールが生まれる。

 そのままボートを進ませるとダークホールも一緒に前へと移動していく。


 やがてマグマの壁にダークホールが触れた瞬間、ダークホールの周囲にあったマグマが吸い込まれて消えて行く。


 ダークホールの先は、空想箱(イメージボックス)と同じようにスキルで作り出した亜空間に繋がっており、ダークホールの場合は触れた物だけでなく周囲にある物すらも吸い込んで収納してしまう。そのため触れる必要もなくマグマを取り込む事に成功した。


 しかし、その代償にソニアの魔力が大きく消費されてしまった。


「疲れたなら迷宮へ戻ってもいいんだぞ」

「ううん。操作するぐらいの魔力なら残っているから大丈夫」

「分かった」


 ボートに座りながら慎重に進ませて行く。

 仲間の様子を確認するとマリーが青い顔をしていた。


「どうした?」

「……こんな未来は私の【未来観測】では見えなかった」


 落ち着かせる為にマリーを抱き寄せる。

 直後、マグマの海面が大きく揺らめき、立っていたリーシアがマグマの海へと投げ出される。



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