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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第25話 未来観測VS神の運―後編―

マルス視点です

 ――帝都迷宮地下21階。


 地下21階に辿り着いた俺たちの目の前にある光景は、森から坑道へと変わっていた。


「この辺は迷宮の本来の役割を考えると当たり前かな?」


 住居施設、食糧生産。

 次に人が求めたのが生活を豊かにする道具。それを造る為の材料だった。


「さて、どっちに行くべきか」


 目の前には4つの方向に分かれた道。

 先ほどまでいた草原フィールドとは違って行き止まりが造り易い。


 これまでの相手の行動を考えるとかなり本気で勝ちに来ている。

 それに防衛として迷宮にいるはずのカトレアは、リオの為ならばどんな事でもして来る相手だという事は情報屋から話を聞いて分かった。


 完全に道を塞いでくる事も考えられる。


 分かれ道――選択によって大きなタイムロスになる。


「……こっちです」


 シルビアが少し迷ってから一番右端の道を選択する。

 坑道という事で壁は資源の宝庫なのだが、そんな小遣い稼ぎよりも一刻も早く先へ進む事が重要だ。


「最初に少し迷いがありましたけど、進みには迷いがないですね」

「勘、なんだけどね」

「勘!?」


 分かれ道の行き先を勘で決めているというシルビアにメリッサが驚いていた。


「もちろん適当に選んでいるわけじゃないわよ」


 シルビアには1年ちょっととはいえ、一緒に探索して来た経験がある。魔物の気配を遠方から感じ取り、罠の有無をスキルで探知する。そんな経験から適切な道を選び取っている。


 ただし、それだけではない。


「これが神の運(ゴッドラック)の本当の力か」

「はい。スキルを手に入れてから本格的な探索は今回が初めてですから正しいという保証はありません」


 自信なさそうに言うシルビア。


 しかし、坑道フィールドに来てから神の運も使用するように言ったが、今のところ行き止まりに行き当たるような事もなければ罠らしい物もない。


 と、安心していると道の端に置かれた大岩の陰から魔物が姿を現す。


 ロックリザード。

 体が岩のように固い蜥蜴の魔物で鉱山や荒野のような場所を好んで生活しており、人間を見つけると固い体を活かして体当たりをしてくる。迎撃しようにも防御力が高いため受け止めるのも一撃で倒すのも難しい。


 とはいえ……


風弾(ウィンドショット)


 メリッサの手から放たれた風の弾丸がロックリザードの額を貫き、固く重たい体が倒れてしまう。


 それからは、たった1体の魔物と遭遇しただけで問題なく進んで行く。


 元々、鉱山フィールドでは侵入して来た冒険者に採掘作業をさせて足止めをさせているのが目的なため魔物はそこまで多くはない。

 しかし、1体の魔物としか遭遇しないというのは少なすぎる。


「ここにも神の運の影響が出ているな」


 魔物との遭遇率にも影響を及ぼしている。


 破格の影響力を持つスキルだが、スキルである以上気を付けなくてはならない事がある。


「シルビア、魔力が少なくなってきたらすぐに言えよ」

「大丈夫です。魔力回復用のポーションもたくさん持ってきているので魔力残量が不安になって来たら飲むようにするので大丈夫です」


 ただし、短時間に何度も服用していると回復効果が乏しくなる。

 無限に回復できるというわけではない。


 無理はさせたくないのだが、探索をメインに行うという事でシルビアがはりきっているので止められずにいる。


 探索を止めるものは何もない。

 このまま探索を続けていれば地下21階の探索もあっという間に終わりそうだ。


「そっちはどうだ?」

『こっちの迷宮も順調に探索されている。こっちの方でも迷路を複雑にしているけど、1番適切な道だけを選ばれている。たぶん向こうには分かれ道の先に何があるのか分かる人物がいる。おかげでこっちは現在地下25階の探索を始められたところ』


 報告を聞いたところで何ができるわけでもないのだが、向こうの状況を聞かずにはいられない。


「約4階層分の差か」


 これは追い付くのが厳しい。

 向こうにも迷路が意味を成していないとなると別の対策によって足止めをする必要がある。


「地下27階の用意はできているんだろうな」

『できてはいるけど……本気でこんな物を造っておいたの?』

「当然」


 万が一にも俺が生きている間に誰かを最下層へ招くわけにはいかない。

 あらかじめ侵入者撃退用の方法は考えてある。


「地下27階というと私たちも以前に挑んだ事がある火山フィールドにあるマグマ急流エリアですよね」


 侵入者撃退方法については、昨日の内にイリスへ伝えただけ。

 実際、対応する事になるのはイリスだけなので一人へ伝えるだけで事足りる。


 メリッサが言うようにイリスが仲間になったばかりの頃にマグマ急流エリアへは挑んでいるので、元々がどのような場所だったのかイリスも知っているので侵入者撃退用への改造も簡単だった。


『近くで見ていたあたしが言うのもなんだけど、これって難易度を高くし過ぎじゃない? 下手をすれば死人が出るかもしれないわよ』


 迷宮の最下層でする事がないアイラは改造している様子を近くで見ていたらしい。


「そんな改造案をいつの間に考えていたんですか?」


 最古参であるシルビアが聞いてくる。

 改造している様子を見ていたわけではないが、アイラの声から尋常ではない事を悟ったらしい。


「お前がパーティに加わる前だな。一人だったから暇な時間が多かったんだよ。時間を潰すとしたら迷宮の改造案を色々と考えるのが最適で、つい色々と用意してしまったんだ」


 中でもアトラクションエリアとしても使える27階や37階には思い付く限りの色々な物を用意させてもらった。

 最大限まで難易度を上げた状態で迷宮を攻略されたなら迷宮主の座を明け渡しても仕方ないと思えるレベルだ。


 ただ、改造にはかなりの魔力を使ってしまった。


「地下26階はほぼ素通りさせろ」

『いいの?』

「問題ない。本命は地下27階だ。26階で無駄な魔力を消費してしまうよりはいい」

『けど、改造している様子を見ていたから分かっているんだけど、あれってマグマ急流を選ばないと意味がないものよね』


 アイラが言うように改造のほとんどはマグマに対して行っている。


 地下27階は、マグマを急流してショートカットするコースと大きく左右へ迂回しながら岩肌に囲まれた道を進むコースが存在する。

 時間をかけてもいいから岩道を選ばれてしまうと意味がない。


 けど、リオならショートカットを選んでくれるという確信があった。


「あいつは、先を急いでいる。それに面白そうな事があれば首を突っ込まずにはいられない性格らしい」


 情報屋から聞いた人物像からショートカットを選んでくれるはずだ。


 帝都でも受けてくれる冒険者が少なくて依頼が処理できず冒険者ギルドが困るような依頼でも面白そうな引き受ける事があったらしい。


 現にギルドから借金をした冒険者が逃亡し、その冒険者を捕縛するという誰も引き受けなかった面倒そうな依頼を引き受けていた。実際、調査に何日も費やし、帝都からかなり離れた村で捕縛に成功したらしい。


 報酬も少なく、解決に時間の掛かる依頼。


 しかし、本人に困った様子はなく、笑っていたらしい。


 冒険者ギルドからの報酬は少なかったが、依頼先で仲間を見つける事ができたから満足だと酒の席で笑っていた。


 帝都の迷宮の地図を見せてもらったが、アリスターの迷宮のようなアトラクション風のエリアは存在しない。

 面白そうな物があれば喰い付く。


「着きました」


 いつの間にか地下22階へ続く転移魔法陣の前に辿り着いていた。

 罠に当たる事もなく、魔物もメリッサがこっそりと倒していた3体のみ。


「さて、足止めができている内に攻略を進めることにしよう」


シルビアの迷路対策

勘と【神の運】で強化した運を頼りに進む。

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