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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第24話 未来観測VS神の運―前編―

マリー視点です。

 ――アリスター迷宮地下24階。


 24階の探索も中盤に差し掛かったところで私はスキルを使用する。


「【未来観測(フーチャーヴィジョン)】」


 目の前には3本の坑道。

 ソニアが集めてくれた攻略情報など様々な情報を元にそれぞれの道を進んだ結果、どのような未来が待っている事になっているのか観測する。


 脳内で展開される3種類の結末。


「こっちです」


 私はスキルの結果として左の道が正解である事を伝える。


「あれ? でも地図だとそっちはかなり遠回りになっているけど……」

「たしかに地図だと右も正面も正解のように描いてありますが、向こうは私たちと同じように道を塞ぐ方向で動いています」


 どの道を選んだとしても行き当たるのは行き止まり。


「私たちが先にやった足止めの方法ですけど、こっちがやられてしまうと攻略は簡単なんですけど面倒ですね」

「そう言うな。勝負を仕掛けたうえで純粋な攻略速度を競っているわけじゃないのは俺のせいだからな」


 いつものようにピナを先頭に迷宮を進む。


 ……あれ?


「おい、大丈夫か?」

「だいじょう、ぶです……」

「明らかに顔色が悪くなっているぞ」


 いつの間にかリオに抱きかかえられていた。

 額に当てられた手が冷たくて気持ちいい。


「熱があるわけじゃないが……」

「おそらくスキルの使い過ぎが考えられます」


 私の体を観察していたリーシアの診断。


『私もスキルの使い過ぎだと思います』


 さらにパーティの回復役であるボタンから言われれば間違いない。


「今日は、まだ4回目です」


 どうにか自分の力で立ち上がる。

 未来観測は魔力の消費はそこまでではないものの未来を覗き見る度に頭痛に襲われていた。

 そのため、これまでは1度使えば少し時間を開けるようにしていた。

 それが今日だけで4回。


 いや、それだけじゃない。


「一昨日からで何回使用している?」

「……24回です」


 念のために上層でも階層を下りる度に【未来観測】を使用して危険や見落としがないのか確認するようにしていた。

 おかげで24回目にして限界が訪れてしまった。


 いや、まだ使える。

 私が頭の痛みにさえ耐えていればいい。


「悪いが、そこまで体調が悪いならスキルの使用は禁止する。戦闘も無理そうなら宿屋へ戻る事を指示する。悪いが、俺たちには足手纏いを連れて行くような余裕はない」

「どう、して……」

「お前が無理をしてまで尽くしてくれる理由については分かっているつもりだ。たしかに俺は、俺自身の目的の為に迷宮主相手の交渉で優位に立つ為に勝負を持ち掛けた。だが、眷属を犠牲にしてまで勝つ必要のある戦いなんかじゃない。負けた場合には、普通に交渉する事になるだろうが、それでもできないわけじゃない。お前を失うよりは何倍もマシだ」

「けど……!」


 勝負に勝って迷宮主に要求を突き付けるつもりでいた。

 その為に私たち全員……攻略にはカトレアさん以外の全員の力を求めている事は分かっていた。


「私は、あなたの役に立ちたいの……」

「その気持ちだけで十分だ」


 頭をポンポンと撫でられていた。

 卑怯だ。そんな風にされたら従うしかない。


「行きます」


 私の役目はあくまでも未来を観測する事。

 他にも交渉も私の役割だけど、迷宮攻略においては交渉の必要性はない。


「しかし、こっちでいいんだよな」

「はい、間違いありません」

「でも行き止まりみたいだよ」


 先頭を歩いていたピナが岩壁に道が塞がれている事に気付いて足を止める。


「他の道も行き止まりなんだよね」

「そうです」

「なら、俺の出番だな」


 迷宮の壁は本来なら壊す事ができない。

 しかし、その不可能を可能にしてしまうのが迷宮主だ。

 リオさんが剣を振るうと道を塞いでいた壁が消えて道が現れる。


「この場所の壁が一番薄かったんです」


 右と正面の道は途中で合流しており、その先の道が塞がれていた。

 二つの道を選んだ先にある壁の薄さを考慮して、どちらを進んだ方がいいのか判断した。


「ありがとう」

「いいえ……こうして道を見極める為に付いて来たんですから」


 私の【未来観測】は多くの情報を集めれば集めるほど観測する未来は正確性を増して行く。

 その集めるべき情報には、ギルドや冒険者から得られた攻略情報だけでなく、こうして自分の足で歩いて得られた音の反響、空気の流れ方、魔力の反応なども含まれる。


 攻略情報だけを元に侵攻ルートを選ぶだけなら私は防衛側でもよかった。


 けど、こうして戦闘能力は低くても一緒に行動する事がリオの役に立っている。


「行こうか」

「はい。もうすぐ24階の探索も終わります」


 ここまでは順調に進んでいる。


「あの、リオさんは私を仲間にした事を後悔していませんか?」

「いきなりどうした?」

「こんなにスキルを連続で使用したのが初めてなせいか昨日の夜に初めて会った時の事を夢で見たんです。だから、あの時言ったように迷惑を掛けてしまっている自分が情けないんです」


 宮廷関係で色々とゴタゴタがあった。

 原因の主な理由は私とピナ――元詐欺師と元盗賊だ。


 皇帝になる事を宣言した後、リオさんは皇妃にカトレアさんを据える事を承諾させた。これには大きく反対する者はいなかった。元々、貴族として教育は受けているし、カトレアさんが放つ気品に誰もが息を呑んでいた。


 しかし、同時に発表された側室には反対する者がいた。

 カトレアさん以外のパーティメンバー全員だ。


 平民というだけでなく犯罪者だった者まで混ざっている。

 大きく騒ぎ立てる者がいた事もあって、その光景を見ていたパーティメンバーの中には何人かリオさんから離れようと考える者がいたが……


『こいつらが側室になった事で何か大きな問題が発生したなら全て俺の責任だ。それに仲間にする時に俺が全力で守ると約束した。今さら捨てるなんて真似が皇帝としてできるわけがないだろ』


 ……うん、分かっていた。

 リオさんが望むなら行く宛なんてないけど、どこかへ行く事も考えていたけど私たちがいる場所はリオさんの傍以外にはあり得ない。


 私は、私の【交渉】でリオさんとカトレアさんを手助けすると約束した。


「おっ、そろそろ24階も終わりみたいだな」

「よかったです」


 スキルを使用する度に頭痛が酷くなってくるので精度に自信がなくなり始めていたけど、無事に下層へと転移魔法陣がある場所へ辿り着けてよかった。

 近付いて来た魔物を退治する為に離れていたソニアとアイリスも合流する。

 全員で転移魔法陣に乗る。


 魔力を流すと一瞬で目の前の景色が変わり……ほとんど変わらないけど、真っ直ぐに正面から入って来たはずの入口が少し進んだところで左右に分かれている事から下の階層へ移動したという事が分かる。


「さて、どっちへ進むべきだと思う?」

「ちょっと待って下さい」


 地図を広げて確認する。

 スキルを使用して未来を観測するのは、もっと地下25階の情報を集めてからの方が確実だ。


 地図の方もある程度は信用できる。

 地下24階であったように壁を新たに造って行き止まりを造る事はできるが、壁を新たに造り出すだけで魔力を消費する。どれだけの余裕があるのか分からないけど壁を簡単に壊せるリオさんがいる状況では何度も造れるような代物ではない。


『……急いで進んでください!』


 焦ったカトレアさんの念話が届く。


「どうした?」

『今、彼らが地下21階に到達したところなんですが、物凄い勢いで攻略を進めています』

「なに!?」

『坑道という薄暗い場所で迷わせる為に用意した迷路が全く意味を成していません。最短距離を真っ直ぐに進んでいます』

「え……?」


 この迷宮と同じように地下21階から始まる坑道フィールドは、あらかじめ複雑な迷路になるよう皆でルートを考えた。

 それが、簡単に突破されている?



マリーの迷路対策

【未来観測】を利用して分かれ道の先に何があるのか確認する。

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