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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第18話 俺たちのアドバンテージ

「メリッサ、お前は受付で地図を買いに行って来い」

「はい」


 地下12階に辿り着いた瞬間、近くにあった転移結晶を使って地上へ戻って来ると地図を購入する為にメリッサを向かわせる。


 このタイムロスは痛い。


 それに初めて利用する冒険者ギルド。

 地図を購入してもどこまで信用できるのか分からない。


 俺とシルビアにはやる事があるのでこの場で待機。


「それで、何の用ですか?」


 振り向かずに後ろにいる人物に訊ねる。


「おや、気付いていたかい?」


 現れたのは黒いローブを着た男性。


「俺が気付く事は分かっていましたよね」

「そうだね。監視はしていたけど、気配を隠していたわけじゃない。それなりに優秀な冒険者なら気付けなくてはいけない」


 一種のテストだったのかもしれない。

 地上へ戻ってから誰かに見られているような気配がしていたのでギルドへ戻って来てすぐに接触する事を考えていた。


 しかし、監視されている時から分かっていた事だが、こうして面と向かって対峙しても敵意があるようには感じられないので敵対するつもりはないみたいだ。


「それで、本当にどういうつもりですか?」

「監視していた事は謝るよ。けど、君みたいな力のある冒険者がいきなり来れば警戒するのは当たり前なんだ。今回は、僕が接触する事になったけど、他にも君たちの事が気になっている連中はたくさんあるよ」


 たしかに複数の気配が感じられた。

 迷宮まで追って来るつもりはないのかギルドや街中でしか感じられないのでいいが、あまり見られ続けるのはいい気分ではない。


「しかもカトレアが連れて来た冒険者だ。という事は、リオ……グロリオとも知り合いっていう事だろう」

「グロリオ――」


 冒険者としての名前である『リオ』ではなく、本名である『グロリオ』と呼んでいた。

 現在の立場まで詳しく知っている可能性がある。


「たしかにリオは自分の立場を上手く隠しているけど、今年は冒険者としての活動をほとんどしていない。元からハーレムパーティで目立っていただけに不審がる連中はたくさんいるんだ。別にやましい気持ちがあるわけじゃないけど、良くも悪くも彼らは目立っていた。そんな連中が姿を見せていなければ何をしているのか気にしているのが情報屋だよ」


 たしかにアリスターのギルドで見た時も8人もの女性を侍らせていたという事で目立っていた。

 あのパーティではどうしても目立ってしまう。


「だからギルド職員の末端とかは知らないだろうけど、僕たち情報屋は彼らがここ最近、帝都にある帝城に何度も出入りをしているのを確認している。そこから帝城で最近あった出来事を考えれば自然とリオの本当の立場も分かって来る。そこまで考えられないような奴は情報屋としては二流……いや、情報屋失格と言ってもいいね。そして、君たちはリオの本当の立場を知っているはずだ」

「ええ、あなたが思っているように俺たちは冒険者ではなく、本来の立場からある依頼を受けて活動しています」


 目の前にいる情報屋と思しき相手はそれなりに優秀な相手みたいだ。

 さすがに昨日の今日では来たばかりの俺たちの素性まで調べる事はできなかったみたいだが、ここで誤魔化したところでいずれは春先に起こった戦争で活躍した冒険者だという事はバレてしまう。

 なので、せめて『皇帝』になる男から依頼を受けられる程度には優秀な冒険者である事は明言しておく。


「昨日の君たちがギルドでどんな行動をしていたのかは調べてある。初めての迷宮に挑むのに事前の情報収集を一切していなかったみたいだね。それだけ余裕があったのかな?」


 余裕があったわけではない。

 事前に取り決めたルールを信用し過ぎたせいで情報収集を考えていなかっただけだ。

 それに傍にカトレアさんたちがいたせいで、せっかく地図の販売などをしている冒険者ギルドにいるのに情報収集をするという考えがなかった。


「それとも実力があったから最初の内はパワープレイでも問題ないと判断したのかな?」

「はい。地図無しでも昨日の内に地下10階までの探索は終えました」

「けど、地図を買いに女の子を一人行かせたところを見るに地下11階の探索をしている内に地図が必要になった、っていうところかな?」


 情報屋の考えとしては草原フィールドを探索している内に迷ってしまったというところなんだろうが、実際には先を急ぐ為に必要としている。


 だから、情報屋の言葉に付き合っているような時間的余裕はない。


「それよりも本題に入りましょう」

「気付いていたみたいだね」


 情報屋が指に嵌めていた収納リングから丸められた紙を取り出した。


「これを確認してみるといいよ」


 紙を渡して来たので中を確認してみる。

 中には迷宮内の構造について描かれており、右上に『11』と描かれている事とうろ覚えであるがさっきまで走って来た光景から考えて地下11階の地図だという事が分かる。


「君たちは地図を必要としているはずだ。地下30階までの地図を用意してある。これを売ろうじゃないか」

「……法外な値段でなければ言い値で買い取ります」


 今は先を急ぐ必要がある。

 自分の失態が招いたしまった出費だと考えて言い値で買うことにする。

 下手な交渉は時間を消費するだけだ。


「いいのかい?」

「この地図はギルドで売っている地図よりも細かく描かれています」


 罠の位置、魔物の分布、採取可能な素材の位置。

 迷宮の探索をするうえで必要と思われる情報がいくつも描かれていた。


 ギルドで販売している地図では入口と出口。それから命に関わるような危険な魔物が出現する場所が描かれているだけで、細かい情報は描かれていない。そこまで詳しい情報を得るには地図の販売を専門にしている地図屋と交渉する必要がある。


 ギルドも地図屋の利益を奪わない為に詳しい地図を販売しないようにしている。メリッサに買いに行かせた地図では詳しい情報は得られない。


「……1枚で金貨1枚だけど、大丈夫かい?」

「はい」


 収納リングから金貨19枚を取り出して渡し、地下12階以降の地図を貰える請求する。


 俺は初めて迷宮に挑む時に買っただけだが、その時はアリスターの冒険者ギルドで銅貨10枚を請求された。その事を考えれば情報屋が要求した金額は1000倍もの価値が地図にあることになる。詳細な情報が乗っている事を考えてもふっかけられている。


 しかし、こっちは先を急ぐ必要がある。

 時間以上に価値のある物はない。


「やっぱり多少のリスクを負ってでも君たちに接触してみた甲斐があったよ」


 そう言って情報屋が地図を渡して俺たちから離れて行く。

 近くに誰もいない事を確認して呟く。


「運が良かったのは、こっちですよ」

「運が良かったのは正しいですけど、偶然ではないんですよね」


 シルビアが言うように偶然ではない。


 神の運(ゴッドラック)×2。


 誰かに見られている感覚はあったし、向こうから何らかの接触がある事を期待して地上へ戻って来る前に俺とシルビアの二人で神の運を発動させていた。

 結果、運良く優秀な情報屋が接触してくれた。


 偶然ではあるのだが、そうなるように運を向上させていた。


「それでは、こちらはどうしますか?」


 ギルドの受付で迷宮の地図を購入したメリッサが戻って来る。


「そっちはそっちで参考にする」


 情報屋から購入した地図は、地図屋と呼ばれる地図作成を専門にしている冒険者が個人で作り上げた物。


 ギルドから購入した地図は、多くの地図屋から情報を統合させて安全性を優先させた正確な地図。地図屋にも優秀な者とそうでない者がいる。何事にも見落としがあるので安全性で言えばギルドが販売している地図の方が優秀な場合がある。


 二つの地図を見比べる事で分かる事もあるかもしれない。


「ここからの行動だけど、シルビアが地図を頭に叩き込んで先頭を走れ」

「今までもそうしていましたよね」


 斥候役であるシルビアが周囲の警戒をしながら先頭を走る。

 それが今までの探索スタイルだった。


「いや、今までと違ってお前は先へ進む事だけを考えろ。敵が近付いて来るような事があれば俺とメリッサで対応する。今は少しでも先へ進む必要がある」

「今からでも追い付けるでしょうか?」

『こっちは既に地下14階の探索を始めている』


 リオたちの行動を監視しているイリスからの報告。

 行き先が分かっている者と分かっていない者では、それだけの差が付いてしまった。


「仕方ない。遅れてしまった以上、俺たちは俺たちのアドバンテージを活かして進むしかない」


 俺たちのアドバンテージ――それは相手よりも高いステータス。

 迷宮の深さもあって俺たちの方がステータスは上だ。それを活かしてパワープレイで先へ進むしか勝つ方法を見出す事ができない。

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