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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第15話 極上肉(牛)

 地下10階の最奥に辿り着いた。

 目の前には頑丈そうな金属製の扉がある。


「そう言えば、今までわたしたちの迷宮でボスには挑んだ事がありませんでしたけど、この先にボスがいるんですよね」


 シルビアが言うように目の前にある頑丈な扉はボス部屋である事を分かり易くする為の扉。

 いや、地下5階で出口を塞いでいた件もあるから一概にボス部屋であるとは言えないのかもしれないが、触ってみた感触からアリスターの迷宮のボス部屋前にある扉と変わらない事が分かる。


 地下5階以降では、足止めらしい足止めもなく無事に辿り着く事ができた。


「そうだ。この扉の向こうにボスがいる」

「今までボスには挑まなかったのはどうしてですか?」


 ボス部屋から出て来てしまったボスを退治した事はあるもののボス部屋へ挑んだ事は今まで一度もなかった。

 理由は単純。


「メリット以上にデメリットの方が大きいからな」


 メリットは、ボスを倒すことによって得られる普段よりも多い経験値。それに希少な素材が手に入るし、稀に宝箱をドロップする事がある。これは、俺たち迷宮関係者が討伐した時も変わらない。


 デメリットは、そんなメリットの多い魔物を呼び出す為の魔力。宝箱を落とす確率も結構低いので、レアなアイテムを手に入れる為に何度も粘ってしまうと迷宮操作:宝箱(トレジャーボックス)を使用した方が手っ取り早い可能性が高い。


 なので、総合的に判断すれば旨味がない。


 それに先へ進むだけならアリスターの迷宮内ならば転移でどこへでも行ける。

 だが、帝都の迷宮ではボスを倒さなければ先へは進めない。


「俺も初めてのボス討伐だ。勝手が分からないからサポートよろしく」

「はい」

「かしこまりました」


 シルビアとメリッサの二人から了承も得られたので重たい扉を押し開く。

 中は50メートルぐらいの広さがあり、洞窟の通路とは違って動き回って戦う事ができるようになっている。


 ボス部屋の中央にいるのはミノタウロス。

 牛の顔をした、巨体を持つ人間で体長は3メートル近くある。

 そんな魔物が2本の足でしっかりと立って、その手には大きな斧が握られて排除するべき侵入者である俺たちへと向けられていた。


 ボス部屋にいる魔物を倒さなければ下層へ続く転移魔法陣が起動しないようになっており、次の階層へと進もうとしている冒険者は必ずボスを倒さなければならない。だが、ボス部屋の入口は開きっぱなしになっており、逃げられないというわけではないので何度も挑戦していいようになっている。


 迷宮の目的は訪れた侵入者から魔力を得る事。

 こうして強い魔物を配置する事によって侵入を阻み、何度も挑戦させる事がボスを配置する事が目的。


 弱くても簡単に倒されてしまって意味がない、強すぎると迷宮への挑戦を諦めて挑まなくなってしまう。

 少しだけ強く、迷宮で魔物を倒してレベルを上げれば倒せる。

 それぐらいの強さに設定するのがベストだ。


「ミノタウロスか」


 即座に鑑定を行う。

 レベルは10。自分たちを基準に考えればそこまで強くはない。


「地下5階での妨害もありましたからボスには強い魔物でも配置しているのかと思いましたが、そうでもないですね」

「それはどうでしょうか?」


 メリッサは気付いたみたいだ。


 俺たちにとっては敵ではない。

 しかし、地下10階のボスに挑むような新人にとっては強敵だ。


「たぶんだけど、さっき遭った子供たちなら絶対に勝てないレベルだ」


 こんな強敵を普段から配置しているか?


 答えは、否である。

 俺たちを足止めする為に強い魔物をボスとして用意した。しかし、あまりに強すぎると本来の迷宮からかけ離れてしまうのでギリギリ出て来てもおかしくない強さに抑えた。その証拠にミノタウロス自身は強い魔物だが、レベルは最低限に抑えられている。


 ある程度ルールを守ろうという意思はあるみたいだ。


「斬るか」


 鞘から剣を抜く。


 その姿を見たミノタウロスが斧を手に突っ込んでくる。

 身を翻してミノタウロスの突進を回避する。そのまま奥にいるシルビアへと向かって行くが、回避すると同時に斬られて腕から血が流れる。


「久しぶりの大きな牛肉です。美味しく料理してあげますから落ち着いて下さい」


 笑顔でゆっくりと近付く。

 その表情は、はっきり言って俺でも近付きたくない料理人の物であった。


「ちょっと待った!」

「何ですか? これから食材を解体しないといけないんです」


 シルビアにとってミノタウロスは既にボスではなく食材として見做されていた。

 俺も食材として倒してしまう事に反対はない。


 だが、どうせなら極上品を狙いたい。


「ボスは倒した後でレアなアイテムをドロップする事がある」


 それは迷宮に何度も挑んでもらおうと迷宮主が用意した物だ。

 今の状況では、カトレアさんたちが確率を操作しているせいでレアなアイテムをドロップするような事はないだろうが、既に出現してしまったミノタウロスそのものにまで干渉するのは難しいはずだ。


「どういう事ですか?」

「ボスの魔物そのものがレアな素材になる事がある。通常のミノタウロスなら普通の牛肉が得られるんだろうけど、レアなら極上肉(牛)になる事がある」


 狙うなら極上肉が欲しい。

 自分たちの迷宮で何度もボスに挑むような真似はできない。


 だが、倒さなければいけない相手が目の前にいるような状況ならレアなアイテムを狙うべきだ。


「だから、神の運(ゴッドラック)を使え」

「え、あのスキルってこういう状況でも有効なんですか?」


 その辺は俺にも分からない。


 スキルの効果説明を確認しても単純に『運が上昇する』と書いてあるだけで具体的な発動条件なんかが書いてあるわけではない。


 こういう曖昧な記述は珍しくもないので、自分だけのスキルを手に入れると最低限の知識だけを得て自分なりに模索しながら使い方を把握する必要がある。

 シルビアの場合、そこまで確認が及んでいなかった。


「せっかくだから運試しにやってみよう」

「はい」


 次の瞬間、ミノタウロスの首が地面に落ちる。

 肉を得るなら一番簡単な方法だな。


「どれどれ」


 鑑定を使用してミノタウロスの状態を確認する。


 既に『ミノタウロス』ではなく、『上質肉(牛)』に変わっていた。


「さすがに極上肉は望みすぎだったか」

「ですが、上質肉でも高値で取引されるはずです」

「そうですね。お金に余裕のある今の生活なら買えなくはないんですけど、村娘の金銭感覚が残っているのか手を出し辛いんですよね」


 メリッサは元から相場にも詳しく、シルビアも食材関係に関しては普段から買い出しを行っているので詳しい。


「ということは、今まで食べた事はなかったのか?」

「いえ、パーティなどの時には上等肉を使用していました。さすがに極上肉は、市場に出回らないので手に入らなかったので、極上肉が手に入ればよかったんですけど」


 手に入らなかった物は仕方ない。

 ちなみにレアなアイテムの入った宝箱は出現しない。運が良ければ、出現する手はずになっているはずなのだが、そんな様子がない事からここで宝箱を出すつもりがないみたいだ。


「これはさっさと先へ進んだ方がいいかもな」

『そうね。そっちがモタモタしている間にリオたちはとっくに地下11階へ到達して今日の探索を諦めたわ』


 リオたちの動向を監視していたアイラからの報告が聞こえる。


「どれくらい前の話だ」

『だいたい1時間前』

『ただし、地下11階が草原フィールドである事を確認するとすぐに帰ったけどね』

「こっちもそろそろ帰ることにするよ」


 まだ初日。

 そこまで急いで攻略を進める必要もない。


 ボスを倒した事で起動して光っている転移魔法陣の上に乗る。

 目の前の景色が一瞬で変わり、薄暗い洞窟から夕陽に照らされた草原へと変わる。


「迷宮の構造についてはセオリー通りみたいだな」

「今日はどうしますか?」

「地下11階の様子は確認できたし、一旦帰ることにしよう」


 10メートルほど離れた場所に設置されていた転移結晶に近付く。

 これを使えば迷宮の地下1階まで戻る事ができる。


『こっちの迷宮でも攻略に参加していた5人は帰っているからね。無難な判断じゃないかな?』


 ……ん、5人?


攻略に5人

防衛に3人

リオパーティは9人です。

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