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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第2章 捜索依頼
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第11話 地下77階

 ――地下77階。


 その階層は天井が高く、壁も床も天井も全てが真っ白に染め上げられていた。縁だけが僅かに黒くなっており、そこに通路や部屋があると知らせてくれる。


 そんな階層の転移水晶の前に転移した。

 足元には上階から転移してくる為の魔法陣がある。すぐ傍には下の階へ行くための魔法陣もあった。先を急ぐ者なら地下77階の探索をせずに78階へと向かってしまうかもしれない。


 だが、俺の用事があるのは地下77階にある中身がランダムに変わる宝箱だ。


「で、どこから入ればいいんだ?」


 目の前には5本の道が転移結晶を中心に広がっており、その間には部屋が設置されており、正面には丁寧に扉も用意されていた。


 俺の疑問に答えてくれたのは最下層から様子を見守っている迷宮核だ。


『中にいるボスは全く別の魔物だから、どの部屋から入っても結果はあまり変わらないと思うよ』

「どこの部屋に、どんな魔物が出てくるか分かるか?」

『残念だけど、地下77階に関しては僕だって何も知らされていないからアドバイスは何もできないと思うよ』


 出てくる魔物もランダムなら、宝箱から得られる宝物もランダム。


 どうして、そんな部屋を造ってしまったのか?


 俺の様子から何を思っていたのか察した迷宮核が教えてくれる。


『造った当時は暇をしていたんだよ。迷宮主みたいなステータスになっちゃうとまともに戦えるような相手なんてそうそういないし、そうなっちゃうと自分で用意する方が手っ取り早かったんだ。で、せっかくだからご褒美も用意しようっていうことになってレア度Sの財宝を用意したんだ』


 ただ、出てくる魔物も得られる財宝も固定では楽しみが持続しない。

 そこで、ランダム性を持たせて法則性も無くすことによって楽しみを用意したとのことだ。


「天の羅針盤が欲しい身としては、普通にレア度Sが出てくる宝箱が欲しいところだけどな」

『そうそう上手くはいかないっていうことだよ』


 まあ、既にいない人物に文句を言ったところで仕方ない。


「さて、どの部屋から入るか」


 外から見る限りでは、どの部屋も同じようにしか見えない。


「ま、どれでも同じか」


 とりあえず転移してきた時に正面にあった部屋に入ることにする。

 部屋の中に入ると奥に宝箱があるのが見えた。しかし、部屋の主を倒さなければ手に入らないことは事前に聞いている。


「さて、何が出てくるのかな?」


 いつの間にかワクワクしながら待っていると、真っ白な部屋の奥で黒い靄のような物が一か所に集まり、巨大な人影へと形を変える。


「これは、また……」


 現れた主は全長が3メートルほどある牛の頭を持ったミノタウロス。


「ミノタウロスって黒かったかな?」


 直接見たことはなかったが、話に聞く限り二本の足で立つ牛の巨人で、興奮すると赤かった肌がさらに紅くなると聞いていた。他にも亜種や上位種などによって肌の色が変わることがあるらしい。

 だが、黒い肌に金色のラインが何本も走ったミノタウロスは聞いたことがなかった。


「って、そんなこと考えている場合じゃなかった」


 侵入者を排除するべく黒いミノタウロスが迫り、手に持っていた巨大な斧を振りかぶっていた。


「ふっ」


 即座に神剣を鞘から抜いて斧を受け止めるように構える。


「……って!」


 あまりの強さに耐えられず弾き飛ばされる。


 どうにか態勢を整えながら床に足を付けると、ミノタウロスを睨み付けながら迷宮魔法:鑑定を使用する。ここが迷宮の中だということを忘れていた。




==========

 名前:デストロイ・ミノタウロス

 レベル:500

 体力:8000

 筋力:8500

 俊敏:7000

 魔力:5000


 スキル:逆鱗斧

==========




 はい、ステータスの最高値を更新しましたね。


 なんだよ、レベル500って……。

 鑑定はできなかったので、正確な数値は分からないが、ブラウンベアやウォーウルフとは比べるのすら馬鹿らしくなるような強さだ。


「まあ、全力を出してもいいっていうのは嬉しい誤算だけどな」


 再び上から叩き付けるように振るわれた斧。

 それに対して俺を覆うほど巨大な土壁を出現させると、斧は土壁を粉々に破壊していた。

 しかし、その間に俺の姿はデストロイ・ミノタウロスの視界から消えている。


『迷宮魔法:スタンボルト、バーストアロー』


 バチバチと電撃が爆ぜる球体が左手から放たれ、デストロイ・ミノタウロスの体を撃ち抜くと、体を痙攣させて動けなくなっていた。

 そこへ右手から放たれた炎の矢が到達し、爆発を起こしていた。


 デストロイ・ミノタウロスが痛みから思わず雄叫びを上げる。


 そんな雄叫びを無視すると一気に近付く。


 俺の接近に危機感を覚えたのかデストロイ・ミノタウロスが斧を持っていない左手を振りかざす。


「邪魔」


 下から勢いよく振り上げるとデストロイ・ミノタウロスの左腕が斬り飛ばされた。


 部屋の隅に落ちた自分の左腕を見て怒りからデストロイ・ミノタウロスの額に青筋が浮かんでいた。


「ブ、モゥゥゥ……!」


 デストロイ・ミノタウロスの体に走った何本もの金色のラインが強く光り輝くと、右手に持った斧を振り回して俺に近付いてくる。その速度は、今までの動きよりも速くなっていた。

 慎重に斧の動きを見切って回避していると、床や壁が次々と砕かれていく。


「怒らせたかな?」


 いきなり速く鋭くなった攻撃に首を傾げるもののすぐにステータスを思い出す。


『スキル:逆鱗斧』


 怒らせてしまうと斧の扱いが上手くなるスキルらしい。

 とにかく縦横無尽に斧を振るわれている状況では接近することもできない。


『迷宮魔法:ブリッツ』


 体に電撃を僅かに纏い、バチバチと爆ぜさせると一瞬でデストロイ・ミノタウロスへと肉迫し、斧の内側へと移動していた。


「ブモッ!」


 強力無比な攻撃で、大きな武器でありながら素早く振れていたが、このように内側へ潜られてしまっては攻撃する手段がない。


「悪いが、全力で使うとどうなるのか試させてもらうぞ」


 両手を握ると拳が燃え上がる。


『迷宮魔法:バーストナックル』


 デストロイ・ミノタウロスの胸に炎を纏った右手の拳を叩き付けると爆発を起こし吹き飛ぶ。即座に地面を蹴って近付き左手の拳を叩き付けると、再び爆発が起こり宝箱がある場所の近くにある壁に叩き付けられ体の一部が埋まっていた。


「ブ、ブモォォゥゥ……」


 爆発により胸が焼け爛れたせいでその場に倒れると体に走っていた金色のラインも輝きを失い、握っていた斧も取り落としてしまう。


「こんなもん……いや、相手が魔力5000だったことを考えると外で使えば相当な威力になるのか?」


 魔力が高いということは、魔法による攻撃だけでなく、魔法により受けるダメージも軽減される。

 攻撃方法が物理攻撃ばかりだったデストロイ・ミノタウロスだったが、魔力もそれなりに高かったことから魔法にもそれなりに耐性があったはずである。


『う~ん。まだまだ迷宮魔法を使いこなせているとは言えないね』

「それは、そうだな」


 俺の魔力で使用することによって強力になっているが、無数と言っていいほど使える魔法があるのだから効率よく掛け合わせることによってもっと強くなるはずである。

 今のところ、同時使用はできても融合までできているとは言えない。


「それよりも宝箱だ」


 デストロイ・ミノタウロスを倒した瞬間、宝箱が僅かに開き、中身が取り出せるようになっていた。


 さっそく中身を確認してみる。


「なんだ、これ……籠手、か?」


 そこには黄色い籠手が入っていた。指の形から右手用だろう。


『へぇ~、「天嵐の籠手」か。これもたしかにレア度Sの装備品だよ』


 試しに鑑定を使用してみる。

 どれどれ……




==========

 名前:天嵐の籠手

 レア度:S

 効果:筋力上昇【大】 電撃操作 天候操作

==========




 神剣とは違って筋力上昇は2ランク下がって【大】となっているが、天嵐の籠手の本命は電撃操作と天候操作の方だろう。

 籠手から電撃から放つことができ、魔力を大きく消費することになってしまうが、天候を自由に操る能力があるらしい。

 性能を見れば、たしかにレア度Sに相応しい能力である。


「けど、これはいらないな」


 役に立つとは思うが、今の俺には必要のない物なので宝箱の中に戻す。

 そのまま宝箱を閉じると迷宮核が声を上げる。


『ちょっと、目的の物じゃなかったかもしれないけど、持ち帰らないの?』

「ああ、持ち帰る必要もない。地下77階なんて誰かが来るかどうかすら怪しいけど、誰かがうっかり来てしまった時の為に迷宮はこのまま残しておきたい」


 それに全ての部屋がダメだった時の為にもう一度挑むことも考えてのことでもある。


 こうして手に入れた財宝を宝箱の中にしまっておけば、『宝箱の中身の入れ替え』と『部屋の主の復活』、それだけでもう一度挑むことができるようになる。『宝箱の中身の補充』に消費される魔力を節約する意味でも必要なことだった。


「とりあえず地下77階で遭遇するような相手が一般人だと絶対に勝てないような相手で、俺が本気を出せば勝てることは分かった」


 自分の力を確信すると隣の部屋へと向かう。


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