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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第8話 編成

「というわけで、景品に釣られて迷宮踏争の提案を受けてしまったので編成を決めたいと思います」


 俺の言葉にサッと顔を背ける4人。

 喜々としてペンダントを受け取ってしまった以上、拒否することはできない。


「今回は攻略側と防衛側で分かれることになる」

「どういうこと?」


 アイラが首を傾げている。

 単純な彼女の事だから全員で帝都の迷宮を攻略するのだと考えていたのだろう。


「ルールを思い出せ、同時にスタートする事とゴールを設定しているだけで相手の攻略を臨機応変に妨害してはいけないとは言っていない」

「へ?」

「さすがに俺たちが直接戦うのは危険だから禁止させてもらうけど、進行方向に罠や魔物を再配置する」


 それぐらいの事なら許容されてもいいはずだ。


「だから留守番として迷宮に置いて行く必要がある」

「それで、攻略側と防衛側に分かれるの?」


 アイラの質問に頷く。

 迷宮核にできるのは最低限の運営と監視ぐらい。臨機応変に配置を変える為には迷宮操作が必要不可欠となっている。


「というか、勝つつもりでいるの?」

「どうせなら勝つつもりだ。景品だって出るらしいからな」


 先に貰えた色魔のペンダントだが、残念ながらアリスター迷宮では用意することができなかった。

 このように自分の迷宮では手に入らない物を手に入れることができる。

 他者の迷宮へ挑むとこのような特典がある。


「まず、攻略側だけど最大戦力である俺が攻略側に回る。向こうもリオが攻略に乗り気だったし、迷宮主(ダンジョンマスター)が最大戦力であることはこっちと変わらないはずだからリオも攻略側だろう」


 確認させてもらったステータスを見る限り、地下50階までは余裕で到達できるだけの力があった。


 この競争は、本当に速さが肝心だ。

 その為にこっちも攻略の速さを追求する必要があるし、相手の足を止める必要がある。


「それで、イリスが防衛側だ」

「え、私は別行動?」

「仕方ないだろ。迷宮で相手の妨害する為には迷宮操作が必要不可欠になる。迷宮操作を持っているのは俺とイリスだけ。俺が攻略側に回る必要がある以上、お前が防衛側に回るしかないんだ」


 どのみち俺とイリスは別行動するしかない。


「分かった」


 俺の説明を聞いて一緒に行動できないことが分かって落ち込んでいる。

 さすがに放置することはできない。


「攻略が困難なら召喚(サモン)で呼び出すから我慢してくれ。それと、この件が終わったら俺が叶えられる範囲でよければ願いを叶えるから何か考えておいてくれ」

「だったら、帝都でデートして」

「帝都で?」

「うん。私はクラーシェル所属の冒険者だったから帝国には近いのに観光ではほとんど行ったことがなかった。だから、帝国がどんな場所なのか興味がある」


 クラーシェルと帝国内の国境付近にある大きな街は険悪な雰囲気だった。

 そんな街に所属していてトップクラスの冒険者だったイリスが帝国へ護衛依頼も受けていないのに行くと険悪な状態になった。また、依頼を受けていると依頼人を優先しなければならないので観光しているような余裕もない。


 だから何度も行ったことがあるのに詳しくない。


「分かった。それぐらいなら問題ない」

「ありがとう」


 イリスが満足そうに微笑んでいる。


 これで、問題は……


「そういうことならわたしも」

「あたしも!」

「不公平なのは良くないと思われます」


 結局、他の3人ともデートすることになった。

 公平を期す為に半日ずつ2日で帝都を観光する。


 って、いつの間にか話題が観光になってしまっている。


「とにかくデートは全員とするから編成に話を戻すぞ」

『はい』

「攻略側は迷宮の探索をしないといけないんだから斥候役であるシルビアは攻略に連れて行く事になる」

「やった!」


 普段のメイドらしい大人しい様子も見せずに喜んでいる。

 それだけ俺と一緒に出掛けられるのが嬉しいらしい。


「で、残る二人なんだけど……」


 残ったのはアイラとメリッサ。


「あたしも攻略側がいい」

「私もです」


 二人とも攻略側が良いと言い出す。


「二人とも、ご主人様に迷惑を掛けてはいけません」

「そう……」


 既に攻略側参加が決定しているシルビアは余裕な態度だ。

 逆に留守番が決定しているイリスは素っ気ない。


「迷宮で何らかのトラブルがあっても迷宮同調があるから相談には困らないから、迷宮操作が使えるイリスだけが迷宮にいれば問題ないんだよな」


 迷宮内に対して迷宮操作を使用する為には場所を問わないが、迷宮内にいる必要がある。

 だから防衛側は常に迷宮内にいる必要がある。


「だから攻略に戦力を割くなら二人とも連れて行くのがベストなんだ」


 剣士のアイラと魔法使いのメリッサ。

 俺が中衛として臨機応変に前だけでなく後ろにも対応する。


 戦力的には好ましい布陣なのだが、これは絶対にできない。


「さすがにそれはイリスが可哀想だろ」

『あ……』


 3人とも4人で攻略に挑む最大の欠点に気付いた。


「いいの。私は一人で寂しく留守番をしているから……」


 よほど寂しいのか目には涙が浮かんでいる。


「お、落ち着いて」

「誰も一人になんてしないから」

「迷宮操作は使えなくても相談役としてアドバイスをするなどできますから他にも誰かが残った方がいいです」


 シルビア、アイラ、メリッサが必死に宥めようとしている。


「というわけで、防衛側に2人。攻略側に3人でなければならない理由は分かったな」

「これは、仕方ありません」


 常に連絡できるとはいえイリス一人を置いて行くのは忍びない。


「残ったアイラとメリッサのどちらかを置いて行く事になるんだけど……メリッサを連れて行く事にする」

「理由は!?」


 アイラが声を荒げる。

 ここで俺がメリッサを連れて行く理由を懇切丁寧に説明したところでアイラはなかなか納得しない。なので、俺の我が儘を通させてもらう。


「理由は攻略側の俺が前衛に回りたいから」

「は?」

「もしも、お前を連れて行った場合、魔法を使える人間が俺以外には誰もいない事になる。その場合、俺が後衛専門として動く事になるだろ」

「うん、いつかはそうしていた」


 メリッサが加わる前の3人だった頃。

 あの頃は、物理攻撃が効きにくい相手が出てきた時や空にいる魔物と戦う時には俺が後ろから魔法を放って攻撃していた。

 後衛専門ではないが、後衛として動く時間が多くなる。


「今回の迷宮探索だけど、俺の力を知るいい機会だと思っている」

「そうなの?」

「地下50階までの迷宮ということは様々な環境に分かれているはずだ」


 アリスター迷宮が5階層毎に環境を変えているように帝都の迷宮もいきなり環境が変わる可能性がある。


 環境が変われば生息している魔物も変わる。

 さすがに海の中で生活している水棲型の魔物が砂漠のど真ん中で生きていけるはずがない。


 そういう意味で迷宮は様々な魔物と戦うのに適した場所と言える。


「レジェンドソードマンに色々と鍛えられて前衛能力もそれなりに備わってきたと思うんだけど、残念ながら試す機会に恵まれなかった」


 巨大海魔(ジャイアントクラーケン)相手では、魔法主体や釣り竿や潜水艦を使っていたせいで剣を使うような機会はなかった。陸に上げた後では剣を使って触手を斬っていったが、残念ながらあれはただの作業。剣を使っての戦いとは言えない。

 そういうわけで迷宮攻略は渡りに船。

 俺にとって実力を試す格好の場となった。


「そういうわけで俺が前衛に行きたい。で、お前を連れて行くとシルビアを含めて全員が前衛になる」

「それが問題だっていうのは分かるわ」


 魔法を専門に使う者は必要になる。

 そういう意味でメリッサは外せなかった。


「これが今回の編成だ」


 攻略は俺、シルビア、メリッサ。

 防衛はイリス、アイラ。



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