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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第2話 屋敷の防衛と護衛

「無事ですか!?」


 ギルドマスターの執務室から屋敷へと一瞬で転移して家族が待っているリビングへと向かう。

 リビングには午後のまったりとした時間を過ごしていた母親たちがいた。


「どうしました?」


 今日はミッシェルさんも店が暇なのか遊びに来ていた。


「いえ、実は……」


 ルイーズさんから聞いた話をした。

 その話を聞いたオリビアはよく分かっていないのか首を傾げていたが、母とミッシェルさんは何かに気付いたらしく笑っていた。


「あなた、からかわれているのよ」

「……え?」

「そうですね。以前、来た時に屋敷の防衛機能や私たちの護衛に関しても見せているので帝国から人が来ることはあっても私たちが本気で襲われるとは考えていないでしょう」

「つまり?」


 からかわれた。


「だから年寄りの戯言は適当に聞いておいた方がいいのです」

「あの人はいつもこんな感じに若者を引っ掻き回すの」


 メリッサとイリスがシルビアの淹れてくれた紅茶を飲みながら言う。

 たしかにその通りかもしれないが、気になるところはある。


「けど、帝国から誰かが来る事はあるかもしれないからな」


 屋敷から出て門へ向かう。


 門の前には2体の鎧武者のゴーレムが槍を構えた姿勢のまま直立不動で佇んでいた。

 彼らは迷宮から呼び出した魔物で以前は誰も訪れる事のない地下60階で門番をしていた。


「ご苦労様、何か異常はなかったかな?」


 ゴーレムが首を横に振る。

 門の前にこんな魔物が門番をしている屋敷に侵入者など訪れない。仮に現れても瞬殺される。


「お兄様?」


 門番のステータスを確認して異常がないか調べているとクリスとリアーナちゃんが帰って来た。


「おかえり」

「王都から帰って来るのは、まだ数日は先の話では?」

「そうだったんだけどね」


 屋敷の事が心配になって急いで帰って来てしまった。

 移動に便利な『迷宮魔法:転移』だが、便利過ぎるせいで移動時間を不審に思われる事態が発生する可能性がある。そのため、余程の事がなければ転移の使用は避けるべきだった。


 せっかく会ったので二人の護衛を確認する。


「ところで二人のシャドウゲンガーは元気かな?」

「はい、問題ありません」


 問い掛けると二人の影から真っ黒な人の形をした存在が現れる。人の形をしているだけで顔はのっぺらぼうなので見る人によっては怖がらせてしまう姿をしているのだが、既になれたクリスとリアーナちゃんは落ち着いていた。


 彼らも迷宮の魔物で戦闘力を落とす事で相手の影に潜む事ができる。

 これによって誰に気付かれる事もなく家族には護衛を付ける事ができていた。


 現れたシャドウゲンガーは二人の横で俺に膝を付く。


「そんなに畏まらなくていいよ」


 しかし、シャドウゲンガーに止める様子はない。

 迷宮の魔物は全て俺の支配下にあり、魔物から敬われる存在なのだがあまりに畏まられるのも疲れる。


「二人とも何か変わった事はないか?」


 ゴーレムと同様にシャドウゲンガーも首を横に振る。

 とりあえず今のところは変わった事はないようだ。


「何かあったのですか?」

「ああ、ごめん。ちょっと確認しておこうと思ってね……」

「――嘘、ですね」


 クリスが睨み付けるように見て来る。


「何を言って……」

「私が何年お兄様の妹をしていると思っているのですか? 嘘を吐いている時の様子を見ればお兄様が嘘を吐いているかどうかぐらい分かります。ちなみに今のは、嘘を吐いているわけではないけど、誤魔化している時の反応です」


 ほとんどバレている。

 たしかに何かがあったわけではないが、何かが起こるかもしれないので護衛の確認をしておきたかった。

 こんな状況では誤魔化すのも危険なので正直に伝える。


「実は、俺の事を逆怨みするような奴が現れるかもしれない」

「その時、お兄様の弱点になりそうな家族である私たちに危害が加えられる」


 さすがはクリス。

 少し現在の状況について教えただけで全てを理解していた。


 危機的状況であると知っても態度は悠然としていた。


「大丈夫、でしょうか?」


 対してリアーナちゃんは少し怯えていた。


「大丈夫だよ」


 不安にそうにしているリアーナちゃんをクリスが落ち着かせていた。

 彼女には絶対の自信があった。


「私たちのお兄様やお姉様が悪い奴らなんてやっつけてくれるから」


 随分と信頼されている。

 けれども俺たちだって常に彼女たちの傍にいるわけではないし、アリスターにいない事だってある。


 だから、本命は俺たち兄や姉ではない。


「それに、私たちの事はいつもシャドウゲンガーさんたちが守ってくれているでしょう」

「うん」


 リアーナちゃんを安心させる為かシャドウゲンガーがシャバっと敬礼をする。

 そんな芸を仕込んだ覚えはないんだけどな……


「こいつらは役に立っているか」

「その……この間も活躍しているお兄様の事を逆怨みした街の冒険者が私たちの事を浚おうとした事があったのです」


 帝国とは無関係だったが、既に狙われていた。


「そいつはどうなった?」

「二人組の冒険者だったのですが、それぞれ私たちの事を捕まえようとしたところを影から出て来たシャドウゲンガーさんがボコボコにしました。その……私の口からは凄く言い難いほどにボコボコでした」


 比喩ではなく本当に体がボコボコになってしまったのだろう。


 しかし、妹を狙った相手に同情はしない。

 そもそも妹を狙うような相手にシャドウゲンガーが負けるはずがない。


「君たちの事はシャドウゲンガーが必ず守ってくれる。だから安心していいよ」

「ありがとう」


 シャドウゲンガーが二人の影の中に入り込む。

 お礼を言ってクリスとリアーナちゃんが屋敷の中へと入って行く。


「妹の為にわざわざありがとうございます」

「気にするな」


 入れ代わるように出て来た姉のシルビアに言う。


「門番、それに護衛の方は問題がないようですね」

「ああ」


 これである程度は安心できる。

 シャドウゲンガーの護衛は屋敷で生活している兄以外の家族、他にはメリッサの家族であるガエリオさんたちに付けている。

 さすがに祖父たちなどにまで付けている余裕はないので、これ以上の範囲は自分で身を守ってもらうしかない。


「屋敷の防衛機能も問題ない」

「街の魔力反応も伺ってみましたが、不穏な気配を持っている人物はいませんでした」


 屋敷には非常時に備えた防衛機能が施してある。

 今のところ使った事はないが、街が更地にされるような攻撃にあっても耐えられる代物なので、いざという時には引き籠ってもらおう。


「これだけあれば大丈夫だよな」

「後は冒険者ギルドへ行って情報を集めてきましょう」

「ギルドへ?」

「もしも帝国から人が訪れているようなら門番を通して領主様に伝わっているはずです」


 街の東西南北にある門では身分の確認が行われている。

 平時なら帝国から人が訪れていてもそこまで気にする事はないが、今は春先に戦争があったばかり。余計なトラブルを避ける為に気にしている。


 そうして、問題があった場合に素早く対応できるように冒険者ギルドにも情報が行くようになっている。


「分かった。冒険者ギルドへ行こう。けど、全員で行く必要があるのか?」

「情報は私たちの方でも確認したいので」


 シルビアは俺以上の周囲の気配に敏感だし、メリッサは俺が知らない事をたくさん知っている。イリスはメリッサとは違うベテラン冒険者としての立場から知識が役に立つ。アイラは……。


「うん、とにかく行こうか」


 冒険者ギルドへと向かう。

 途中、ジロジロと視線を向けられて気配に敏感なシルビアが不快にしていた。

 しかし、俺たちを狙った物ではなく、単純に女性を4人も連れた俺に対する嫉妬によるものなのでどうこうする事はない。


「こんにちはルーティさん」

「マルス君」

「ちょっと聞きたい事があって来た――」

「ちょうどいいところに! マルス君にお客さんが来ているんです」

「客?」


 俺の言葉を遮るルーティさん。


「マルス君は王都までの護衛依頼を受けて何日も帰って来る事はないと言ったんですけど、帰って来るまで待つと言っていた人がいたんです――随分と早い帰りですね」


 帰りの時間を省略してしまったので不審に思われてしまった。

 ここは話を逸らさなくては。


「それよりも相手の連絡先を教えて下さい。待たせるのも悪いのでこっちから会いに行きます」


 もしかしたら何日も帰って来ないと聞いて街からいなくなる可能性もあった。

 用があるなら早目に済ませておきたい。


「それなら大丈夫です。本当にさっきの事だったので、隣の酒場で食事をして時間を潰すと言っていました」


 酒場の方へと視線を向ける。


「相手は、帝国出身の冒険者です。気を付けて下さい」


 ――なに!?


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