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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第26話 蛸釣り

 翌日、船を出してもらって迷宮がある場所の真上まで連れて行ってもらう。

 使用している船はギルドが用意してくれた20人ぐらいが乗れる船で、戦闘をするには少し狭いが、実際に戦うような事になれば船から下りて戦う事になるので狭くても問題ない。


「ここでいいんですか?」

「ええ、問題ありません」


 何もない大海原のど真ん中。

 こんな場所に一体何があるというのか。


 操船はさすがに俺たちではできなかったのでギルドが雇ってくれた船乗りが請け負ってくれた。


 船を停泊させて甲板へと出る。


道具箱(アイテムボックス)


 スキルを使用して甲板の上に魔法陣を描くと魔法陣の上に道具箱を出現させて周囲に巨大海魔(ジャイアントクラーケン)を釣る為に必要な釣り竿と餌を出現させる。


「まさか、これでジャイアントクラーケンを釣るつもりですか?」

「奴を釣り上げるにはこれぐらいの代物が必要なんですよ」

「それにしてもこんな大きさの釣り竿が持てるんですか?」


 船乗りが言っているのは、釣り竿と餌の大きさ。

 釣り竿は全長3メートルあり、釣り針の方も内部に仕掛けが施されているせいで異様に膨らんでおり、釣り糸も頑丈な物を用意したので銀色に光り輝いていて明らかに普通ではない。餌についてはとにかく大きさを重視して選んで来たので人と変わらないサイズの魚を朝の市場で買って来た。

 餌にして使うには大きすぎるサイズだが、船を海中に引き摺り込んで捕食してしまうほどの大食漢である釣り上げる対象の大きさを考えれば小さすぎるぐらいだ。


「しかし、ジャイアントクラーケンを釣り上げるなんて事が本当にできるんですかい?」

「どういう事ですか?」

「たしか、これまでにも同じような発想に至った冒険者がいて釣り上げようなんて考えた奴がいましたが、魚には目も暮れずに船に乗っている人ばかり襲っていましたよ」


 既に失敗している奴がいるらしい。

 しかし、そいつらは致命的な事を忘れている。


「冒険者も含めてサボナの住人も蛸の触手を見ているせいで巨大な蛸がいると思い込んでいるみたいですけど、この下にいるのはただの魔物(・・)ですよ」

「そんな事は当たり前だろう」


 当たり前すぎて忘れてしまっている。


「魔物が人間を襲うのはなぜだか知っていますか?」

「人間が持っている魔力を喰いたいからだろ」


 生物なら誰もが持っている魔力。

 魔物は、その魔力を得る事で効率よく自分の力を高める事ができる。


「俺たちだって海にいる魔物を相手に生活をしているんだ。海にいる魚なんかも魔力を持っているけど、人間の方がよほど多くの魔力を持っているから海にいる魔物は魚よりも俺たち人間を狙ってくる」


 魚に限らず大抵の動物が1桁の魔力しか持っていない。

 知能の高い動物ほど魔力が多くなる傾向があるので人間のように文明を築けるぐらいに知能が高ければ魔力も自然と多くなると考えられているが、詳しい理由は分かっていない。


「それが分かっているなら理解できるでしょう。魔物相手にただの魚を餌にしても釣れる訳がないんですよ」


 中には魚の持つ魔力でも満足できる魔物もいるので全くいないわけではないが、海で魔物を討伐するなら人間を襲って来た相手を逆に倒す必要がある。


 そのため海での討伐は常に命懸けだ。


 もっとも釣り方がないわけではない。


「じゃあ、あんたも釣ることができないんじゃないですか?」

「さっきも言ったように魔物は強い魔力に惹かれる傾向にあるんです」


 餌の魚に針を刺して釣り竿の準備をする。


「魚の魔力が足りないっていうなら釣り人の方で魔力を流してやればいい」


 糸を通して魔力をどんどん流して行く。

 とりあえず最初は300ぐらいあれば十分だろう。


「これで魔物も食い付いて来る」

「凄いな……」


 ただし、この方法は俺たちぐらいの魔力量がなければ話にならない。

 300もの魔力を流せば人によっては魔力枯渇によって倒れてしまうかもしれないし、場合によっては足りないかもしれない。


 だが、魔力量の問題よりも魔物を釣り上げるなど絶対に止めた方がいい。


「でも、あの巨体ですよ。大丈夫なんですか?」

「その為の準備をしてきました」


 釣り竿だけではなく釣り糸も『迷宮操作:宝箱(トレジャーボックス)』で用意した特別な代物だ。

 そう簡単に負けて折れてしまっては困る。


「道具だけじゃなくてきちんとジャイアントクラーケンに勝てるだけのステータスがありますから問題ありません」

「分かりました」

「じゃ、アイラは俺の護衛をよろしく」

「りょーかい」


 船から飛び降りて空を飛ぶと海底迷宮の真上に立つ。


 ――ポチャン。


 海の中に餌を投げ込む。迷宮の近くまで行けば問題ない。


「残念だけど、趣味で釣りを楽しむなら喰い付くまでの待っている時間があっても問題ないんだけど、今は仕事中なんで待っている時間が勿体ないんだ」


 一気に魔力を注ぎ込む。

 迷宮近くにいた魚が、餌から放たれる異常な魔力量に逃げ出している。

 それだけじゃない。海底から餌へと近付いている巨大な存在から逃げ出している。


「――かかった!」


 何か大きな物が喰い付いた感覚が釣り竿を通して伝わって来る。

 即座に鷹の眼(ホークアイ)を使用して海中の様子を確かめる。


「いた!」


 暗くてよく分からないが、体長20メートルを超える蛸の姿をした魔物がいるのは見えた。


 釣り竿がグイッと引かれる。

 ジャイアントクラーケンが海中で異常な魔力を発する魚を食べようと引っ張っている。


 しかし、引っ張っているだけだ。

 釣り針には最初から仕掛けが施されており、餌が食べられると針が網状に展開して口の中から抜けないようになっている。


頑強な力(ストロングパワー)


 土属性魔法によって釣り竿の強度を上げる。

 強化された釣り竿はジャイアントクラーケンに引っ張られて撓っているものの折れる事無く耐えている。


 口の中で突き刺さる針を抜く為に俺がいる場所とは反対方向へと泳ぐ。


「お前には俺の正確な位置が分かっているよな」


 思えば最初から不思議だった。


 ビーチで見かけた時にはメリッサの狙撃は間に合ったが、空を飛んでもすぐには駆け付けられないほど遠くでの襲撃だった。

 次に遭遇したのは交易都市からの帰りだったが、その前の俺がサボナを離れている間に5件も被害が発生している。


 なぜ、連日での襲撃を行ったのか?


 連日で襲撃を行ったわけではなく、俺たちがいない間に捕食を済ませてしまおうと考えた。


 奴が俺の正確な位置が分かる理由も迷宮の存在が分かった今では想像できる。


「お前は迷宮生まれの魔物――しかもボスにまで育った魔物だ。俺の何を感知しているのか知らないが、俺の持つ迷宮主(ダンジョンマスター)としての何かを感じ取っているんだろ」


 俺の言葉が聞こえているのか糸を引く力が一瞬だけ弱まる。


「だから反対側へ逃げる事もできる」


 リールを引く。

 凄まじい力で引かれているせいで凄く重い。


「どうやら……相当な出費をしたみたいだったけど、正解だったみたいだな」

『なんせ既に討伐報酬の金貨10000枚に近い魔力を消費してしまっているからね』


 1割分も残ればいい方だ。


 ジャイアントクラーケン討伐に用意したある物と合わせて10000枚近い量の金貨を消費して得られた釣り竿の強度は凄まじい。


 徐々に糸を引いて行く。

 だが、ジャイアントクラーケンの方も負けじと糸を引っ張って行く。


「いいだろう。ここからは体力勝負だ」

『こっちはこっちで大変だっていう事を忘れないでよね』


 俺とジャイアントクラーケンが凄まじい力で引っ張り合いをしているせいで周囲には魔力が放散されている。

 それに釣られて多くの魔物が群れるようにやって来るが、全て噴射亀(ジェットタートル)に乗ったアイラに斬られて倒されている。


「そっちは任せた。こっちは余裕がない」

『さっさと釣り上げなさい』

「それができれば苦労はしない」


 魔力を漲らせて、魔法で腕力を増強する。


「ここからどっちの体力が先に尽きるのか」


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