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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第24話 ボート

「すいませんボートを貸してくれませんか?」

「おや、アンタたちは……」


 ビーチにあるボートの貸し出しを行っている受付で対応してくれたおじさんが俺たちの事を見ている。

 この店で扱っているのは手漕ぎの小さなボートで利用客の多くがカップルなどで俺たちみたいな冒険者が訪れるのは珍しい。


「巨大海魔を倒してくれた冒険者だね」

「まだ倒したわけじゃないんですけどね」


 逃がしてしまった。


「それでもアンタたちを恐れて現れない事には変わりないんだろ。アンタたちがいてくれるおかげで、この5日間は海が大人しいもんだよ」


 ジャイアントクラーケンを釣り上げた日から5日。


 ギルドから船だけでなく、操船に必要な人員まで貸してくれることになったので海の上でジャイアントクラーケンが現れるのを待っていたのだが、いつまで待っても現れる事はなかった。


 念の為、4日目の時に海から離れて様子を見ていたのだが、俺たちが近くにいない事を察知したのか船を襲い始めた。


 明らかに俺たちを避けていた。


 さすがに俺たちが離れたせいで襲われたと言われては困るので、その時はメリッサに頼んで遠距離から狙撃してもらって船の被害は全くなかった。


 その後、5日目も浜辺で待ってみたが、ジャイアントクラーケンが現れる事はなかった。


「それにしても俺たちみたいな冒険者がよくジャイアントクラーケンを追い払った冒険者だと分かりましたね」


 海上で戦った時の反省から水着の上にパーカーを羽織っただけの姿。

 これで海に落とされて濡れてしまっても問題ないが、俺たちの顔を知らない相手からしたら遊んでいる若者にも見える。


「これでも海でそれなりに長い期間働いているんだ。相手の体を見れば戦える人間かどうかぐらい分かる。お前の体は鍛えられているわけじゃないんだが……なぜだか強く感じてしまう」


 どういう理屈で理解しているのか分からないが、ステータスの高さを感知しているみたいだ。


「俺が聞いたジャイアントクラーケンを倒した冒険者の話は、強くなさそうな男の冒険者が綺麗な女を4人も連れたハーレム野郎だ」


 強くなさそうな男……。

 おじさんの言った言葉にショックを受けているとシルビアたちが『綺麗』という言葉に照れていた。


「お前さんたちなら無料で貸してやる」

「いいんですか?」

「俺なりのお礼だ」


 二ッとおじさんが笑った。


「それよりウチが扱うような小さなボートでいいのか? 大きい物なら5人でも余裕で乗れる代物だが、戦闘ができるほど広くはないぞ」

「大丈夫です。今日は戦うつもりはありませんから」

「じゃあ……」

「ジャイアントクラーケンを探しに行きます」


 いつまで待っても現れる気配はない。

 ギルドでも予想されていた事だが、ジャイアントクラーケンはどこかで普段は隠れている。

 こちらから仕掛ける為には隠れ潜んでいる場所を見つける必要がある。


「きちんとお返ししますので、デートに必要な物を貸したとでも思って待っていて下さい」


 ボートに4人が乗り込む。

 最後の俺も乗り込んでオールを両手に持つ。


「そっちは誰が漕ぐ」

「あ、あたしがやりたい」


 探索ではあまり役に立ちそうにないアイラが立候補する。


「まあ、誰がやっても同じだからいいけど」


 シルビアたちには特に反対はないみたいだ。


「帰りは交代してもらうから大丈夫です」

「こちらはこちらで忙しいですから」

「5人も同じボートに乗っていてデートもなにもないけどね」


 結局、帰りは3人に付き合わされるらしい。


 アイラと笑い合いながら沖に向かってボートを漕ぐ。

 ボートを二人で漕ぐ時はお互いのタイミングを合わせなければ真っ直ぐ前へ進む事はない。


 その点、俺たちは大丈夫だ。


『ほら、アイラが少し遅れて来たからタイミングを合わせて……ああ、ちょっと漕ぐ力が強い――少し右にズレて来たかな?』


 さっきから煩い奴の声が頭の中に響いている。


「おまえ、もしかして暇なのか?」

『僕は常に暇だよ。君たちの行動をこうして覗いて気晴らしをするぐらいしか娯楽がないんだよ』


 迷宮核には色々と助けられているのも事実なので文句も言えない。


「それよりもお前はジャイアントクラーケンの素性について何か知っているんじゃないか?」

『あ、気付いた?』


 迷宮核なら何か気付いた事があるとは思っていた。

 しかし、当の迷宮核は悪びれるどころかあっけらかんとした様子でいた。


「何か気付いたなら教えろよ」

『いや、ここで僕が答えを教えてしまったらつまらないじゃない。色々と苦労しながら正解に辿り着く姿が見たいんだから、僕から答えを教えるような真似はしないよ』


 やっぱり感謝をする必要はなかったかもしれない。


「ねぇ、振り子(ダウジング・ペンデュラム)は使えないの?」

「……お前、俺の説明を聞いていなかったな」

「なんだっけ?」


 振り子(ダウジング・ペンデュラム)

 魔力消費が激しい代わりにイメージした物体の位置を手に持った振り子が指し示してくれるという魔法道具。

 既にジャイアントクラーケンの全身を見る事には成功しているのだからイメージは十分に得ている。


 しかし、位置の特定はできなかった。

 振り子はジャイアントクラーケンが逃げて行った方向を差し示しているのだが、途中で何か得体のしれない物に阻まれるように正確な位置の特定ができない。


「どうして特定ができないのか原因は分からない」

「そもそもダウジング・ペンデュラムそのものが強力な魔法道具ですから他の方が持っているという話も聞きません。私たちが知らない何らかの制約があるのか、それとも――」


 位置を特定する事ができない条件があるのか。


 ダウジング・ペンデュラムは元々迷宮核が用意してくれた物だ。俺よりも迷宮核の方が詳しいのだが、その詳しい条件については教えてくれない。


『その条件を教えたらジャイアントクラーケンの正体について言っているようなものだから、今回の一件が終わるまで僕の口から言う事はないよ』


 ただ、重要なヒントは言ってしまっている。

 ペンデュラム・ダウジングで位置を特定できない原因がジャイアントクラーケンの正体を特定する原因になっている。


「そろそろ着くわよ」


 5日前にジャイアントクラーケンと戦闘をした辺りまで来た。


 離れた場所では海中にいるジャイアントクラーケンを狙った冒険者の船がいくつも浮かんでいた。

 そんな彼らも俺の姿を見つけると離れて行った。

 冒険者としてジャイアントクラーケンとは戦いたいが、5日前の戦闘を港から眺めていた者は俺たちの戦闘に巻き込まれたくないと考えて避けていた。


 そこからジャイアントクラーケンが逃げて行った方向へとボートを進ませる。


「随分と遠くまで来たんだな」

「さすがにこんな沖合までボートで来るような奴はいないわよ」


 ジャイアントクラーケンが現れてなくても海には危険なたくさんいる。

 船とは違ってボートだと少し襲われるだけであっという間に沈んでしまう事になる。


「何かあったか?」

「それらしい影はありませんね」


 てっきり海底にある岩陰にでも隠れているのかと思ったが、海面のすぐ上に浮かんでいるボートから覗いても海底にそれらしい物がいる様子はない。


 シルビアには【探知】で探ってもらい、メリッサも魔法で海底の様子を探ってもらっている。イリスは、迷宮操作:地図で周囲の様子を見えない場所も含めて地図にしてもらっている。

 俺とアイラはイリスの作った地図に見落としがないか確認をしている。


「あ……!」


 イリスが何かに気付いたように声を出す。


「迷宮を発見した」

「……は?」


 なぜ、ここで迷宮の話が出て来るのか。


『あ~、ついに見つけちゃったか』


 ただし、迷宮核の反応からして見つけた迷宮が正しい手掛かりらしい。


 え、マジで?


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