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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第21話 VS巨大海魔―海上―

 召喚(サモン)によって空中へと強制的に呼び出されたシルビア、アイラ、イリスの3人。

 俺は飛行(フライ)を使っているからそのまま空中に留まる事ができているが、飛ぶ事ができず呼び出された3人はそのまま海へと落ちて行く。


 ――タンッ!


 ……?

 水に落ちた時とは全く違う音が二つ聞こえて来る。


 海面へと視線を向けるとアイラとイリスの二人が海面に立っていた。

 イリスは魔法を使えば海面を滑る事もできるので分かるが、魔法が使えないアイラでは海面に立つなどできない。


「あんたの言っていた考えってこういうこと」

「きちんと立っている事ができるでしょ」


 よく目を凝らせばアイラとイリスは海面に立っているのではなく、海面から甲羅だけを出した大きな亀の上に立っている。


 噴射亀(ジェットタートル)

 迷宮の海フィールドに生息している魔物で、尻尾のある場所から空気の渦を噴射させて海の中を縦横無尽に動き回る事ができる。その素早さを活かした突進が特徴的だが、甲羅以外の防御力が低いので攻撃さえ当てる事ができれば打たれ弱い魔物というイメージが強い。

 しかし甲羅はそれなりに硬いので人一人を乗せても問題なく海を動き回る事ができる。


「簡単な指示さえ出せば動いてくれるはずだから私たちも参加しよう」

「賛成」


 前衛二人がやる気になっている。

 海の生物に乗っている二人はいい。


「二人とも大丈夫そうですね」


 俺の隣にいるシルビアが海上にいる二人を微笑ましそうに見ている。

 アイラ、イリスよりも問題なのはシルビアだ。


「お前は、どうやってそこにいるんだ?」


 隣にいる空中に浮いている(・・・・・)


 海面までの距離は10メートル。

 空を飛べないはずのシルビアが明らかに飛んでいる。


「空を飛ぶご主人様に付いて行けない事を少々恥じまして。さすがに空を自由に飛び回るほどの力を身に着ける事はできませんでしたが、こうして浮いているぐらいならできるようになりました」


 フェルエス山脈を越える時、俺とメリッサだけが先行する形になってしまったせいでシルビアは置いて行かれた。

 それがメイドとしてあろうとするシルビアにとっては許せない事だったらしい。


 努力の成果だという事は分かった。


 しかし、魔法も使っていないのに飛べる理由が分からない。


『凄いよね。発想が信じられないよ』

『お前が何かしたのか迷宮核(ダンジョンコア)


 俺たちの様子を楽しそうに覗いていた迷宮核の笑い声が聞こえて来る。


『僕は何もしていないよ。ただ、彼女に何かあると困るから練習している間、見守らせてもらっていただけだよ。この方法を思いついたのも彼女自身だし、習得したのも彼女が努力した結果だ』


 たしかに迷宮核にはアドバイスぐらいはできても具体的な力を与える事はできない。


『――まさか、「壁抜け」にこんな使い方があったなんてね』

「壁抜け?」


 思わず口から声が漏れてしまう。

 てっきり何か新しいスキルを身に着けたのかと思えばシルビアが最も慣れ親しんだスキルが空を飛べる秘訣だった。


『それよりも今は巨大海魔(ジャイアントクラーケン)をどうにかする方が先だよ』

「そうだった」


 今もジャイアントクラーケンと戦っているメリッサ。

 水棲の魔物が相手という事で火属性の魔法で火球を生み出して既に1000発近い攻撃を当てている。しかし、最初こそ胴体に当てる事ができていたが、触手を鞭のように振り回すと火球を叩き落していた。


 ――ザッパーーン!


『申し訳ございません。逃がしました』


 ジャイアントクラーケンが海中に沈む。


「アイラ、イリス!」

「ジャイアントクラーケンに向かってジェットタートル」

「行って」


 イリスとアイラがそれぞれ自分の乗るジェットタートルに指示を出してジャイアントクラーケンへ向かうように言う。


 俺たちの指示を聞くように生み出された迷宮の魔物は、自分よりも遥かに巨大な魔物へ向かうように指示をされているにも関わらず、恐怖心を露わにすることなく向かって行く。


 俺もジャイアントクラーケンへ向かう。

 フライで飛んでいる俺にとって前進する事など問題ではない。


 俺の動きに付いて来るシルビア。


「きちんと付いて来る事もできるんだな」


 何もない空中を蹴って前へと進んでいる。


「壁抜けの特性を利用して重力を擦り抜けさせてもらいました。これによってわたしは落ちる事がありません」

「そんな使い方があったのか」


 重力の影響を受けない事によって浮いている事ができるシルビア。

 以前には光を擦り抜けさせて透明化を果たしていたが、とうとう空中を飛び回る事ができるようになったみたいだ。


 しかも、ただ浮いているだけでなく強い力で蹴って足を動かす事によって前へと進むエネルギーが生まれ、重力の影響を受けていないシルビアは前へと進む事ができる。


「メリッサ、下がれ!」


 海面スレスレを飛びながらジャイアントクラーケンを追っていたメリッサが上空へ退避する。

 代わりに攻撃をするのは剣を構えたアイラと魔法で造り出した氷の槍(アイスランス)を空中に待機させているイリス。


 アイラの振り下ろした剣から斬撃が海中へと走り、イリスの放ったアイスランスがジャイアントクラーケンの正面へと落ち、アイスランスを回避するべく進路を変えたジャイアントクラーケンの動きが止まる。


「今度のはさっきの釣り糸よりも強力だぞ」


 俺の左右に生まれた二つの黄色い魔法陣から黒い鎖が飛び出る。

 飛び出した鎖は蛇のように動き回り海中へと突っ込むとジャイアントクラーケンの体に巻き付いて行く。しかも俺だけじゃない。メリッサも同じ『拘束する鎖(チェインバインド)』でジャイアントクラーケンを絡め取って行く。


 4本の鎖に触手を雁字搦めにされたジャイアントクラーケン。


「持ち上げるぞ」


 さすがに水棲生物を相手に海中で速さにおいて勝つのは難しい。

 あのまま追い掛けるように攻撃を続けていても必ず逃げられていた。


 だから海上に持ち上げる。


 今度は釣り上げただけではない。鎖で雁字搦めにして網のようにして持ち上げている。


「シルビア!」


 全身が晒された状態。

 この状態ならシルビアが見逃すはずがない。


「魔石の位置を特定させました」

「でかした」


 どんな魔物でも体内にある魔石を破壊されてしまえば生きている事ができない。

 感知能力に優れるシルビアなら接近すれば魔石の位置を特定させる事ができる。


「ただ、気になるのは普通の魔石の反応しかない事です」

「なに?」


 シルビアが言っているのは迷いの森で遭遇した巨大魔物が体内に持っていた特殊な魔石の反応だ。

 その特殊な魔石を中心に神気を取り込んだ事によって巨大魔物は生み出されていた。


 その特殊な魔石がない。

 それが意味するところは、迷いの森に出現した巨大魔物とは別件の可能性が高いという事。


 いや、今はジャイアントクラーケンの素性について詮索するよりも討伐を優先させなければならない。


「構うな。破壊しろ」

「はい!」


 シルビアがジャイアントクラーケンの額へと向かう。

 その進路には迷いがなく、しっかりと魔石の位置を特定されていた。


 両手に握る短剣に魔力を流し、先端から魔力の刃を発生させるとジャイアントクラーケンの額に突き刺す。


 巨体なせいで短剣のままでは長さが足りていなかったが、魔石の位置を特定しているシルビアが間違うはずがなく、魔力刃によって伸ばされた刃は魔石をしっかりと貫くはずだった。


 だが、魔石を貫かれたはずのジャイアントクラーケンが抵抗する為に体を大きく振り回す。


 ジャイアントクラーケンの傍にいる事ができなくなったシルビアが後ろに跳んで空中へと退避する。


「何があった?」

「どうやら魔石を体内で動かす事ができるようです。おかげで魔力刃が届きませんでした」

「魔石の破壊は……無理か」

「わたしだけの攻撃で破壊しようと考えたら裏側まで貫通させる必要があります。さすがにそこまで伸ばすのは……」


 シルビアの魔力刃は最大でも5メートルが限界だ。

 ジャイアントクラーケンの全長には届かない。


「……なに!?」


 どうやって討伐するべきか考えていると鎖に捕らわれていたはずのジャイアントクラーケンの体が滑り落ちる。


 向かう先には海がある。

 海の中に逃げ込まれたら今度も捕らえられるとは限らない。


絶対零度の凍結(アブソリュートフリーズ)


 イリスの魔法によってあっという間に凍る海。

 ジャイアントクラーケンの巨体が大きな音を立てて氷の上に着氷する。


「逃がすつもりはない」



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