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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第19話 軍艦

 サボナを出港してしばらくは巨大海魔(ジャイアントクラーケン)を警戒して甲板で待機していたが、それが2時間も経過する頃にはジャイアントクラーケンの出没する海域を離れただけでなく、見えなくすらなって警戒の必要がなくなった。

 結局ジャイアントクラーケンが現れる事はなかった。


「航海が無事にできるならいい事です」


 こちらとしてはジャイアントクラーケンに遭遇する事ができなかったけど、商人にとってはいい事なので商人のニルセンさんは終始笑顔だった。

 ただ、そうなってしまうと護衛の俺たちは1日近い時間暇になってしまう。


「船の中でも探索しない?」


 暇そうにしているアイラが提案して来た。


「そうだな。全員船に乗るのは初めてだよな」


 海に来たのもほとんど初めてだ。

 せっかくなのでニルセンさんに許可をもらって船の中を見せてもらう。


 船の奥の方へ行くと変な音が聞こえて来たのでそちらへ行ってみると船乗りたちが大きな機械に魔石を放り込んでいるところだった。


「ここは?」

「おそらく機関室ですね」

「ああ、その通りだ」


 俺の質問に答えてくれたメリッサだったが、近くにいた船乗りが近付いて来た。


「悪いが、部外者の立ち入りは禁止しているんだ」

「ニルセンさんの許可はもらいましたよ」

「おそらくそれは船室とか見せても大丈夫な場所だけだろう。さすがにエンジンみたいな機密を見せるわけにはいかない」

「そうですか」


 けっこう楽しみにしていたのだが、そう言われては仕方ない。

 初めて目にしたエンジンだったが、男として憧れるものがある。


「そんなに興味があるなら目的地に着いたら他の船を見せてもらうといい」

「え?」

「興味津々だって顔に書いてあるぞ」


 どうやら表情に出てしまっていたらしい。


「目的地の交易都市には他の国からの船もやって来る。そんな場所だから、この船以上に大きい軍艦だって配備された海軍がある。元々この船だって型落ちした軍艦を改良した物だ。どうせ見るならそっちの方がいいぞ」

「ありがとうございます。勉強になりました」


 元は軍艦の貨物船か。


 たしかに船は頑丈に造られている。

 ニルセンさんの話では魔物に襲われても大丈夫なように頑丈な船を使用しているという事だったが、元々が戦闘を目的に造られた軍艦なら魔物に襲われても大丈夫な頑丈さにも納得だ。


 機関室を後にする。


「船ってああいう風に動いていたんだな」


 ちょっと見ただけでは全く分からなかったが、魔石を使って動かしているのは分かった。

 こういう分からない事がある時はメリッサに聞くのが一番だ。


「私も実物を見るのは初めてで知識があるだけなのですが、魔石をエンジンの中に入れるとエネルギーが生まれ中にある機械が回転する仕組みになっているみたいです」


 できる事なら、その機械が回転しているところを見てみたかった。

 ま、無理を言っても仕方ない。



 ☆ ☆ ☆



 夕方になる前には交易都市に辿り着いた。

 交易都市の港はサボナよりもずっと大きく、多種多様な船で賑わっていた。

 多くの船が接岸し、俺たちが乗っている船も乗組員が忙しなく荷物の搬入を行っており、港の警戒をモリスたち冒険者が行っていた。


 俺たちは護衛という名目で船に乗り込んではいるものの、あくまでもジャイアントクラーケンに対する護衛であって目的地での船の護衛まで仕事に含まれていないので自分たちの身を守れる程度の警戒しか必要ない。


 もっとも誰も警戒なんてしていない。


「これが軍艦ですか」


 ズラッと並んだ軍艦。

 軍艦の側面には大砲が並べられており、周囲を威圧しているように感じられた。


 だが、見ているだけで感じ入る物がある。


 護衛の必要はなくても、もしもの場合を考えて船から離れるわけにはいかないので甲板から軍艦を眺める。


「これならジャイアントクラーケンの討伐もできるんじゃないか?」


 そう思わせるだけの威容があった。

 同じ国内での問題なら解決の為に軍が出る事もあり得たはずだ。


「残念だけど、無理だったんだ」


 甲板に戻って来たモリスが教えてくれる。


「軍艦ってのは基本的に同じ海上にいる敵艦と戦う事を目的に開発された船だ。大砲を使えば海中にいる相手を攻撃する事もできるが、真下は完全な無防備になっているんだ。ジャイアントクラーケン討伐の為に1隻だけ派遣された事があったが、その時は真下からの攻撃に対応できずに軍艦1隻を沈めてしまったんだ」

「それは、また……」


 海中から触手を伸ばしてジャイアントクラーケンは最悪の場合には船底に貼り付いてしまうことだってある。


 軍艦は1隻造るだけでも普通の船とは比べ物にならない金額が必要になる。

 そのため、ジャイアントクラーケンがいる真下への対策が用意できなければ軍艦1隻を無駄にしてしまう事になるので軍艦の派遣も躊躇っている状況だった。


 どうにか冒険者の手で討伐するしかない。


「そう考えると軍艦って冒険者よりも弱いのかな」


 そんな風に考えると軍艦への興味が小さくなって行く。


「軍艦も機密だらけだから見せてもらう事はできない。大人しくしていろよ」


 それだけ言い残して港の方へ戻って行った。


 おそらく甲板から身を乗り出して軍艦を見ている俺たちの様子が港から見えたため、何かおかしな事をしてしまわないか心配になったのだろう。


「さすがに怒られるような事はしないさ」


 こうして眺めているだけでも楽しめる。


「……小型の物でいいから船を1隻買うか」

「さすがにそれは……」


 小さな呟きだったのだが、しっかりと聞こえていたイリスから反対されてしまった。


 さすがに俺も本気で船を買おうとは思っていない。

 今回の依頼が終われば海のないアリスターに帰る予定の俺たちにとっては船を所有していても海フィールドがある迷宮ぐらいでしか使える場所がなく、迷宮では船が活躍できるほどの空間がない。


 買っても無用の物となる。


「大丈夫。分かっているから」


 どうにも信用されていない。


「分かっているなら、いいんです」


 でも、金はあるんだよな。


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