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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第16話 海の幸

 海から上がると荷物を置いておいた場所に戻る。


道具箱(アイテムボックス)


 欲しい物はビーチパラソルの傍にはない。


 スキルを使って砂浜に道具箱を出現させると中からバーベキューに使うコンロを取り出す。

 コンロの中に炭を入れるとメリッサが魔法で生み出した炎で火を点ける。


「こういう時はアイテムボックスがあってくれて本当に助かったよな」


 コンロの持ち運びなど旅をするうえでは絶対に出来ない。

 しかし、外で美味しい食事にあり付くならコンロは絶対に必要な物だ。


『そういうスキルじゃないんだけどね』


 俺の感想に迷宮核(ダンジョンコア)が苦笑していた。


 本来、アイテムボックスは迷宮を運営するうえで改造や修繕において迷宮の外で手に入れた資材を簡単に持ち運ぶ為のスキルだ。

 というわけで、便利スキルの一つとして使ったとしても問題ないはずだ。


「スキルは役立ててこそだ」


 コンロだけでなく、テーブルも出して魚や貝などが中心になった食材をテーブルの上に並べて行く。

 この食材はサボナにある港近くで朝早くに買って来た物だ。


 さすがは港町。

 朝早くに行けば日が昇った頃に帰って来た漁師が水揚げしたばかりの魚が市場に並んでいた。


 特に気に入ったのが1メートル近くある大きな魚だ。

 今は、一目で気に入ったシルビアがテーブルの上で捌いている。


「こっちは焼いて行こう」


 コンロの上に金網を置いて買って来た貝を並べて行く。

 隣ではアイラが人数分のイカに串を刺して金網の上で焼いている。

 魚介類だけでは彩が足りないのでメリッサとイリスによって金網の上に鉄板が置かれて野菜が焼かれて行く。


「お待たせしました」


 そこで捌かれた大きな魚――鮭が鉄板の上に置かれる。


 ――ジュウゥゥゥゥゥ!


 コンロの上で魚介類が焼かれ、シルビアの手によって調味料が掛けられる。

 俺たちが手を出すよりも彼女に任せた方が美味しい物が出来上がる。


 ただ自分で作りたい物はある。


 ――パカッ!


 焼かれ続けた事で貝が開いた。

 開いた貝に東国で親しまれている調味料――醤油を垂らして貝を煮込む。

 グツグツと沸騰した黒い液体から香ばしい匂いが立ち込める。


「あ、それ貸して」


 俺から醤油を受け取ったアイラがイカ焼きに掛けて行く。


 貝とイカ焼きについては俺たちが食べたかったから買った食材だ。


「はい、ご主人様」


 俺たちが自分たちの料理にモタモタしている間にシルビアが自分の料理を終えてしまった。


 シルビアが作ったのは鮭と野菜を一緒に炒めた物。


 それが乗った皿を受け取って一口食べる。


「うまっ」

「ありがとうございます」


 一口食べただけなのに野菜の風味が合わさった魚の味が口の中に広がる。

 自然と手が進んで皿が空になる頃にはシルビアが追加の魚を乗せてくれた。


 俺に渡す前にきちんとメリッサとイリスにも渡している。


 料理を食べさせてもらってばかりでは申し訳ないので、ちょうどいい具合に焼き上がった貝をシルビアの皿に乗せる。


「もう少し塩味が効いて方がよかったかもしれませんね」


 ちょっとダメ出しを受けてしまった。

 料理はやっぱりシルビアに任せた方がいいかもしれない。けど、同じように市場で焼いていたお兄さんの姿を見ていると自分でも焼いてみたくなったんだ。


「シルビアはちょっと細かいのよ」


 アイラも焼き上がったイカ焼きを皆に配っている。

 その口には既に自分のイカ焼きが咥えられている。


「こら! ご主人様より先に食べるとは何事よ」

「別にいいじゃない」


 豪快に咥えていたイカ焼きを噛み千切っている。


 俺も受け取ったイカ焼きを食べてみる。

 うん。味付けの方はシルビアには遠く及ばないけど、しっかりと中まで焼かれているし、醤油が適度に効いていて美味しい。むしろ青空の下で食べるならこういう豪快な方がいいのかもしれない。


「俺は気にしていないから、シルビアもしっかり食べたらどうだ?」

「では、いただきます」


 みんなで鉄板の上に乗った魚と野菜を好きに食べて行く。

 あっという間にほとんどなくなった鮭。


「最後にこちらです」


 小分けにされた麺を取り出すと鉄板の上に落とす。

 残った野菜と混ぜ合わせながら麺を炒め、醤油や胡椒といった調味料と合わせながらこんがりと焼いて行く。

 麺も野菜と同じようにアイテムボックスの中に保存されていた物なので鮮度も問題ない。


『おおぉ!』


 茶色く焼き上げられた麺。


「焼きそばという料理らしいです。麺と野菜、肉と一緒にこんがりと炒める麺料理らしいですが、今回は肉の代わりに残っていた魚を使わせてもらいました」


 麺を口の中に運ぶ。

 香ばしい味わいに染められた麺だけでなく、さっきまで食べていた魚が全く違った食感と味になっている。


「ごちそうさま」


 気付けば鉄板の上から魚も野菜も麺もなくなっていた。

 火が点いていた炭だけを鎮火させてコンロやテーブル、食器などは全てアイテムボックスの中に収納する。後片付けは屋敷に帰ってからすればいい。バーベキューなど今日ぐらいしかしない。


「それよりもこれをやろう」


 アイテムボックスから市場で買って来たスイカを取り出す。

 ついでに目隠し用の布と棍棒も取り出す。


 そう、スイカ割りだ。

 目隠しをした状態で周囲の言葉による誘導のみを頼って離れた場所にあるスイカを割に行く。そういう遊びがあると市場で買い物をしている時に教えられた時からやってみたくて仕方なかった。


「いいわね。あたしが一発で割ってあげるわ」

「アイラ。お願いだからみんなで楽しめるように一発で割るような事はしないで」


 割る事よりも楽しむ事を優先させたい。


「アイラだと本当に割りそうだけど、アイラが最初でいいのか?」

「わたしだと確実に割りそうなので最後でいいです」


 一番察知能力に優れているシルビアでは目隠しをしている状態でもスイカの位置を正確に当ててしまう。


「私はこういう体を使った遊びは見ている方が楽しいので後の方でいいです」

「任せて。しっかりと違う場所に誘導させてみせるから」


 メリッサは観戦。

 そして、イリスは間違った遊び方をしている。


 まあ、アイラが最初な事に誰も反対していないようなのでアイラに目隠しをして棍棒を持たせる。


 気になるのは棍棒を剣のように持っている事だ。スイカを斬るつもりか?


 少し俺の方で難易度を上げさせてもらおう。


闇隠し(ダークシャドウ)


 相手の視覚を闇で覆うことによって奪う闇属性魔法。

 厚手の布で視界を塞いでいるとはいえ、微かに見えている可能性もあるので魔法まで使って見えないようにする。


方向齟齬(ディレクションディスコード)


 方向感覚を狂わせる魔法も追加する。


「ちょっと! 魔法を使いすぎじゃない!?」

「いいハンデだろ」


 聴覚も奪う魔法も使用するかどうか悩んだが、さすがに聴覚まで奪ってはゲームの醍醐味が失われてしまうので止めておいた。


「これは面白そうですね」


 これだけのハンデを与えられた状態を目にしてもシルビアはウキウキしていた。

 おそらく彼女ならこのハンデでも見えているんだろう。


「行くわよ」


 そして、正眼で棍棒を構えるアイラに言いたい。


 やっぱりスイカを斬るつもりだろ?


「おい、何をやっている!」


 まさにアイラが踏み出そうとした瞬間、後ろの方から声を掛けられた。


 状況がいけなかった。

 アイラはまさにスイカを斬ろうと集中していた瞬間で、視覚と方向感覚を完璧に絶った状態だった。

 感覚の一部が失われた事で逆に気配に敏感になったアイラは、掛けられた声に敵意が含まれていた事から相手を敵だと判断して棍棒のまま声を掛けて来た相手に斬り掛かる。


「へっ?」


 斬り掛かられた男が間抜けな声を上げている間にアイラが男の眼前で棍棒を振り下ろす。鋭く振り下ろされた棍棒は斬撃を生み出し、男が着ていた服をバッサリと斬ってしまう。


「あれ、こいつらって……」


 アイラが目隠しを外す。


 二つの魔法はアイラが斬り掛かった時点で解除している。


「たしか昨日言い寄って来た相手ですね」

「ああ、ギルドで……」


 倒された相手は昨日、ギルドで言い掛かりをつけて来た拳闘士の後ろにいた男の一人だ。


「そんな人たちが一体何のようですか?」


 シルビアがちょっと怒っている。

 楽しくスイカ割りをしようとしている中で声を掛けられれば怒りたくもなる。


「お、お前たちに言いたい事がある!」


 倒された男をそのままに拳闘士の男が声を上げる。

 女性陣の視線が冷たい中よくやる。

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