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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第13話 港町のギルド

 港町のサボナに辿り着くと、まずは冒険者ギルドへと向かう。

 先ほどの船が巨大な魔物に襲われていた光景が衝撃的過ぎた。


「初めまして。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「海に出た巨大魔物の討伐に来た冒険者です」

「ありがとうございます」


 まずはサボナに辿り着いた事を報告する。


 今回の依頼は遠征費として引き受けるだけでも金貨が1枚貰える。

 討伐はきちんとするつもりだが、先に貰える物があるならしっかりと貰っておきたい。


 アリスターの冒険者ギルドで依頼を引き受けた内容が記載された依頼票を取り出して受付嬢の前にあるカウンターの上に置く。


「冒険者ギルドから依頼されていらした方ですか。それなりに優秀みたいですね」


 俺たちの若さからランクはそこまで高くないと判断されてしまった。

 仕方なく冒険者カードも提出してランクを教える。


「……失礼しました。確認が取れましたので報酬をお渡しします」


 少し慌てた様子でカウンターの下にある引き出しから報酬を出したので金貨1枚を受け取る。


「さっき魔物に襲われている船を見ましたが、ギルドで保管しているような情報があったらいただく事はできませんか?」

「ギルドとしても無償で、というわけにはいきませんので情報の内容次第で料金を頂くことになっていますが、よろしいですか?」

「問題ありません」

「それでは準備して参りますので少々お待ちください」


 受付嬢がギルドの奥にある棚の方へ駆け寄って行く。

 棚には本のような物に資料が纏められており、冒険者から情報を求められた時に即座に渡せるよう準備されている。


 ただし、俺みたいな若者が金を出して情報を得る事が気に食わない奴はどこにでもいる。


「よう、兄ちゃん」


 身長が2メートルぐらいある大男が後ろに立っていた。


「何か用ですか?」


 見なくても気配だけで男の動きは分かるので振り返ることなく尋ねる。


「随分と羽振りがいいみたいじゃないか。俺たちにも少し分けてくれないか?」

「はっ、寝言は寝てから言うんだな」

「なっ!?」


 背中を向けているので俺が挑発するように笑みを浮かべている事は分からないだろうが、それでも言葉の端々に嘲笑うような感情が込められている事ぐらいは察知できたらしい。


「ここはお前みたいなガキが来るようなギルドじゃないんだよ! お前みたいに来るだけで貰える金貨を目当てにやって来る冒険者がいる事自体、真面目に討伐しようとしている俺たちみたいな冒険者にとっては迷惑なんだよ」

「こっちはギルドから正式に要請を受けてサボナに来ているんだけど?」

「はっ、お前みたいなヒョロヒョロのガキに何ができるっていうんだ。仲間の女もそんなガキよりも俺たちと組まないか?」


 まさか、シルビアたちをナンパするとは思わなかった。


「興味ない」

「雑魚は引っ込んでなさい」

「真面目に取り組んでいるのに未だに討伐できていない時点で実力は推し量れます」

「下品なのはちょっと……」


 4人ともから断られてしまった。

 まあ、大男の実力は彼女たちの足元にすら及ばないのでこの評価も仕方ない。


「あの……」


 ちょうど受付嬢の準備ができたところらしく、胸の前に資料を抱えていた。


「あ、すいません。すぐに向かいます」


 ここでは説明をしないらしく2階に続く階段の前に向かって行った。


「助かります。それと、ギルド内での揉め事は控えてください」

「それは、向こうにも言って下さいよ。こっちはただ待っていただけなのになぜか絡まれたんですから」

「申し訳ございません。彼はCランク冒険者の拳闘士なのですが、ちょっと粗暴なところがあるのでギルドでも困っているのです」


 どこのギルドにも人格に問題はあるが、実力はある冒険者というのは存在する。

 そういう奴ほど俺みたいな弱そうな奴に絡みたがる。


「テメェ!」


 そして、無視していれば自然と手を出してくる。


「はい、正当防衛成立」


 俺を掴もうと伸ばして来た手を弾いて大男の額にデコピンをする。

 デコピンの衝撃そのままに後ろへ倒れると額から血を流していた。


「く、くそ……」


 かなり手加減したというのに起き上がろうとしていた。


「そこまでにした方がいいですよ」

「けど、ミーシャちゃん……」

「この人はAランク冒険者です。Cランク冒険者が喧嘩を売っていいような相手ではないですよ」

「なっ、こんなガキが……!」


 本来なら自分の実力を誇示するような真似はしたくないのだが、長期間居座るつもりのない街だし、下手なちょっかいを出される前に俺の実力を見せてAランク冒険者である事は教えておいた方がいいと判断した。


 さすがは冒険者をしているだけあって自分よりもランクの高い相手に喧嘩を売るような真似はしなかった。


「では、行きましょうか」


 受付嬢に案内されて2階にある一室に入る。


「まず、みなさんが得ている情報――今日襲われた方の様子を見ていたとの事ですが、どこまでご存知ですか?」

「本当に遠くから見ていただけなので詳しい事は分かりません」

「では、ギルドで把握している情報を全て開示したいと思います」

「金額は――」

「構いません。マルスさんたちパーティは本気で討伐を考えているのでしょう。最近では、来るだけで本気で討伐を考える方が少なくなってきて困っていました。こちらも困っているので本当に討伐してくれる可能性が高い方には無料で全ての情報を開示するように上から指示を受けています」


 そういうことなら、という事で懐から出そうとしていた金貨をしまう。

 さすがに一部の冒険者にのみ贔屓している事を知られるわけにはいかないので1階ではああいう風に言うしかなかったのだろう。


「ギルドでも分かっている事は少ないです。討伐対象の攻撃方法は、海中から触手だけを伸ばして船を掴むと海中へと引きずり込んで行く方法です。ただ、その触手の大きさと形状から全長30メートルはある蛸型の魔物ではないかと考えています」

「随分と大きいですね」


 迷いの森に出た魔物でさえ10メートル超の魔物だった。

 遠くから見ていただけでは触手の大きさから本体の大きさを考えるほどの余裕はなかった。


「蛸型の魔物ですか」


 触手の形からなんとなくそんな気がしていた。


「ええ、それで名称がないのは不便なので巨大海魔(ジャイアントクラーケン)と呼んでいます」

「海魔、か……」


 地方によって見慣れない蛸の事を海の悪魔と呼ぶこともあるらしい。

 アリスターも内陸の辺境にあるせいで海産物を仕入れる事が難しいせいで蛸を悪魔と恐れられても仕方ないのだが、迷宮があるおかげで海産物も冒険者から仕入れる事ができるので蛸にも慣れているのでそんな事は起こっていない。


「後、分かっているのは1日に1度だけ姿を現す事です。それ以降、その日の内に姿を見た事はありません。おかげで冒険者たちも誰かが襲われている間しか攻撃を仕掛ける事ができないので苦戦しています」


 ……ん?


「では、船を襲った時以外はどこにいるのですか?」


 何か気になったと思ったらメリッサが質問してくれた。


「それが分からないのです。襲撃時以外は、どこかにある塒にいるものと考えられますが、海底までは探す事ができないので現在も見つかっていない状態です」


 情報をまとめると、

 ・相手は蛸型の巨大な魔物。

 ・1日に1回のみ姿を現して船を襲う。

 ・塒は見つかっていない。


「みなさんは船を所有されていますか?」

「いいえ、全員内陸部出身なので船に乗った経験もありません。ボートぐらいならあるんですけど」


 迷宮で釣りをする時に作ったボートだ。


「やっぱり船は必要ですよね」


 相手が海中にいる以上、こちらも海に出る必要がある。

 その為には船は必須だ。


「こちらとしても実力者には優先的に融通したいところなのですが、ギルドが保有していた船も既に多くがクラーケンによって飲み込まれてしまっています。船を手に入れる方法としては、民間の方から貸してもらうか船を購入する必要があります」

「船を買うのはちょっと……」


 そうなると交渉して使わせてもらう必要がある。


「交渉に関しては相手を恐喝するような方法を採らなければ問題ありません」


 わざわざ注意して来るという事は、以前に恐喝紛いの事をした冒険者がいたのかもしれない。


「みなさんはそのような事はしないと信用してこちらをお渡しします」

「これは?」


 渡されたのは地図だ。

 それも海が描かれている事からサボナ近辺の物だと思われる。


 地図には簡単な地形が描かれているだけだったが、海の一部が赤く塗り潰されており、周囲にも赤い点がいくつかあった。


「この赤く塗られた場所が過去に襲われた場所です。魔物が出てくるのを狙うならここがおススメです」


 本当に期待されているらしく貴重な情報を渡してくれた。


「今日はこれからどうされますか?」

「ちょっと疲れたので宿で休む事にします」


 歩き続けたところに船に海中に引き込まれるという光景を見たせいか精神的な疲労が溜まっていた。

 今日はゆっくり休んで明日から行動しても遅いという事にはならないだろう。



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