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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第12話 広大な海

 昼過ぎにはようやく山脈越えに成功した。


 しかし、それ以上進む気にはなれなかった。

 山脈を越えるうえで魔力をそれなりに消費したせいで気力を失くしており、長時間の飛行と久しぶりに地面に降り立った事による安堵感から休まざるを得なくなってしまった。


 それは一緒に飛行していたメリッサも同じで、反対されるような事はなかった。


召喚(サモン)


 念話で確認をしてからシルビアたちを呼び寄せる。


 アイラとイリスは一緒に観光を楽しんでいたようだが、シルビアは一人で何かをしていたらしく別行動をしていた。おまけに何をしていたのか聞いても教えてくれない。

 しかし、満足そうなシルビアの表情と迷宮核(ダンジョンコア)が何も言ってこないところをみるに危険な事をしていたわけではなさそうだ。

 これ以上、俺が気にするのは失礼だろう。


 山脈の傍で1泊してからサボナへと向けて歩く。


 問題は……


「道に迷った……」


 適当なところに降り立ったせいで近くに街道もない。

 山脈を越えた先には鬱蒼と生い茂った森が広がっているせいで目印になるような物もない。


「イリス。お前が前回山越えをした時はどうだったんだ?」


 以前に山越えをした事があると言っていたイリス。


「私が山越えをした時は普通に山道を利用したから森の中を開拓した並木道に迷う事無く続いていた。人目を避けたいからと言って街道から外れた場所を進んでいたのが間違い」

「反省しています」


 今後は迷わないようにゆっくりとした速度でも街道を歩いた方がいい。


「大丈夫よ」


 事態を深刻に考えていると対照的なアイラは自信に満ちていた。


「とりあえず太陽の位置は分かるんだから方向を見失うような事はないでしょ。地図だと山脈を越えたらどこからでも西に突き進めば海に出るようになっているんだからとりあえず海に出ることにしましょ」

「それもそうだな」


 海が見える見晴らしのいい場所に出れば全体を見渡す事が出来る。

 が、結局森を抜ける事はできたものの海に辿り着くことはできなかった。


「大丈夫ですよ」


 火を焚いて見張りをしているとシルビアが隣に座って来る。


「潮の香りがします。海が近くなっている証拠です」


 俺にはさっぱり分からない。

 それでもシルビアには迷宮にある海で嗅ぎ慣れた潮の香りを認識する事ができるらしい。

 一瞬、俺を安心させる為に嘘を吐いているのかとも疑ったが、シルビアの言葉は嘘ではなかった。


「海だ!」


 翌朝、1時間ほど歩いていると海が見えて来た。


 近付けばどこまでも広がる青い水が見える。水面は蒼く透き通っており、海中を魚が泳いでいる姿が見える。

 遠くを見れば大型の船が動いており、船首の向いている先には港町が見えた。


 港町までなら歩いても今日中に辿り着くことができる。


「ここは使われていない岩礁地帯みたいですね」


 水の迫るギリギリの場所に立つと岩肌が切り立っており、水中から突き出た岩があちこちにあって水流を遮っているせいで潮の流れが渦巻いていた。


「おや、こんなところに人がくるなんて珍しい」


 海面に様子を確認しているとすぐ近くで釣りをしていた男性が声を掛けて来た。


「こんにちは。ちょっと道に迷ってしまったんです」

「そうか。この近くには危険な魔物も出る事があるから街道がある方へ向かった方がいいぞ」

「ありがとうございます」


 残念ながら何度か魔物と遭遇したが、全て問題なく倒してしまっている。

 一般人にとって危険なレベルでは既に相手にすらならない。


「釣れますか?」

「ああ。この辺りの海中には魚の餌になる物が豊富にあるから大きな魚がたくさんいるんだ」

「いいですね。大きな魚となると釣り上げる時は大変なんじゃないですか?」


 迷宮にいる魚は大きくても大人しい魚の方が多い。

 そのため大物を釣り上げる時の接戦というものを体験した事がない。


「たしかに大変だが、釣り上げたのが大物ならそれだけ大金で売る事ができるから満足に漁へ出る事ができない今は貴重なんだ」


 大物狙いなら仕方ない苦労だ。


 それよりも気になる事を言っていた。


「普段は漁師なんですか?」

「そうだ。けど、ここ3カ月ぐらいはほとんど休業状態だ」

「理由をお尋ねしてもいいですか?」

「ここ最近、海には巨大な魔物が出現するんだ」


 やっぱり巨大魔物による被害が原因か。


「あんな巨大な魔物に襲われたら漁に使う舟なんてひとたまりもない。稼ぎがないのは困るけど、命があっての金だからな。みすみす溝に――海に捨てるような真似はできないさ」


 それで代わりとなる収入として釣りをしている。


 ギルドで得た情報でも巨大魔物は海中から触手を伸ばして襲ってくるとあった。

 海に面しているこの場所も巨大魔物に襲われる危険性がある場所なのだが、海へ出るよりは危険が少ない。


「お、今日はあいつらが襲われたのか」

「え……?」


 遠く離れた海を見ると巨大な太い触手に貨物船が巻き付かれていた。

 触手は貨物船をがっしりと掴むとゆっくり海中へと引きずり込んで行く。


 船の上では船員が船を諦めて海へ脱出している。


 そのまま船が海中へと埋没すると海は穏やかな物へと変わる。


「今のがサボナを騒がせている巨大魔物ですか?」

「リゾートのサボナだけじゃない。この辺り一帯の海ならどこにでも出現する」


 サボナは見えている港町よりも向こう側にあるらしい。


「お前さんたち、もしかしてあの巨大魔物を討伐に来た冒険者か?」

「分かりますか?」

「ああ、これまでにも同じ目的を持った冒険者が何人も港にやって来た。けど、全員が何もできずに返り討ちに遭って行った。悪い事は言わないからお前さんたちも帰った方がいい。この街は遠くない内に壊滅することになる」


 港町にとっては船が出せないというのは死活問題だ。

 そんな状況で3カ月も無事だったのが意外なくらいだ。


「今でも無事な理由はこれだ」


 港近くに停泊していた場所から次々と大型船が出て来る。

 危なくないか?


「まず、これまでに確認された触手の太さから本体はそれなりの大きさになる事が予想される。そんな巨大な魔物が海の浅い場所にいられるはずがないだろ。この辺の海は沖に出れば出るほど深くなるようになっているから巨大魔物は沖合にしかいないんだ」

「それもそうですね」

「ああ、あいつはどういうわけか大型船を喰らうとその日は満足したのか出て来る事がないんだ。中型船だと何隻か食って満足。小型船だと満足するような事はないらしいな」


 先ほど大型の貨物船を喰らったばかりなので今日はもう満足してしまい、出て来る事はないと判断しての出港。

 出港した船が魔物に襲われた場所を通り過ぎる。


 が、それから何隻も通り過ぎたにも関わらず船が襲われる事はない。


「さっきも言ったが討伐は諦めた方がいい。魔物が凶暴な事もそうだが、それ以上に港町を拠点にしていない冒険者は船を持っていない。魔物は沖に出るんだから船を持っていないと戦う事すらできないぞ」


 それはちょっと困った。

 こういう海に面した場所から攻撃してダメージを負わせられないかと考えていたが、その程度でどうにかなるような相手なら既に討伐されていてもおかしくない。


 何か方法を考える必要がある。


「情報ありがとうございました」

「俺も暇していたんだ。これぐらいなら問題ないさ」


 そう言って釣りに戻ろうとする男性の手に銀貨を数枚握らせる。


「……いいのか?」

「はい。それだけの価値がある情報です」


 港町のギルドへ行ければ同じ内容の情報が得られるかもしれないが、少しでも早く知る事ができたなら対策を用意する事もできる。


 男性に挨拶をして別れる。


「まずは、サボナへ向けて進む事にしよう」


 今日はもう出て来る事がないというなら何か起こるわけでもないし、先を急いだ方がいい。


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