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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第7話 海へ

「というわけで今回はメティス王国の西の端にあるサボナへと向かいたいと思います」


 いつものように屋敷のリビングにパーティメンバーを集めると目的を語る。


 ルーティさんから聞いた事情を迷宮同調で共有しているのでイリス以外のメンバーも事情は理解している。


 問題は俺たちが行かなければいけない理由だ。


「詳しい事情を説明してもらってもよろしいでしょうか?」


 パーティの頭脳であるメリッサは少し納得していなかった。

 情報を共有しているとはいえ、ルーティさんの前ということで俺の真意などについて迷宮同調があっても伝えることができなかった。


「まず、成功報酬が高い事が引き受けた理由の一つだな」

「え?」


 さすがに報酬で引き受けたと思っていなかったのか彼女たちの口から声が漏れる。


「よく思い出してみろ。俺たちはこの1週間の間、何をしていた?」

「迷宮の開発と訓練?」


 誰も訪れない地下82階の開発。

 レジェンドソードマンとの訓練。


「そういう事をしていた事を後悔はしていない。いずれは絶対に必要になる物だからな。けど、そのせいでこの1カ月の間、俺たちに収入はなかったんだぞ」


 迷宮に潜っていたのに収入がない。

 地下82階には侵入者を迎撃する為のシステムがあるだけで素材になるようなレベルの魔物もおらず、宝箱も設置していないので手に入れる事はない。

 というよりも自分たちで造っている迷宮で収入を得るなどあり得ない。


「たしかに成功報酬である金貨10000枚は魅力的ですね」

「だろ?」


 もっとも、こっちの理由はついでだ。


「もう一つの理由は、討伐対象である魔物が巨大であるという点だ」


 こっちの理由については全員予想が付いていたので俺の言葉に頷いている。


 思い起こされるのは迷いの森に出現した3体の魔物。


「巨大魔物に対しては私たち以外では対処が難しいということは分かります。ですが、私たちがしなければならない理由はなんでしょうか?」


 エルフに少なくない犠牲を出しながら討伐した巨大芋虫。

 他の二体については俺たちで討伐した。


 今回、サボナに出現したという巨大魔物も既に一般人レベルでは多くの船舶が襲われて海中へと引きずり込まれている。冒険者にも討伐の為に海へ出た者が何十人も帰って来られていないという報告を受けているらしい。

 既に犠牲は無視できないレベルに達している。


「この時期にどこから現れたのか分からない巨大な魔物が出現した。偶然として片付けるには早計だろ」


 神樹ユグドラシルから聞かされた話については彼女たちにも教えている。


 最初は、神樹という存在を受け入れられず信じられなかった彼女たちだったが、俺の言葉に嘘がない事をなんとなく感じ取ると納得してくれた。


「迷いの森に出現した魔物の裏には何かを企んでいる奴がいた。正体の全く分からない相手ほど恐ろしい相手はいない。相手にどのように対処するのか決めていないけど、せめて相手の正体や目的については把握しておきたいんだ」


 エルフの里では痕跡らしい物を全く見つける事ができなかった。

 その後、アリスターに戻って来てから情報を探ろうと考えた事もあったが、何から手を付ければいいのか全く分からず何も対処できない日々が続いていた。


 しかし、ここにきて巨大な魔物が出現したという情報を手に入れた。


 もしかしたら裏で何かを企んでいた相手の痕跡が手に入るかもしれない。


「事情は分かりました。私はサボナ行きに反対しません」

「わたしもです」

「あたしも」

「私も反対しないけど、どうやってサボナまで行くの?」


 メリッサが納得したのをきっかけに全員から賛成を得られたが、イリスからサボナへの行き方を聞かれた。


 もちろん考えてある。


 サボナまでの行き方は二つある。


 一つは、王都を経由して山脈を迂回するルート。

 もう一つは、国の南側中央を走っているフェルエス山脈を越えるルート。


 前者だと街道を利用することができるので馬車の利用など旅を快適にすることができるが、時間が掛かり過ぎてしまうので冒険者の足でも10日以上の時間が掛かる事を最低でも覚悟しておかなければならない。

 後者だと険しい山道を越えなければならないので馬車を使うことができないし、日数を短縮することができても山越えは冒険者でも辛いものがある。


 俺が選ぶのは山脈越えのルートだ。


「大丈夫? 私は山越えにも慣れているし、フェルエス山脈にも1度登頂した事があるから問題ないと思うけど、みんなは山越えをした事があるの? はっきり言って山越えは生半可な覚悟ではできない」


 イリスの言う通り、山越えは大変だ。

 だが、それは山を足で登った場合の話だ。


「誰が登頂するなんて言った?」

「え、でも山脈を越えるなら山道を登って行くしか……」

「空を飛んで行けばいいだろ」

「あ……」


 イリスも気付いたようだ。


 山脈越えが大変なのは、急勾配の山道や凸凹した悪路を歩いて体力を使わされるせいだ。

 空を飛んで行けば、そんな悪条件は関係なくなる。


「とりあえず明日以降の予定を説明する。まず、フェルエス山脈の手前にある温泉街で1泊してからフェルエス山脈へと向かう。1泊した後、俺とメリッサの二人で空を飛んで山脈を越える」


 空を飛んでの山脈越えにどれだけの時間が掛かるのか分からないが、距離的には2、3時間も掛からずに越える事ができるはずだ。


 こんな簡単な山脈越えの方法をどうして今まで誰も試した事がなかったのか?


「マルスは忘れているようだから忠告しておいてあげるけど、マルスとメリッサが使える飛行(フライ)の魔法は風属性魔法の中でも高度な魔力操作を要求される上級魔法の扱いを受けているの。しかも飛行中は常に魔力を消費し続けるせいでフライの魔法が使えても長時間の飛行は難しい。だから、山脈越えみたいな長時間の飛行が要求される時には使われないの」


 そうか。自分たちの飛行時間を基準に考えていたけど、一般的に優秀とされる魔法使いでも1時間の飛行が限界だ。

 1日飛び続けても問題ない俺たちの方が異常だったんだ。


「とにかく。山脈を飛び越えたら俺が召喚(サモン)で3人も呼び寄せるから、山脈を越えている間は温泉街でゆっくりしていてくれ」


 空を飛べない3人も俺たちが手を繋げば飛べるようになるが、何かがあった場合の事を考えれば空を飛べる俺たちの両手は自由にしておいた方がいい。


 さらに言えば、本当なら俺だけで山脈を越えて眷属全員をサモンした方が楽なのだが、これには眷属全員が反対した。


「単独行動はするべきではありません」

「さっき慢心しないって言ったばかりでしょ」

「一人……しかも空中なんだから何かがあった時に対処できないかもしれない」


 シルビア、アイラ、イリスから注意された。


 一人でもどうにかなる――これも慢心だ。


「そういうわけで飛行中も私も一緒に付いて行く事になりました」


 何かがあっても対処できるように俺とメリッサの二人で山脈越えをする事になった。


「それじゃあ、今日はゆっくり休んで明日の朝、出発することにしよう」


 俺のスキルである道具箱(アイテムボックス)の中には消耗品など旅に必要な物がたくさん残っている。

 目的地であるサボナまで数日の旅だが、数日ぐらいなら準備の必要もない。


「それと目的地はリゾート。サボナに着いたら数日はゆっくりとすることにしよう」


 ここ最近は、開発や訓練ばかりであまり遊んでいなかった。

 ちょうどいい機会だし、仕事が終わったらゆっくりさせてもらうことにしよう。


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