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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第6話 海を襲う危機

「あ、マルス君ちょうどいいところ!」


 久しぶりにイリスを連れてギルドを訪れると俺の担当であるルーティさんがすぐに見つけて来た。


「最近は全く来てくれなかったので心配していたんです」

「ごめんなさい。ちょっと迷宮に籠もっていたんです」


 地下82階の改造に1カ月近くも費やしてしまった。

 気付けば6月も終わりに差し掛かろうとしていた。


「ですが、ちょうどいいところに来てくれました。ちょっと付き合って貰えますか?」

「何かあったんですか?」

「ここではちょっと……」


 ルーティさんが歯切れ悪く言葉が尻すぼみになる。

 隣にいるイリスと顔を見合わせて相談する。


『どう思う?』

『おそらくギルドにいる人には言えない内容の依頼をするつもりです。Aランクともなれば機密性の高い依頼を出される事もある』


 冒険者としての事なら俺よりもイリスの方が慣れている。


 アイコンタクトではなく、念話で確認する。


「分かりました。事情を伺います」

「ありがとうございます」


 俺の来訪に慌てたルーティさんは自分が座っていたカウンターを誰も利用できないように閉じると引き出しの奥から資料を持って俺たちのところへ戻って来る。


 ルーティさんに腕を取られて2階へと連れられる。

 よほど急いでいるのか腕に胸が当たって……


『今の光景は3人にも報告しておく』


 後ろから俺にジト目を向けて来るイリス。


『おい、報告するな。誤解されるだろ』

『大丈夫。誤解がないように私の視覚情報をそのまま送っておいた』


 シルビア、アイラ、メリッサからの反応が全くないのが逆に怖い。


「どうしました?」


 帰った後の出来事に落ち込んでいるとルーティさんが2階にある応接室の一つに入って行く。


「そういえばアリスターの応接室に入るのは初めて」

「ということは、イリスさんはクラーシェルの応接室には何度か入った事があるのですか?」

「まあ、Aランク冒険者ならこういう部屋を何度か利用するもの」


 ギルドの1階にあるようなカウンターにいる冒険者や一般人に聞かれたくない情報が含まれている依頼。


 そういった依頼の説明をする時には防音処理が施された応接室で説明をすることになっているとルーティさんから説明を受ける。

 そういう部屋に案内されたということは、重要な依頼をするつもりみたいだ。


「まず、今回お願いしたい依頼ですが、アリスターにいるAランク冒険者全員にお願いしています。マルス君のパーティは、パーティメンバー全員がAランクですが基本的にマルス君が依頼を引き受けてくれれば全員が依頼を引き受けてくれたものと判断します」


 まあ、主である俺が依頼を引き受けるとなれば全員付いて来てくれるだろう。

 しかし、Aランク冒険者全員に声を掛けるほどの重要な依頼。


「依頼がアリスターに伝わったのは5日前の話です。その間に長期の依頼を引き受けていない二人を除いてアリスターにいるAランク冒険者はマルス君も含めて5人。他の4人には既に依頼の説明をしましたが、色よい返事をもらえませんでした」

「そんなに難しい依頼なんですか?」

「難しい事もそうなのですが、諸々の事情によって断られました」


 事前に持ってきた依頼票を俺たちに見えるよう差し出してくるので確認する。


「魔物の討伐依頼ですか?」


 詳しい部分を省くと街の近くに魔物が出て困っているので助けてほしい、という内容だった。

 依頼内容自体はありふれた物だ。


「なるほど。これは他の方々が拒否するはず」

「何か分かったのか?」


 イリスは依頼内容の問題に気付いたらしい。


『私もアリスターを拠点する冒険者なら拒否します』


 視覚を共有して見ているメリッサも問題点に気付いたらしい。


「行き先の街は、サボナというメティス王国の西にある街です」

「ああ、あのリゾート地」


 具体的な場所を聞いて俺も思い出した。


 メティス王国の南西には海が広がっており、他国との交易が盛んになっている。

 それだけでなく十数年前に一部がリゾート地として開発されており、自国内だけでなく他国からも貴族を招いている街。それがサボナだった。


 行き先を聞いて俺も拒否したくなった。


「みなさん行き先を聞いて拒否されるんですよね」

「一応、詳しい事情を聞いてもいいですか?」


 ルーティさんには新人の頃からお世話になっている。

 こんな疲れた顔をさせて簡単に断る事は出来ない。


「事の始まりは今から3カ月ほど前の事みたいです。突如として現れた魔物が港やリゾートを利用する船を襲い海中へと引きずり込んでしまうみたいです」

「そんな魔物が出て大丈夫なんですか?」


 魔物による人的被害もそうだが、それ以上にリゾートにおける信用問題の方が現地の人たちにとっては重要だ。

 誰も危険な魔物が出没する場所にリゾートで赴きたくない。


「予約のキャンセルなど被害は相当なものらしいです」


 こちらが予想している以上に痛手らしい。


「現地の冒険者が討伐すればいいのでは?」

「既にBランクまでの冒険者が挑んでいますが、全員が失敗しています。なにせ相手は海の中にいますから」


 海中戦ができるような冒険者でなければ海の中での戦いは不利だ。


「それで、Aランクの私たちに依頼が回ってきた」

「そういう事です」


 Bランクの冒険者で失敗したからAランクの冒険者に頼む。


 だが、それだけではないのはアリスターの冒険者にまで回って来た事から明白だ。


「サボナはメティス王国の南西。対してアリスターは南東ですよ」


 距離が離れすぎている。

 しかもお互いの街の中央には険しい山脈が立ちはだかっている。冒険者なら越えられない事はないが、危険を冒す必要がある。危険を回避するなら、一度北へと向かって王都を経由して南西へ向かう必要がある。


「その通りです。片道の移動だけで冒険者でも20日~25日は覚悟してもらう必要があります」


 単純に依頼で赴く街が遠すぎる。

 だからアリスターにいる冒険者は全員が忌避していた。


 それに、それだけの移動時間を掛けても報酬が貰えない可能性があった。


「報酬についても行くだけで一人あたり交通費として金貨1枚が貰えるそうですけど、成功報酬の金貨10000枚についても魔物を討伐したパーティにしか渡されないらしいじゃないですか」


 金貨10000枚は破格の報酬だが、相手は海中にいる魔物。


 海での戦いに慣れていない俺たちでは倒せる保証はない。


「ええ、ですからギルドとしてもおススメしない依頼です」

「では、どうして依頼の説明を?」

「先方から依頼を引き受ける事が可能なAランク冒険者全員に話をして欲しいと頼まれていたからです。向こうも魔物をイメージ回復の為に早々に討伐したいらしく焦っているのですが、近場にいるAランク冒険者に頼っても成果が上がっていないんです。それで、誰でもいいからと遠くの冒険者にも頼って報酬金額もかなり釣り上げた結果なんです」


 破格な報酬だと思えば理由があったらしい。


「話を聞いておいてなんですけど、俺たちもサボナまで行っているような余裕はないですね」

「そう、ですよね」


 金貨10000枚は惜しいように感じるが、今は地下82階の改造を楽しんでいる。

 ひと段落着いたところで余裕があれば地下83階の追加にも手を出してみるつもりなので、無理な遠出をするつもりはない。


「現地の人も困っているみたいです。相手は、触手で船を掴むとそのまま海へと引きずり込んでしまうので大型の貨物船を持っている船長でもどうしようもないみたいです。生き残った方の証言から、船を掴んでいた触手の大きさから本体はかなり巨大な魔物(・・・・・)になるのではないかと考えられています」

巨大な魔物(・・・・・)?」


 相手の魔物について聞いた瞬間、俺の中で依頼を引き受ける事が決まった。


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