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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
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第4話 新たな階層

 昼食にシルビアが作ってくれたサンドイッチを廃都市の中心にある花壇に腰掛けながら食べる。

 朝の段階では階層を追加する事しか言っていなかったからどんな状況で昼食を食べるのか分からなかったから食べやすいサンドイッチで作ってくれた。

 シルビアの心遣いには本当に感謝するしかない。


「それで、新しい地下82階はどんな感じだった?」


 紅茶を飲んでまったりとしながら全体を観察していたシルビアに尋ねる。


「そうですね……まだ罠がほとんどないので探索は簡単です。ですが、それではゴールであるこの場所を真っ先に狙われてしまいます」


 ゴールが分かっているので攻略の難易度を下げてしまっている。


「それなら既に対策を考えている」


 後ろを振り向いて花壇の中心にある転移魔法陣に触れるとヒョイと持ち上げる。


「え……?」


 シルビアが「まさかそんなことができるなんて」といった感じで驚いている。

 今まで階層を移動する時は、転移で直接移動するばかりで出口を自分たちで作る事はした事がなかったな。実際に必要性を感じていなかったし。


「移動させることができたのですか?」

「迷宮操作が使える必要があるから俺とイリスだけだけどな」


 もっと言えばゴールを指定するだけで転移魔法陣が移動させることができる。

 持ち上げたのはシルビアたちに分かりやすく説明する為だ。


「で、どこに移動させるの?」

「場所はもう決めてある」


 アイラの質問に笑いながら答えると移動を開始する。


 行き先は――地下81階でレジェンドドラゴンがいた大きな建物の中。


「うわぁ」


 設置する場所が分かったアイラから声が漏れる。


「ちょっと酷くない?」

「そうだな」


 もしも地下81階でレジェンドドラゴンを起こす罠を起動させて命からがら転移魔法陣に飛び込んだ冒険者が地下82階に挑戦したならレジェンドドラゴンが出現した場所近辺には近付かない。


 地下82階の構造は今のところ81階と同じにしてある。

 スタート地点も廃都市の南からで中心へと真っ直ぐに大通りが伸びているなら最短距離を進もうとゴールだと思われる廃都市の中心へと向かうはずだ。


「なるほど。これなら大通り以外にも罠を設置する意味が生まれてきますね」

「どういう事?」

「アイラは気付かなかった? 罠の多くが大通りを中心にあったけど、それ以外にも路地裏みたいな場所にも罠が仕掛けられていたわよ」

「でも、中心へ行くだけなら大通りを進むだけでいいし……」

「それがちょっとした心理かな」


 最初に廃都市フィールドを訪れた冒険者はゴールが廃都市の中心にあるとは思っていない。

 たとえ中心部を目指したとしてもとりあえず中心部を目指してみようという、なんとなくだ。


 廃都市の中心部には花壇があるだけで目立つ物は何もない。

 しかし、廃都市の至る所にはレジェンドドラゴンが潜んでいたような大きな建物――目に付く目立つ場所が幾つかある。

 探索に慣れた冒険者ならそういった場所から探索して行く。


「それに路地裏の罠は数を少なくして難易度も低くしてある。けど、最後の最後に致命的な罠を仕掛けるっていう酷い場所なんだ。そっちの方こそ嵌ったら簡単に死ぬことになるぞ」


 その為にAランクの魔法道具をいくつか設置しているらしい。

 侵入者を誘い込む為の餌も仕込んである。


 そうだ、どうせなら……


「今度は何をするの?」


 廃都市の中心部に戻って来ると土魔法で転移魔法陣があった場所に大きな石板を作り出す。


 そこに魔法で文字を描く。


 ――ここはゴールではありません。頑張って探してください。


「これは酷い!」


 俺が作り出した挑戦者をおちょくるような看板を見てアイラがお腹を抱えて笑い出した。

 そこまで笑うような事か?


 罠を掻い潜りながら廃都市の中心部まで辿り着いた侵入者はゴールだと思っていた場所にメッセージが石板に残されていれば憤慨ものだ。


 しかし、下層へと続く出口は迷宮内のどこかに必ずある。

 メッセージを受け取った侵入者は地下82階の探索を行うことになるだろう。

 そこで待ち受けるのは本当の出口と致命的な罠の数々。

 せっかくなので、探索をしてもらってついでに魔力を吸収させてもらうことにしよう。


「これはちょっと……」

「侵入者が可哀想です」


 逆にシルビアとメリッサは俺の所業に頬を引き攣らせていた。


「お前はどう思う?」

「さっきから侵入者を撃退することばかり考えているけど、いっそのこと転移魔法陣を設置しなければいいんじゃ」


 そもそも出口がなければ最下層に辿り着かれることもない。

 一見正論に思えるが、迷宮作製のルールに違反している。


「迷宮を作る時には全ての階層が階段や転移魔法陣によって繋がれていないと機能しないんだ」


 だから最下層へと続く転移魔法陣も設置しなければならない。


『こればっかりは迷宮核である僕でも弄ることができなくてね』

「きちんとしたルールがあるなら私は問題ない」


 出入口は絶対必要。

 だからこそ道中で撃退する必要がある。


「そもそも罠が必要なの?」


 イリスに尋ねると今さらな疑問を投げ掛けられた。


「今さらだな」

「もう半日も罠作り勤しんだ私が言えることではないのは分かっているけど、誰も来たことがない場所ならこんな非人道的な罠を設置する必要もないんじゃないかと思うの」

「ま、お前が言うように設置しても踏む人間は誰もいないだろうな」

「なら……!」

「けど、もしかしたら誰かが到達するかもしれない。そうなった時に最下層にある迷宮核を守る為にも侵入者を追い返す為の罠が必要なんだ」


 そう、これはすぐ真下である最下層に安置された迷宮核を守る為に必要な措置。


 眷属以外の誰かが迷宮核に触れるだけで迷宮主の権限が相手に移譲される。

 迷宮主でなくなった俺のステータスは本当に貧弱になってしまう。迷宮の奥にいる新たな迷宮主に勝つ事どころか迷宮主の許に辿り着けるかどうかすら不可能だ。


 だが、それらは全て建前だ。


「けれど、実際のところは罠作りが楽しいだけなんだけどな」

「え……?」

「お前は楽しくなかったか?」

「いえ……」


 楽しくないはずがない。

 罠を作ることそのものではなく、仲間と一緒になって新しく何かを作ることが俺にとっては楽しい。


「私もアイラと一緒になって色々と頭を悩ませながら罠を設置するのは楽しかった」

「だろ」


 侵入者を撃退するのが目的の殺伐とした罠だが、設置する時まで殺伐とする必要はない。

 みんなでワイワイ相談しながら決めていきたい。


「罠だって本気で侵入者を撃退する事ばかり考える必要はない。こんな罠に嵌ったら面白い事になりそうだな、って感じで進めて行けばいいんだよ」

「そ、何事も面白く感じた方が楽しくなるんだから」


 アイラの後押しを受けてイリスも納得していた。


「それに時間だってけっこうあるんだ。少し迷宮に籠もって地下82階を完成させることにしよう」

「だったら温泉かお風呂でも造らない? さすがに埃っぽんいんだけど」

「却下」


 当然のように却下だ。

 廃都市フィールドは風に吹き上げられた埃が多く、非常に淀んだ場所なのですぐに汚れてしまうのも仕方ないのだが、そんな場所に浴場を用意しようとなれば迷宮操作で魔力を消費して造る必要がある。


 神樹の実のおかげで余裕はあるが、無駄遣いはしたくない。


 そんな無駄遣いをするぐらいなら家に帰って風呂に入ってくるぐらいの許可は出してもかまわない。


「さて、午後からの予定だけどせっかくだから罠設置以外の事もしてみよう」


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