表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第13章 海魔舞踏
250/1458

第2話 廃都市

 廃都市フィールド。

 頭上には燦然と太陽が輝いているおかげで明るいが、地上は空気が淀んでいるせいでどこか薄暗いイメージを抱かせる。


 そんな場所に朽ち果てた都市が広がっていた。


 俺たちがいる場所は、都市の入口である南門の前。

 都市の外には荒野が広がっており、魔物が生息しているが都市の中に入って来る事はないようになっている。


「あの魔物も危険ですね」


 シルビアが見ている先には虎型の魔物がいる。

 虎型の魔物はこちらを見つめるだけで襲い掛かって来る気配はない。


「あはは……あれは危険すぎる」

「絶対に挑むような真似をするなよ。俺なら勝てるだろうけど、お前たちだと1対1で勝てるような相手じゃないからな」

「鑑定が使えるんだからそんな無謀な真似しないわよ」


 アイラが突撃しないならとりあえず全員挑むような真似はしないだろう。


 虎の魔物のレベルは400。

 以前、地下77階にいる宝箱を守る魔物と同じレベルであり、その時は眷属4人で戦ってどうにか勝つことができたぐらいだ。


 レベルだけでなく詳細なステータスが見えている彼女たちなら戦うような真似はしないと信じよう。


「あいつらは都市の中に入って行かなかった冒険者を追い詰める為の強者だ」


 都市の中に入った冒険者が外に出てこないようにする為に配置された魔物だった。


「外よりも中の方が……」

「私としては都市の中の方が危険です」


 シルビアは【探知】で、イリスは【迷宮操作】で都市の中にある罠に気付いたみたいだ。


「なになに、どういうこと?」

「いえ、会話の内容からなんとなく予想できますが……」


 アイラは未だに気付いていないみたいだが、メリッサはなんとなく気付いたようなので都市の中へと入ってみる。


 門に足を踏み入れた瞬間、一番近くにある住宅の屋上から矢が飛んでくる。


「……このように都市の中は罠だらけになっているので注意するように」

「どうしてこのように罠だらけの階層を? しかも上の階層にある足を止めるような罠と違って致死性の罠ばかりよね」


 イリスの脳内には今頃地下81階の地図が全て表示されており、罠の位置も正確に描かれている。

 俺にも同じ物が見えており、正直言って正気を疑うようなレベルで罠がギッシリと詰め込まれている。


「ここまで来るような冒険者を相手にするならこれぐらいの罠でないと『殺す』ことができないんだ」


 殺す――廃都市フィールドは地下81階まで辿り着いた冒険者を仕留める為に用意したフィールドだった。

 致死性の罠を大量に設置することによって奥へ進む冒険者を倒す。


「廃都市に罠がある事は理解しました。ですが、ご主人様には罠の位置が分かっていたはずです。なぜ、そのような危険な真似を?」


 シルビアが言うように迷宮操作が俺とイリスには都市内にある罠の位置が正確に分かっている。

 【迷宮操作】を駆使すれば俺たちなら地下81階の踏破も簡単だ。


「実際に罠が発動するところを見れば危険な場所だっていうことが理解できるだろ」


 罠はアイラたちに危険な場所だと理解させる為に作動させた。


「地下82階に続く転移魔法陣はこの都市の中心にある」


 半径10キロの大きな都市だ。

 探索するには広大で、俺たちはゴールが都市の中心にある事が分かっているから迷うことなく中心へと向かうことができるが、地下81階に初めて降り立った冒険者はどこへ向かえばいいのかも分からず進むことになる。


 そうして、目の前に朽ちていても安心できる都市があれば人間は建物を求めて中へと入って行く。


 だが、都市の中に入った瞬間に待ち受けているのは罠の洗礼。


 大量の罠を目にして逃げ出した冒険者が向かうのは都市の外。

 そこにいるのはレベル400の魔物。

 地下77階で戦闘をした冒険者なら勝てるかもしれないが、地下77階と違って倒したところで宝箱が手に入るわけでもなく、苦労して倒す価値がない魔物。


 都市の中には大量の罠。

 都市の外には強力な魔物。


「これまでのセオリーに従うならこういった都市を造ることになるんだけど」

「造り変えることはできないの?」

「できなくはないけど、魔力を大量に消費するからやりたくない」


 今回、魔力が20億も手に入ったおかげでギリギリ造り変えるぐらいの魔力が手に入った。

 しかし、造り変えてしまうと階層を追加する魔力が足りなくなってしまうだろう。


「そもそも、これだけ大量の罠が必要なのですか?」


 メリッサの疑問はもっともだ。


 というよりも……


「誰も来ることができないんだから撃退するための罠なんて必要ないんだよな」


 試しに前へ5歩進んでみると左右の住宅の壁から大量の銃弾が飛んできた。

 瞬時に魔法で土壁を作り出して受け止めると土壁に銃弾にめり込んだ。


「おいおい強力すぎるだろ……」


 てっきり土壁に弾かれるかと思った。


『いやいや……ここまで来られるような冒険者を確実に仕留めるならこれぐらい強力な銃弾が必要だったから前迷宮主と相談して色々と造らせてもらったよ。いや~あの時は楽しかったね』


 致死性の罠作製を楽しかった、と本気で言う迷宮核。

 その言動にちょっと引いてしまった。


「ところで都市の中からも魔物の気配を感じるのですが?」

「よく気付いたな」


 俺たちはまだ都市の中に入ったばかりのところだ。

 魔物は中盤まで進まなければ出てこないようになっている。


『試しに起こしてみようか』

「あ、ちょっと待て……」


 止めるように言おうとするが、既に遅かった。


 ――グオオオォォォォォン!


 起きてしまった。


「な、なんですか!?」


 都市の中ほどにある大きな建物から発せられる気配に対して真っ先に気付いたシルビアが武器を構える。


 次いで、その姿が見えるようになると残りのメンバーも武器を構える。


 俺は行動するつもりがないので武器を構えるようなことはしない。


「レジェンドドラゴン」


 金色の鱗を持つドラゴンが都市の上空に現れる。


「あれは……」

「げっ、なによあの魔物!」

「ここまで強い魔物は初めて見ました」

「レベル700……」


 どうやって用意したのか知らないが都市の中にはレベル700を誇るドラゴンが眠っていた。

 このドラゴン、普段はぐっすりと眠っているのだが都市内にある罠を作動させてしまうと体に電流が流れて強制的に起こされるという仕様になっていた。


 そうして無理矢理に起こされたドラゴンは怒り狂って無秩序に襲い掛かって来る。


 今も生きている人間を見つけて都市を攻撃するようなことなく、俺たちへと真っ直ぐに向かってくる。あんな怒った状態だと【迷宮適応】を持っていても攻撃対象になってしまう。


「はいはい、そろそろ帰ることにするぞ」

「あ……!」


 臨戦態勢だったシルビアが気付いて声を上げていた。


「転移」


 地下81階から82階へと移動する。


「びっくりした……」


 剣を握っていたアイラの手は汗で濡れていた。

 メリッサも冷静に努めようとしているが、レジェンドドラゴンの威容を前にして動揺をしているみたいだった。

 イリスも迷宮結界を解除して安全になった事にホッとしていた。


「魔物は階層を移動することができないんだから別の階に移動すればいいんだよ」


 しばらくすればレジェンドドラゴンも怒りを鎮めて元の場所で再び眠ることになるだろう。

 そういう安全が分かっていたから迷宮核はわざとレジェンドドラゴンを起こした。


「っていうか、よくあんな魔物を連れて来る事ができたわね!」


 アイラの言う事はもっともだ。

 レジェンドドラゴンは現在迷宮にいる魔物の中では最強だ。


『迷宮の中にいる魔物は迷宮の魔力を使うことで生み出すことができるんだ。で、生み出せる魔物だけど、道具と同じで死体でもいいから一度でも魔力変換したことのある魔物とボス用に与えられていたのか最初から生み出すことができた魔物が何体かいたんだ』


 ただし、強ければ強いほど生み出す為の魔力は必要になる。

 レジェンドドラゴンには階層追加並みの魔力が必要になる。

 本当に門番として用意された魔物だった。


『さて、地下81階の説明も終わったことだし、82階の追加と行こうか』


 階層追加の問題はコンセプトだけではない。

 もう一つ致命的な問題が残っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ