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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第2章 捜索依頼
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第7話 森の狼討伐―前編―

 リシュアさんの示した方向へと歩くパーティ。


 盾を構えたグレイさんを先頭にブレイズさんとギルダーツさんの二人がすぐ後ろに続いていた。ネイサンさんが全体を見渡せる中間で周囲を警戒し、マリアンヌさんはいつでも魔法を撃てるように準備をしている。


 その姿を一番後ろから眺めながら隣にいるリシュアさんに話しかける。


「これが皆さんの陣形ですか」

「そうよ。男連中が前衛で、強い敵が現れた時はマリアンヌの魔法で倒す」

「リシュアさんは何をしているんですか?」

「あたし? あたしは、パーティの為に色々とアイテムを用意するのが役割だから戦闘ではあまり役に立たないんだよね。だから、君と同じで荷物持ちがメインかな」


 俺もリシュアさんもリュックサックを背負っていた。

 冒険者に男女の区別などない。女性でも荷物持ちとして戦いに貢献できるのなら荷物持ちも行う。


「お、出て来たぞ」


 先頭を歩くグレイさんが声を上げる。


 その視線の先には5匹のフォレストウルフーー灰色の毛で狼の姿をした魔物が草を食べていた。


「で、どうする?」

「とりあえず遭遇した数は5匹だ。いつも通りでいいだろ」

「おう」


 グレイさんがブレイズさんと相談している間に話し声によってフォレストウルフも俺たちの存在に気付いた。


 5匹の中でもリーダー格のフォレストウルフが他の4匹に対して指示を出している。それを受けて2匹が先に駆け出し、先頭のグレイさんに突進を仕掛ける。


「ふん、温いわ!」


 突進が構えた盾に阻まれる。

 動きの止まったフォレストウルフ2匹に対してそれぞれブレイズさんとギルダーツさんが自分の武器を突き刺していた。剣とハルバートが抜かれるとフォレストウルフが血を流しながら倒れる。


 それでもリーダーのフォレストウルフにとっては、想定内だったのか盾から飛び出した二人に向かって2匹のフォレストウルフが飛び掛かっていた。


 しかし、1匹はネイサンさんの銃弾によって頭部を吹き飛ばされ地面へと落ちていく。


「ウィンドバレット」


 もう1匹もマリアンヌさんの魔法による風を弾丸のように圧縮した攻撃によって吹き飛ばされて倒れる。


 アオオォォォォン――。


 リーダー格のフォレストウルフが吠える。


「うるさいわ」


 しかし、盾を構えたまま突進したグレイさんの攻撃によって雄叫びは中断され、シールドバッシュによって圧し潰される。


「こんなもんじゃ」

「どうだ、すごいだろ」


 グレイさんとブレイズさんがドヤ顔を向けて来た。


 いや、実際に凄い。村で戦っていた時は大人が数人がかりでもフォレストウルフを1匹倒すのに苦労していた。

 それが皆は一撃で倒せている。

 これが、実力のある者とない者の違いか。


「俺も何か手伝った方がいいでしょうか」

「いや、戦闘に関しては見ているだけでいい。さすがに群れが残っている状況で素材の剥ぎ取りなんてするわけにもいかないからこいつらの剥ぎ取りは後回しだ。その時にはきちんと手伝ってもらうつもりだから体力を温存しておいてくれ」

「分かりました」


 冒険者として倒した魔物の剥ぎ取りにも挑戦してみたが、予想以上に大変だった。それが群れを倒すこともあって100匹近く剥ぎ取る必要がある。覚悟はしておいた方がいいだろう。


「まあ、後ろに通すつもりなんてないけど、危なくなった時には自分で対処してくれると助かるかな」

「はい」

「じゃあ、出発するぞ」

「あっちよ」


 リシュアさんが魔法道具(マジックアイテム)を使って群れの位置を把握し、また同じ陣形で森の中を進む。


「さっきフォレストウルフが最後に吠えていましたけど、あれって何だったんですか?」


 俺の教育係というわけではないが、近くにいて手持無沙汰だったリシュアさんが色々と教えてくれる。


「ああ、あれ……たぶんだけど、自分たちの縄張りにあたしたちみたいな強い相手が入ってきたことを他の群れに教えていたんだと思う……って、ちょっと!?」

「どうした!?」


 最後方で上がった声にブレイズさんが眉を顰めながら振り返る。


「いくつかの群れの反応があったんだけど、それが一か所に集まっている。ううん、それだけじゃなくてこっちに猛スピードで接近してくる反応もある」

「なに!?」


 普通ならありえないフォレストウルフの行動。


 フォレストウルフは通常、先ほどのように少数で群れを作っている。ときどき群れ同士が集まり、数が多くなることがあるが、群れの指揮はそれぞれのボスが行うことになっていた。

 にも拘わらず全ての群れが一か所に集まり、統率されている。


「これは……簡単な依頼かと思っていたけど、大変かもしれないな」


 ブレイズさんの視線が鋭くなって森の奥を見つめる。

 それを合図にするかのように全員の視線が鋭くなっていた。


「え、これってどういうことですか?」

「本来なら数匹しかいないフォレストウルフが100匹も集まっている。あたしたちは最初、どこかからか流れて来た複数の群れが住み着いてしまっただけなんだと思っていたけど……どうやら、そうじゃなくてフォレストウルフよりも強い魔物が複数の群れを率いてここまで流れて来ちゃったみたいね」


 魔物の群れの中で一番強いはずの全てのリーダーが何者かに従っている。


 そうなると、フォレストウルフの中で一番強い魔物ではなく、フォレストウルフが従う全く別の何者かがいると考えるのが自然だ。


「来たぞ」


 敵の最初の行動は先ほど遭遇した群れと同じで突進を仕掛けるというものだった。しかし、その数は10匹と多くなっていた。3~4匹程度なら一度に襲い掛かられてもグレイさんの盾で受け止めることができる。しかし、一度に10匹も襲い掛かられては全てを受け止めることはできない。


 しかし、すぐ後ろにいるブレイズさんとギルダーツさんに焦ったような様子はない。


「グレートシールド!」


 フォレストウルフが目の前まで迫った瞬間、グレイさんの声と共に魔力が迸り、巨大な光の盾のような物が出現し、グレイさんに襲い掛かろうとしていた3匹のフォレストウルフも、その横を通り抜けて後ろにいるブレイズさんに襲い掛かろうとしていたフォレストウルフもまとめて受け止めていた。


「ふんっ」


 グレイが力強く盾を押し出すと光の盾も受け止められていたフォレストウルフたちを吹き飛ばしていた。


 吹き飛ばされ倒れたフォレストウルフたちにはブレイズさんとギルダーツさんが止めを刺していた。中には、吹き飛ばされたものの倒れずに堪えたフォレストウルフもいたが、ネイサンさんの銃弾によって心臓を貫かれていた。


「おい、どうする?」


 ネイサンさんが銃を構えながらあちこちを警戒していた。


「これは、ちょっとマズいかもな」


 俺でも分かった。

 直前の襲い掛かってきた10匹のフォレストウルフは陽動。陽動のフォレストウルフが戦っている間に残りのフォレストウルフが包囲する予定だった。

 しかし、グレイさんの盾が想像以上に強力だったため包囲がまだ完了していない。


「さっきの光の盾で全方位を守るとかできないんですか!?」

「悪いの。さっき使った儂のスキルは1度使ってしまうと1時間は使えなくなってしまううえ、展開できるのは盾の正面だけ、という欠点の多いスキルなんじゃ。だから全方位防御はできないし、すぐに使うことはできん」

「そうだな……ここは退却しつつ、襲い掛かってきた敵を倒していく方向で行こう。間違っても包囲されるような真似だけはするなよ」

「……了解」


 殿をブレイズさんとギルダーツさんが受け持ちつつ、他のメンバーが退路を用意しておく。


 なるほど、色々な場面を想定している、もしくは今までにも同じような場面があったのかな?


「ちょっと、待って……正面からボスが出てくるみたいよ」

「チッ、逃げながら対処するにしても指揮している奴次第だな」


 大きな足音を立てながら近付いてくる敵。


 ただ、その姿はちょっと想像していたものとは違った。


 狼の姿をしているフォレストウルフを支配している存在なのだから強力な狼を想像していた。いや、たしかに狼だ。それが人間のように2本の足で立って、身長が3メートルある強力――巨大な体をしていなければ……。


「ウォーウルフだと!?」


 見たことのない魔物だったが、巨大な二足歩行する狼の魔物――ウォーウルフの傍にはフォレストウルフがボスを守るように控えており、ウォーウルフによってフォレストウルフの群れが統率されているのは一目瞭然だった。


「チッ、フォレストウルフを相手にしながらウォーウルフの相手なんてしてられないぞ。リシュア!」

「はいはい」


 バッグの中から拳大の石のような物を取り出すリシュアさん。それをそのままウォーウルフに向かって投げ、ウォーウルフに当たった瞬間、凄まじい衝撃波が石から放たれる。


 なるほど、錬金術師らしく色々な道具を取り揃えているらしい。


「さ、行くわよ」


 今度は、リシュアさんに先導される形で来た道を戻ろうとする。


「ぐっ……!」

「「グレイ!?」」


 先頭だった方を見ればウォーウルフに攻撃され、グレイさんが盾で受け止めていた。


「儂のことは気にするな」


 その間にも左右の茂みからフォレストウルフが次から次へと姿を現す。


「まったく、厄介な……」


 グレイさん以外のメンバーが左右から迫るフォレストウルフへの対処を始めていた。

 既に後方以外の道を絶たれて囲まれてしまった状態では、逃走も難しくなり始めていた。


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