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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第12章 夢幻樹海
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第23話 VS巨大蛾

「昨日やられたばかりなんだから無茶はするんじゃないぞ」

「大丈夫です。無茶をするつもりはありません」


 森を進んで門番に見えない位置まで来るとジャイアントスパイダーを探した時と同様にダウジング・ペンデュラムでジャイアントモスの位置を捕捉する。


「見つけた」


 直線で12キロ。

 方向と距離を確かめると全身にバチバチと電撃を纏って地面を蹴る。


「……!」


 樹の上で隠れるようにジッとしていたジャイアントモスが自分に接近する俺の存在に気付いたらしいが構わずに突っ込む。


「チッ、外したか」


 12キロを1分掛からずに走破すると何かに足が触れたのを感じた。

 迷いの森の特性と透明化していた影響でもぎ取るつもりだった羽に蹴りが掠るぐらいしかできなかった。


「さあ、決着を付けようじゃないか」


 俺の姿を捉えたジャイアントモスが逃げ道を探すべく左右に体を動かしている。

 どうやらジャイアントモスは魔物の中でも賢い部類に入るらしく、俺がどうあっても正攻法では勝てない相手だと理解しているらしい。

 だからと言って見逃すつもりはない。


「何を逃げるつもりでいるんだ?」


 挑発するように体に纏っている電撃を強めてバチバチと音を立てると意を決したのかジャイアントモスが俺に向き直り――姿が消えた。


「はっ?」


 まさかの逃げ一択。

 戦う決意をしたように見えたのは勘違いだったらしい。


「姿を消しただけで安心するなよ」


 ただでさえ狙いが付け難い場所で姿を消されてしまえば攻撃を当てるのは不可能と言っていい。


 なら、狙いを付けなければいい。


電撃球(ライトニングボール)


 掌の上に直径50センチほどの電撃で作られた球体が生まれる。

 10メートルを超えるジャイアントモスからすれば小さな球体だろう。


 その球体は内部に高密度の電撃を蓄えており、漏れ出した電撃の一部が外へ電撃を放っていた。


「行け――」


 ボールを投げるように腕を振るうとジャイアントモスが直前までいた場所へ飛んで行くと周囲を旋回する。


 やがて一際強い電撃を放つと、


「お前の透明化はいなくなったわけじゃない。今その瞬間もそこにいるんだ」


 透明化していたジャイアントモスが姿を現す。

 電撃を受けてしまったことにより、透明化を維持することができずに姿を晒してしまった。しかし、ダメージそのものは大したことがないらしい。


 そこへ二つ目のライトニングボールを投げる。

 二つ目のライトニングボールがジャイアントモスへと辿り着くが、掠ることすらなく離れていく。


「森の影響で狙いが付けられないって言うなら狙いを付けない攻撃をすればいいだけだ」


 ただし、広範囲を巻き込むような攻撃は森を傷付けてしまうため禁止だ。

 もしも大規模な破壊を起こした時には森で糧を得ているエルフから何を言われるか分からない。


 そこで、俺が用意したのが一定範囲を常に旋回するライトニングボール。

 俺の手を離れたライトニングボールは最初に指定したコースに沿って動き続けており、今さら俺の感覚を狂わされたところでライトニングボールの軌道が変わるようなことはない。


「それ、追加だ」


 新たに6個のライトニングボールを投げたことで8個のライトニングボールに囲まれるジャイアントモス。透明化しても大きすぎる体のせいで体のどこかが旋回するライトニングボールに触れてしまう。


 ジャイアントモスが大きな翼を動かして風を生み出す。

 風に追いやられたことでライトニングボールの軌道が変わり、大きな体を滑り込ませるだけの隙間が生まれる。


 隙間を見つけたジャイアントモスが体を滑り込ませる。


 ――ドゴォォォォォン!


 直後、森の中に爆発音が響き渡る。

 音の発生源には爆発を受けて森へと落ちて行くジャイアントモスの姿があった。


「一定の動きをするだけの攻撃も囮だ」


 もう一つ仕込んだ策。


 迷宮操作:罠創造(トラップクリエイト)

 迷宮内にある罠を魔力消費によって造り出すスキル。このスキルによって自由に落とし穴や鉄球といった罠を造り出すことができる。


 今回、造り出したのは踏むことによって爆発を起こす――地雷。


 電撃を放って自分の周りを派手に飛んでいるライトニングボールにジャイアントモスの注意が向いている間にどこから逃げてもいいようにあちこちへ設置させてもらった(トラップ)

 本来は地中に埋められ見えない地雷を空中に固定させ、地中にある時と同様に見えないようにする為に魔法で透明にさせたことで多大な魔力を必要とされてしまったが、それだけの効果があった。


 地雷そのものはごく小さな物。

 与えられたダメージもジャイアントモスの大きさを考えれば致命傷には程遠い。


 だが、設置された地雷に触れてしまった以上、そこにいるという事実は揺るぎない。


 地雷にはそれぞれ魔力で造り出した糸が繋がっている。

 爆発したことによって地雷が消失し、糸も繋がっていた対象を失ってしまったことで垂れてしまっているが、それを辿った先にはジャイアントモスがいる。


「捉えた」


 足裏にしっかりとジャイアントモスの背中を感じる。

 迷いの森の中では、たとえ相手と手を繋いでいたとしても次第に逸れさせられて手を繋いでいたという事実すら忘れてしまう。


 しかし、次第に(・・・)という部分に付け入る隙がある。


 次第に、ということは逸れるまである程度の時間的余裕がある。

 その時間的余裕の内なら触れているという感覚も信用できる。


 ライトニングボールや地雷の設置、魔力を消費し過ぎたせいで触れていて攻撃が確実に当てられる状況でも派手な攻撃はできない。


重量落下(ウェイトフォール)


 闇属性魔法の中でも下級に分類される魔法を使用する。


 ウェイトフォール――触れている対象の重量を1割増加させることで落下速度を上昇させる魔法。


 人間や小さな物に使用しても大きな効果は望めない。


 しかし、ジャイアントモスのような10メートルを超える魔物が空を飛んでいる最中に重量を1割も増加させられたならどうなるか?


 空を飛んでいる事ができずに地上へ落下する。

 日の光を遮っていた樹の葉を押し退けてジャイアントモスの体が地面に落下する。


「やれアイラ、イリス」


 地上で待機していたアイラとイリスに呼び掛ける。

 ライトニングボールに意識が向いている間に設置したのは地雷だけではない。二人は既に召喚(サモン)によって俺の眼下に広がっていた森の中に転移していた。


 待ってました、とばかりに森の中から飛び出してきた二人がジャイアントモスの頭と胸に剣を突き刺す。


 体の急所に剣を突き刺されたジャイアントモスは逃れようと体を動かそうとするものの背中に乗った俺がウェイトフォールを使い続けているせいで自分の体が重すぎて体を動かすことができない。


 やがて、もぞもぞと体を動かしていたジャイアントモスが動かなくなる。


「これで終わり?」

「随分と呆気ない」


 毒によってあれだけ苦戦させられたにも関わらず予想以上に簡単に討伐できたことにアイラとイリスが首を傾げる。


 だが、俺は逆に安心していた。


『大量の地雷を用意することになったけど、魔力の方は足りたみたいだね』


 3000でギリギリだと予測していたが、実際には3500も消費してしまっている。

 予想以上に回復してくれたシルビアとメリッサには十分感謝しなくてはならない。


「言っておくけど、アンタたちのステータスが異常なせいでジャイアントモスの体を貫くことができるんだからね。普通ならコイツの体を貫くような攻撃はできないよ」


 森の奥からルイーズさんが姿を現す。

 試しにルイーズさんが持っていたナイフを刺そうとするが、ジャイアントモスの体を貫くことができない。


「それで、コイツはどうするんだい?」

「エルフの里で売ることにしますよ。何人ものエルフを眠らせた魔物です。それなりに研究すればコイツの身体から得られる素材で色々な薬品が作られるかもしれません。欲しい人には高値で売れるでしょうね」


 地雷の爆発によって体の一部が吹き飛んでしまっているが、それでも全体から見れば一部でしかない。止めもアイラとイリスの刺し傷だけだ。

 素材の状態は綺麗な方だと言っていいだろう。


「そうだろうね。エルフなら薬草やら魔物の素材から薬品を作り出すのは得意だ。この大きさもあって高値で買い取ってくれるだろうね」


 先輩冒険者でもあるルイーズさんは俺の答えに満足していた。


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